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オール・ウィル・ビー・ゼロ~"水晶化"するデュエル・マスターズ~

先日、デュエル・マスターズ公式チャンネル『デュエチューブ』にてこの様な動画が投稿された。

この動画の主題である次弾
『アビス・レボリューション外伝 邪神と水晶の華(デスベル・クリスタル)』
の新ギミック、『水晶マナ』こと"裏向きで置かれたマナ"は、ルール上
『(元がどのような特性のカードであったかに関わらず)マナ数1を発生させる無色カード
として扱われる。

それだけではただマナの色を失うだけのギミックだが、この『水晶マナ』をカウンター代わりとして利用する"水晶ソウル"や"水晶武装"といったキーワード能力が同時に登場する事で、これらを繋ぐゼニス・セレスのデッキが組めるようになる、という仕組みらしい。

・物語的観点でのクリスタライズ

この『水晶マナ』がフレーバー的にどういう意味を持つかについて考えてみよう。

前述の通り、次弾のテーマは過去の人気種族であるゼニスを復刻した『ゼニス・セレス』であり、公開カードを見る限りではその下位種族としてこれまた過去の人気種族オラクルの復刻である『オラクル・セレス』が配置されているようである。
つまり、オラクル・セレスが生み出した水晶マナを、ゼニス・セレスやアンノウンが利用する、という動きが新テーマのデザインコンセプトであると考えられる。

ところで、このオラクルという種族は、初登場時のE3から、その直前のシリーズであるE2の敵役であったゼニスと深く関わる種族……というより、宗教団体であった。
ゼロの力を崇める宗教者であるオラクルと、ゼロの力そのものであるゼニス。
この2つを繋ぐものとは、即ち……信仰である。

これらはデュエル・マスターズプレイスの最新弾に収録されているカード群のフレーバーテキストであるが、明らかにゼニス・セレスとオラクル・セレスの関係について描写されている。

本来の歴史におけるゼニスとオラクルの関係は、あくまで1万年前の伝説上の存在と、後世それを神格化した信仰者であり、両者には時間の断絶から直接の接点は存在しなかった。

しかし、このFT群によれば、『ゼニスの支配した世界』(おそらく現在のTCGの舞台であるGoA世界と思われる)ではゼニスが直接オラクルたちの信心を利用している事が示唆されている。
そしてその世界では、一般クリーチャーの末路は、信仰によって『水晶の華』になるオラクルか、無個性となる事を強要される遊撃師団しか存在しないようだ。

翻って『水晶マナ』を見てみよう。
水晶マナの第一の特性、それはあらゆるカードが無色化する事である。
どの文明を持っていようが、多色であろうが、あるいは5色カードであろうが、マナゾーンで裏向きになってしまえば全てはゼロ文明、無色のカードとして扱われる。
それは、有色の身でありながらゼニスの持つゼロの力を信仰し、心をゼロに近づけんとしたオラクルの信心そのままではないか。

また、《遊撃師団》の存在。

同じ名前を持つカードの数だけパワーが上がる能力や、枚数制限を越える能力から見ても分かる通り、彼らは個性を必要とせず、他者を集団の内に組み込み同化する事でゼロの意志を体現する存在である。

そして、『水晶マナ』の第二の特性。それは、あらゆるカードから個性を奪う事である 。
裏向きのマナは、元がどのようなカードであろうが、何の特性も参照できない無色1マナのカードとして定義される。
まさに、その姿は遊撃師団さながらである
。彼らは『水晶マナ』となる事で個性を失い、ゼニス・セレスやアンノウンの持つ水晶ソウルや水晶武装の為の、単なる資源として利用される事になる。

、そもそも、これらのキーワードが『水晶マナ』というマナゾーンのカードを参照する事こそが、このギミックの物語的真骨頂であるのかもしれない。

ゼニスは本来、超獣世界に住まうクリーチャー達の思念や記憶、感情によって生まれた存在である。
だからこそ、蓄積されてきた記憶、即ちゲームにおける『マナゾーンの枚数』こそが彼らの根源であり、それが彼らの持つ巨大なマナコストに繋がっている。
と、今まではそう考えてきた。
ならば、『水晶マナ』を自らのマナコスト軽減の材料とする水晶ソウルという能力は、水晶化を推奨する事でオラクル達の信仰の心を吸い取り、自らの降臨を意図的に進行させる打算に等しくなる。

それに、虫をモチーフにしたような見た目のアンノウンが関与しているのも不気味だ。
『水晶マナ』第三の特性。それは、公開領域にありながら、非公開(アンノウン)な存在である事
裏向きになったマナカードを、対戦相手は見る事ができない。つまり、その犠牲が誰であったかを確認できるのは、裏向きにした自身だけである。
信仰心によって『水晶の華』となり、『水晶マナ』化した者は、その個性を二度と記憶してもらえない。
記憶しているのはただ、それを利用する者のみなのである。

こうした視点で公開カードを改めて確認すると、かなり趣が変わってくる。

《血塗りのシダン チリ》。
"シダン"とは勿論、遊撃師団の事であろう。
であれば、遊撃師団として彼女がしなければいけない事は二つ。
オラクルに入団できなかった者を滅ぼすか。あるいは新たな遊撃師団として迎え入れるか。
つまり、殲滅と教化。彼女の能力は、その二つをそのまま体現していると思われる。

また、もう一人のオラクル・セレスである《神判のカルマ コットン/ジャッジ・水晶チャージャー》。

これ程までに衝撃的なイラストがあっただろうか。
彼女の信仰の結実、即ち『水晶の華を咲かせる事』がそのまま『水晶化(水晶マナ化)』である事を指し示しているのが、コットンが水晶の姿に変わるイラストによって描写されている。

また、彼女たちはイラスト内に『マスク』のようなものを装着している事が見て取れる。
これは、オラクル・セレス達が『顔』という個性を不必要とし、『無貌』である事を目指したからなのだろうか。

・全てをゼロに

まとめよう。
『水晶マナ』の特性、
全てのカードが無色になる事
・全てのカードが特性を失う事

公開領域にありながら非公開な存在となる事
は全て、おそらく『アビス・レボリューション外伝』の物語の中核となるであろうフレーバー的役割とリンクしている

蝿のような姿の《クリス=タブラ=ラーサ》、それに付随するように虫の姿を取るアンノウン、一転して《プロフェシー》に近い見た目の《「使命」の頂天 グレイテスト・グレート》。そして、それらに対抗する《ジャシン帝》。
まだまだ謎の多いパックではあるが、『水晶マナ』が物語の鍵を握る事は間違いない。
期待して待ちたい。






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