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ジェルム〜宝石の島〜 第23話『白い竜』

「王が……すり替わっていたなんて……」

 遅れてやってきたジャネルが、グロリオサ王ーーテンマーーの亡骸を見て呟いた。騎士団の副団長である彼女でさえ、この事実を知らなかった。悔しさと、自分の未熟さを、ただ恥じるばかりだった。が、すぐに四人の方を見る。

「来てほしい所がある」

 ジャネルは急ぎ足で王の間を出た。四人も慌てて追いかける。城の地下へと続く螺旋階段を下って行くと、ある扉の前に出た。
 扉を開くと、台座の上に透き通った石が置かれていた。全てを見透かすような、とても美しい石だった。見ているだけで、心が洗われる気がする。

「綺麗……」
「これがジェルムの守護石、クリスタルさ」

 ジャネルは迷いなく、その石を取った。竜が現れないか警戒する四人だったが、この島の守護者は王であるため、襲う者はいないとジャネルは言った。

「この石と、全てを浄化すると言われている"オブシディアン"があれば、魔界への扉が開けると言われている」
「オブシディアン……?聞いたこともないわ」

 テッドもヴィオラも首を横に振る中、アスカが一歩前へ出た。それならここにある、と。彼の首にかけられたネックレスの石だった。

「母さんが……死んだ……父さんからもらったと言っていたよ」

 アスカはネックレスを取り、クリスタルへ向けてかざそうとした。しかし、クリスタルが突然輝き出すと、白い竜が姿を現した。思わず武器を手にする五人だが、ドラゴンは自分に戦意がないことを伝えた。

「……」

 白い竜は四人に武器を差し出すように言った。四人ぎ武器を出すと、白い竜は何かを呟きはじめる。それは呪文のようにも聞こえた。すると、武器が眩く光始め、リリアンの弓にはプランタンのエメラルド、テッドの短剣にはエテのルビー、ヴィオラの杖にはオトヌのトパーズ、アスカの刀にはイヴェールのサファイアがあしらわれた。
 白い竜が言うには、これに嵌め込まれている石はレプリカのような物で、ザンにダメージを与える事で力を奪う事ができるらしい。そうする事でより強くなる、と。
 ザンが何を企んでいるかはわからないが、この世界を元に戻すため、彼を倒してほしいと白い竜は四人に頼み込んだ。首を横に振る者はいなかった。
 君達だけが頼りだ、そう言うと、白い竜はクリスタルの中へと戻っていった。
 改めて、アスカはオブシディアンをクリスタルに重ね合わせた。二つの石が共鳴すると、壁に穴のようなものが空いた。その向こうには、暗い世界が見える。あれが魔界だろうか。

「行きましょう。今度こそ、終わりにしましょう!」

 四人は頷くと、その穴を潜っていった。戻ってこられるように、ジャネルはクリスタルをリリアンに託した。少しくらい島の様子が変わっても大丈夫。こっちは任せろ。そう告げて。

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