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ジェルム〜宝石の島〜 第17話『古への道』

 リリアン達は、今回はジェルムの街には寄らず、直接オトヌの島へ向かった。ザンが集める石に、一体何の意味があるのだろうか。それは四人にはわからなかった。ただ、島の様子を変えてしまう程の影響力を持つ物を持ち出すという事は、何か良からぬ事を考えているのでは、そう言ったのはアスカだった。
 プランタンにはエメラルドが眠っているはずだが、何か変化はなかったかと問われ、リリアンとテッドは考えた。イヴェールやエテのように気候として変わった点はなかったが、それまでいなかったモンスターが出現するようになったとリリアンが言うと、それはもうエメラルドも取られちゃってるかもねーと、ヴィオラが独特の口調で答えた。

「石を全部集めると、一体何が起こるんだ……?」

 それはザンの目的同様に、誰もわからないことだった。そもそもザンはジェルム王の直属の騎士であるため、もしかしたらザンではなく王の目的である可能性もある。
 自分達に出来る事は、とにかく先へ進む事。兄を探すだけの旅が、こんな事になるなんて……そうリリアンは思っていた。そして気がつけば、モンスターとの戦いを経て、思いもよらぬ程の力が身についた事も。全て、プランタンにいた頃からは想像もつかなかった。そしてそれは、テッドも同じだった。
 ジェルムからオトヌへの道は"古への道"と呼ばれているらしい。この古への道は、蔦の絡まる壁が印象的で、時折小さな白い花を咲かせている箇所もあった。広い部屋もあれば、狭い部屋もあり、分かれ道も多くあった。正解はわからないので何度も行き来して、何とか光の柱の間へやってきた。お馴染みの兵士とのやり取りも終え、光の柱をくぐる。テッドも慣れたのか、リリアンの酔い止めなしでも平気そうだった。
 光の柱を抜けると、少し空気が変わった気がした。今までのように気候が変わったわけではなく、匂いがするわけでもない。なんとなく、今までとは違う何かを、リリアン達は感じ取っていた。

「アスカのその武器は、何ていうの?」

 リリアンが問いかけた。ジャネルの持つ大剣程の長さではあるが、太くはなく、スラリと長い刀身。スタイリッシュなアスカにはとても良く似合っていたが、今まで訪ねた武器屋にも、どこにも売っている事を見た事がなかった。

「これは、刀(カタナ)というんだ」

 そう言って、アスカは刀を鞘から抜いた。細い刀身に、アスカの顔が映る。今は亡き母から譲り受けたもので、とても大切な物だと。冒険をする間に色々な武器を使ってみたが、これが一番しっくりくるそうだ。
 そうこうしているうちに、洞窟を抜けた四人はオトヌの大地を踏み締めた。赤い葉や黄色、茶の葉をつけた木が美しく、また少し切なくもある、不思議な光景が四人を出迎えた。
 ヴィオラの話によると、オトヌにあるのは街ではなく城らしい。城の中に街がある、と。今度こそ兄の手がかりを見つけたい。リリアンとテッドは同じ思いだった。
 オトヌの城は島の東側にあるが、大きな河を挟んでら向こう側にも島が見えた。洞窟のある場所とは対称的な位置に、頂上が見えない程高い塔も、うっすらと見えている。トパーズはあそこに眠っているのだろうか。そんな向こうの島とは、大きな橋で繋がっているようだった。もしトパーズが眠っているとしたら、最優先で向かうべきだとは思ったが、まずは焦らず、情報収集のためにオトヌの城へ向かった。

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