オリジナルフォント「F5.6」について
昨日試験的に公開してみた新フォント「F5.6」に思った以上の反響があったので、連載の方をちょこっとお休みしてこちらでもう少し詳しく解説します。
コンセプト
ライカのレンズなどに使用されている書体や機械彫刻用標準書体のような、機械的制約の中から生まれた独特の雰囲気の書体に、SF映画やアニメ作品などに出てくる直線な書体の要素を組み合わせ、自分なりに解釈・再構築してみよう。
という目標のもと作成しました。ようするに趣味全開です。
ちなみに書体名「F5.6」はカメラの絞り値が由来。
デザイン
全体的にはライカの書体に倣って文字幅や線幅が(なるべく)均一に見えるようにしました。縦横の比率は大文字の「O」を基準にちょうど3:2のバランスにしています。APS-Cイメージセンサーと同じ比率ですね。
縦長気味なので組んでも間延びしません。
線幅は横幅のちょうど1/5の太さに。小サイズでの視認性向上のため一般的なRegularウェイトよりも若干太めになっています。
上記のように幾何学性を重視していますが、あまりこだわりすぎると人間の目には不自然に見える部分が出てくるので、それらに対しては幾何学性を放棄し自然に見えるよう視覚補正を施してあります。
また、角の丸みも単純な円ではなく、緩和曲線を擬似的に再現し視覚的にスムーズに見えるよう微調整しています。
ちなみにこの角部分にはGlyphsのコーナーコンポーネントを活用し効率的な管理を実現しています。
コーナーコンポーネントについては連載の方で説明する(はずな)のでご期待ください。
視認性
この手のデザインでは良くも悪くも各部の共通性が高くなるので、特に小サイズ時の視認性が問題になってきます。
F5.6ではその点にも配慮し、誤認しないようそれぞれの文字に特徴を持たせました。
具体的には、まず大文字の「B」と数字の「8」について。これらを長方形にきっかり収めてしまうと判別が困難になるため、Bは上半分を明確に小さく、8は中央のクロスした部分を特徴的にすることで誤認を回避しています。
また、数字の「0」も大文字の「O」との誤認を避けるため斜線を追加しています。上記のBと8を特徴的にしたのは、低解像度でこの斜線を追加した「0」との誤認を避ける意味合いもあります。
加えて、大文字「I(アイ)」にはセリフを追加し、数字の「1」や将来的に実装するであろう小文字の「l(エル)」との誤認を避けています。
ほか、大文字の「D」はそのままだと「O」との識別が困難なため、思い切って上部を切り欠いたデザインにしました。
さらには、大文字の「Z」と数字の「2」の組み合わせなど、単純化すると特徴がかぶり気味になる文字もなるべく差別化しています。
今後
現在のところ、デザインでも収録文字数でもアルファ版がいいとこなので、今後は程よいペースで完成度を上げていけたらなと思っています。
特にデザイン面では最適化できる余地がまだまだあると思っているので、もっと煮詰めていくつもりです。
現状のデータはGitHub上で公開しているので、試しにダウンロードしてみてください。アルファ版ですが好きに使っていただいて構いません(ただし利用は自己責任で)。コメントなどでご意見いただけると嬉しいです。
また、Glyphsファイルも一緒に上げているので、なにか参考になれば幸いです。
それではまた。
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