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デュエプレが"e-Sports"になった日


2024年5月17日
デュエプレGPの開催前日。
正直、現地に赴くかどうか迷っていた。

デュエルマスターズプレイス
リリースされてからもう既に4年半が経つこのゲームにおいて、「大型オフラインイベントの開催」はリリース当初から大きな目標として挙げられていた。
それはリリース1周年のインタビューで、ゲームディレクターが2年目に向けた意気込みとして語る程だ。

当初の予定はコロナ禍の到来によって大きく崩れたものの、念願だった大型オフラインイベントの開催。
それは今、ベルサール秋葉原という会場を得て、「デュエプレGP」という形で遂に実現する。

間違いなく、このイベントはデュエプレというゲームの記念碑になる

一介のユーザーに過ぎない自分にも、そんな確信が芽生えていた。

だが、初回開催の都合であろうか、プレイヤーとして参加できるのは512人と、ゲームの規模と比較すると明らかに少ない人数だった。
TCGデュエマの同種イベントである「DMGP」と比べても、そのプレイヤー参加人数は1/10程。
つまり、デュエプレGPがイベントとして成功するかどうかは、プレイヤーとして参加できずともイベントに向かうような熱意ある一般参加者がどれだけ存在するかにも掛かっている。

自分自身もプレイヤーとして参加する訳ではない。
だからこそ迷った。

白状すると、怖かったのだ
「デュエプレ」というゲームの、ある種競技を含めない人気のようなものが、現実として可視化されてしまう事が
今は安定期に入った(ように思われる)が、一時期はサービス終了まで噂されるような状況だったゲームだ。
その頃は、このようなオフラインイベントが開催されるという事すら夢物語のような気がしていた。
その夢物語が現実として迫る今、蜃気楼を掴むような所在ない気分に陥っていた。

そして、あくまで競技的な志向に根ざしたゲームである事から、「プレイヤー参加以外の参加モチベーションを持つ者がどれほどいるのか」という疑問もあった。
DCGであるデュエプレの強みは、どこでも自由にプレイ出来る点。そもそも、そんな利点を投げ捨てたオフラインイベントはユーザーに望まれているイベント形式なのか?
もしかすると、わざわざ遠出してまで一般参加する者など、自分以外には居ないかもしれない……

不安はいくらでもある。だが、それでも。
最初期からデュエプレを遊び続けてきたユーザーとして、「このゲームが何を為そうとしているのか」を見届けたい、という密かな野望の火は消えなかった。 

5月18日、8:15


気が付けば、ベルサール秋葉原の建物前に立っていた。
見渡すとそこには、既に大勢の人だかりが出来ている。

この人だかりは夢か、幻か。現実感のないまま、物販の整理券を待つ列に並ぶ。
右を見れば、スマートフォンを横持ちにしながら並ぶ者。
左を見れば、現在のND環境について声高に語る者。
この場は"デュエプレというゲームのプレイヤー"で埋め尽くされているのだ、と気付いた時、不意に自身の口角が上がった事を感じた。
なんだ、全て杞憂だったじゃないか

10:00~

観覧席にお客さんが数人、とかだったらどうしようかと
滔々とトークをするクボ研究員を、7割ほど埋まった観覧席で眺めながら、
公式の人も、同じ不安を抱えてたんだな
と密かに得心した。

観覧席に座っていると、いつもは配信越しで観る愛原さん、小笠原さん、フェアリーさん、クボ研究員、ちゃんなべが目の前数メートルの先で動いている。
不思議な気分に駆られながら、ふとガンスリンガー席の方に振り向いた。

それはまさしく、大きな竜巻のようだった。
列から解き放たれたと見ればすぐに対戦し、対戦が終わればすぐさま列へと並び直す人々。そのサイクルは大きな渦を巻いているかのように見えた。
 
それを見て、プレイヤー参加ではない人たちの熱量が──────なんて、失礼極まりない思考だった、と心の中で恥じた。
デュエプレが好きな人たちが、デュエプレが好きな人たちと対戦できる機会。
それに掛ける熱量は共有され、伝播し、大きな渦となって会場を揺らしていたのだ。

12:00~

ようやく物販の整理券番号が呼ばれ、物販列に並び直した直後。
Xのダイレクトメールに着信があった。

その着信が来る少し前、SNS上でよく交流していたとある方(本人希望によりA氏と呼称)から、「今、デュエプレGPの会場の方に向かっているが、会えるようだったら一度挨拶したい」との連絡があった。

それから2通目のDMを開くと、「着きました」との知らせ。
物販の購入を急いで済ませ、待ち合わせの場所へと向かう。

正直な所、SNS上の知り合いと実際に会った経験というのはほとんど無い。 
自分自身、現実の情報をあまり開示しないSNS運用をしている事や、デュエプレというゲームの性質上実際に会う必要や機会がない、という事も影響している。

だからこそ、SNS上でよく話す人物が、目の前に実在している、という事に酷く違和感がある、というか、現実感を覚えなかった

お相手の方もそうだったのだろう。最初はお互い、ぎこちない挨拶から始まった─────

しかし、である。ものの数分話している内に、「あぁ、この方はやはり(SNS上の)A氏なのだなぁ 」と深く納得し、そこからは淀みなくデュエプレトークに華を咲かせる事になった。

