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星空観察スポットを空から探す:夜間光と夜空の明るさの関係調査

2022年7月にスタートした豊橋市とのコラボレーション企画の続編!
豊橋市で集めたアイデアの中で、サービスとして可能性のあるアイデアを実験的に検証していきます。
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夜空を見上げたとき、もし街明かりが一切ない場所であれば、地平線よりも上にある星で肉眼で見えるものの個数は4000個以上にもなるそう。しかし、実際には街明かりなどの星以外の光で夜空が照らされてしまうことによって、見える星の数は少なくなってしまいます。

ということは、少しでも多くの星を見たいときには、なるべく街明かりが少なく「夜空が暗い」場所に行けば良いのではないかと考えられます。そこで本記事では、衛星データを使って「夜空が暗い」場所を調べ、たくさんの星が見える星空観察スポットを探してみたいと思います。

「夜空の明るさ」の調査

環境省では2018年度から「デジタルカメラによる夜空の明るさ調査」が行われており、全国各地の夜空の明るさが調査されています。環境省のウェブサイトで結果が公開されているので、それをダウンロードしてみたいと思います。今回は「令和4年度 夏の星空観察結果」というCSVファイルをダウンロードし、Excelでファイルを開きました。

図:「令和4年度 夏の星空観察結果」のCSVファイル。

各撮影場所における「夜空の明るさ(等級)」が表として表示されました。なお、「夜空の明るさ(等級)」は数字が小さいほど「明るい」、つまり見える星が少ないことを表しています。

図:「夜空の明るさ」の目安の表。

「夜間光」の調査

少しでも多くの星を見たいとき、なるべく「夜空が暗い」場所を探せば良いことになります。ここで「夜間光」というものに注目してみます。「夜間光」とは文字通り、夜間の地球の光を人工衛星が宇宙から撮影したデータのことです。街明かりなどの星以外の光によって夜空が照らされてしまうため、直観的には「夜間光」が明るいほど「夜空が明るく、星が少なく見える」のではないかと予想することができます。実際にそれを検証してみましょう。

今回は、アメリカの衛星Suomi-NPPに搭載されているVisible/Infrared Imager and Radiometer Suite(VIIRS)によって撮影された夜間光データを使用します。NASAのウェブサイト「EOSDIS Worldview」を用いると、VIIRSによる各地のデータをカーソルを合わせることで調べることができます。

図:「EOSDIS Worldview」で見た、愛知県周辺のVIIRSによる観測データ。(Credit: NASA Worldview)

各地の夜間光は0(暗い)〜255(明るい)の値で表されていおり、画面では0が黒に、255が白に対応しています。「令和4年度 夏の星空観察結果」のうち、今回は「継続観察登録地点」のみに絞り、各地の夜間光データを調べてExcelファイルの列として追加しました。

図:「令和4年度 夏の星空観察結果」に夜間光データを追加したもの。

データが揃ったので、「夜間光データ」と「夜空の明るさ」の散布図を描いてみましょう。

図:各地点の夜間光データと夜空の明るさとの散布図。(データ点を囲む枠は筆者が追加)

散布図を見てみると、全体として右下がりの傾向があることが分かりますね!

相関係数を求めると「-0.819」となり、実際に負の相関が強い(右下がりの傾向がある)ことが確かめられました。以上のことから、「『夜間光データ』が大きいほど『夜空の明るさ』が小さい」、つまり「夜間光が明るいほど夜空が明るく、見える星の数が少ない」ということを確かめられたことになります。

一方、散布図のデータ点の集まりが上下にある程度の幅を持っていることが分かります(図中の実線の枠の縦幅が大きいことから)。全体として右下がりの傾向があることは確かですが、例えば「夜間光データが255(最も明るい)」の地点であっても、場所によっては「星空の明るさが19〜20(天の川が見え始める)」となっていることも分かります(図中の点線の枠)。

つまり、旅行先の「夜間光」がかなり明るかったとしても、星空が見やすい可能性はある、ということですね。
(※実際には夜間光以外にも、建物の高さなどが星空の見えやすさに影響を与えると考えられます。)

まとめ

今回「夜間光」と「夜空の明るさ」の相関関係を調べることで、「夜空が暗い」地点を見つけるためには「夜間光」が暗い地点を見つけることが有効であることが分かりました。「夜間光」のデータを使って星空観察スポットの目星を付けるのも良いかもしれません。

また、散布図のデータ点の広がりから、必ずしも「夜間光」だけが「夜空の明るさ」に影響しているわけではない可能性を考察しました。逆に言えば、「夜間光」がある程度暗ければ星空が十分に見える可能性が高い、とも言えるのではないでしょうか。実際には安全面やアクセスなどの情報もあわせて調べていただき、最高の星空観察スポットを探してみてください。


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