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昨日までそこにあったのに、簡単に手からすり抜けて、掴めなくなった。
別れを告げられた夜、そう思った。


好きだったし、今も好きで、失うことが怖い。
別れを切り出されるとは思っていなかった。
ずっと好きでいてくれる、傍にいてくれるって思い込んでいた。
それが当たり前だと思って、彼を大切にできていなかった自分に気が付いた。

別れを切り出されて当然だと思った。
それからは何も言えなかった。
彼と離れる不安と、もう彼の優しさは私には向けられないという事実に涙が出た。
何よりも、私たちが別れることになるまで私たちは自分たちは上手くいっていると思っていたことがショックだった。

無意識のなかでお互いの踏み込めない部分を放置して、目先の楽しさや心地好さに満足していた。

私たちはずっと、何も共有できていなかったんだ。

その事実がすごくショッキングで、さらに涙が溢れた。

長い間一緒にいたので、私のなかでは何か嬉しいことや楽しいことを伝えるのは1番に彼に伝えたいし、そういう経験は彼と共有したいと思う習慣がつきすぎていた。
例えば美味しそうなお店を見つければ彼と行こうと思うし、友達と行ってみてすごく気に入った場所や経験は、彼と行ったらどうかな?と考えて行ける日を想像してわくわくする。

染み付いた習慣が突然辞められるわけもなく、何か楽しいことを見つけるたぴに、ああ、もう彼とは新しい思い出をつくれないんだなと過去を思い出して悲しくなる。

もっと早くに気が付けば、とこの数週間で何度も何度も思った。
それは決してそんなことでは解決のできない問題であるのに、過去の自分を攻めた。

これを書いている今も涙が止まらない。

ここ数週間、いつでも涙が出るという情緒異次元モードが続いている。誰かに優しくされるとすぐに出てくる。
なのでなるべく優しくされないように、一人で過ごすことを率先しているが、これはこれで辛い。

彼の愛を存分に浴びて生きてこれた5年間は
私にとって特別で宝物で羊水みたいなものだった。
たくさん成長のきっかけをもらったし、彼がいるから生きてこれた。
私は生への執着があまりなかったが、彼の言葉や影響で、それではあまりにも責任感が足りないと思えた。

悩みをたくさん聞いてくれて、真剣になって考えてくれるところが素敵だと思った。

無償の愛を与えてくれて、自分のことよりも私のことを気遣ってくれるところが好きだった。

固定観念に囚われず、柔軟な考え方で叶えたい未来に向かってどんどん成長していく姿を尊敬した。

たくさんの幸せをくれた彼にありがとうの気持ちでいっぱい。

先を歩いていってしまう彼に追い付ける、
追い越して笑顔で手を振るくらいの女になれるように、私は歩き出さなければならない。

いつか笑って話せる日がくるように。


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