結局の所、「デュエプレ」という"共通言語"さえあれば、緊張が解けるのも一瞬なのだ

そして、このような出会いをもたらすのは"機会"だ。デュエプレが好きな者たちが集まるこのイベントは、ただの大会という以上の意味、すなわち"交流"という側面を強く帯びている。
DCGという性質上、普段はゲーム上、あるいはSNS上で結びつく人々が、現実としてその存在を確かめ、同好の士として語り合う機会を生み出す事。

無論、交流の方法が限られるオンラインならではの良さもあるが、オフラインで開催する意義もまた強く感じる、そんな機会となった逢瀬だった。

15:00~

A氏と一緒に昼食を取り、会場に戻ってきた後も話を続けていたが、ここでA氏が事前にコンタクトを取っていたもう1人の人物である、B氏と合流。
B氏もSNS上でよく知る人物だった為、打ち解けるのに然程時間は掛からなかった。

そうして3人でモニターに映る準々決勝の試合を眺めていると、予選よりも観覧席の人数が増え、そして徐々に観覧する人々のボルテージが上がっていっている事に気付いた。

例えば、《メンデルスゾーン》を2枚とも外したシーン。会場は大きくどよめき、頭を抱える人もいる。
例えば、仕込まれた盾を、トップドローの《ダイハード・リュウセイ》で焼き尽くしたシーン。会場ではオオオオオオという歓声と共に、拍手が巻き起こった。

会場の熱が、一体になりつつある。
そんな予感がした。

そうこうしている内に、ガンスリンガー席は景品の在庫切れと共に机の撤収が入り、その椅子は観覧席の列を増やす用途に当てられた事で、会場全体が観戦ムードに移り変わっていく。

18時頃、A氏が用事によって会場を去る中、私は迷っていた。

本当は、私も18時頃に会場を去る予定だった。だが、この会場の熱は、ここから更に盛り上がる。そんな予感が、駅へと向かう足を引き止めていた。

18:00

B氏と共に、増やされた観覧席の座席へと座る。
残すは決勝戦。
準々決勝、準決勝と名カードが続いた中で、一階フロアに残るオーディエンスの熱は完全に温まっていた。

ここで、ささぼーの提案が入る。決勝戦のみ、観覧席の皆で席を立って、「デュエマ・スタート」を叫ぼうというのだ。

数瞬の間を置かず、全員が立ち上がった。

その瞬間、思わず笑みが零れてしまった。
そうだ、ここにいる人は皆、デュエプレが大好きで、真剣勝負が大好きなのだ。

小笠原さんと加賀美社長が音割れするほど熱の入った開始コールをすると、全員が「デュエマ・スタート」を思い切り叫ぶ!

試合が始まっても、会場の熱狂は収まらない。
決勝戦の両選手の一挙一投足にどよめきが起き、素晴らしいプレイに拍手が巻き起こる。

それはまるで、会場が一つの生物になったような感覚だった。

特に第3試合、小栗選手が《XXX》を引いた時の、観覧席全員が共鳴した歓声の事は、生涯忘れる事は出来ないだろう。

決勝戦が終わり、回らない頭で新情報を咀嚼しつつ、突然の《ギャロウィン》のシークレット発表で横転した後。
素晴らしい試合を見せていただいた選手の皆様、長時間の実況・解説をしてくださった出演者の皆様、イベントの設営をしてくださったスタッフの皆様、そして何よりイベントに参加した方全員感謝の念を抱きながら、会場を後にした。

デュエプレ=e-Sportsへ

結局の所、恐れとは別の部分で自分が確かめたかったのは、
デュエプレって、わざわざオフラインでやる必要があるの?
という疑問の答えだった。

その疑問をユーザーにぶつけられるという不安は、運営側にも多少なりともあったのだろう。
デュエプレ運営スタッフである松浦さんは配信の最後に
「オフライン大会の良さを推してきたが、それがユーザーの方々に伝わっているかは不安な部分もあった」
という旨の事を語っていた。

だが、実際にイベントに参加してみて、デュエプレに熱狂する人たちがこれ程多く居る事SNS上で関わった人と実際に会う事で得られる経験、そして何より、自分自身がその熱狂の一部になれる事。
それこそが大型オフライン大会の意義である、という答えを見出す事ができた。

デュエプレ1周年インタビューにおいて、
オンラインイベントが開催できるDCGアプリにおいて、オフラインイベントを開催するこだわりとは何か?
と尋ねられたゲームディレクター・トモ氏は、以下のように答えている。

トモ:そうですね。私以上にプロデューサーが「デュエプレをeスポーツとして成立させたい」という強い思いがあるからですね。
(中略)
そのためにも、映像で見せることも大事ですが、公式大会をオフラインで実施し、実際に観戦してもらう必要があると考えています。TCGの「デュエル・マスターズ」の大会も何度か視察させてもらって、その決勝戦でデュエルをする選手たちの表情や手の動き、カードのさばき方など、そうした機微も全て含めて、「この大会はすごく面白い、かっこいい」と思えるところなので、デジタルゲームにしてもそのような部分を見せたいというのがオフライン大会を行いたい一つ目の理由ですね。

【デュエプレ1周年】デュエプレ世界へのこだわり、目標は「eスポーツ種目に!」今だから語る開発者インタビュー 後編

この目標を目指す上で、デュエプレGPは偉大な第一歩を踏み出した。

イベント会場で感じた、リアルな熱狂。
この熱こそが、デュエプレをe-Sportsとして新たなフェーズへと押し上げる原動力なのかもしれない。



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