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影の支配者、《アルカディア・スパーク》【DMPX-01環境】


《アルカディア・スパーク》。
TCGでは『マスターズ・クロニクル・デッキ2016 聖霊王の創世』に収録され、デュエプレにおいては最新弾『PLAY'S CHRONICLE PACK』にて初収録となったカードだ。

TCGでは除去モード時の強制1ドローを生かし、主に『受け札』兼『ループデッキのフィニッシャー(無限回使用によるLO促進)』として活躍したが、デュエプレでは問題の除去モードテキストに『山札に加えられたなら』という条件が付け足され、基本的にLOを狙う用途には使えなくなった。

さて、そんな《アルカディア・スパーク》だが……

『実は、このカードこそが現環境(DMPX-01環境)を牛耳っているのではないか?』

環境を考察している内に、筆者である私はこのような考えに辿り着いた。

果たして、これは真なのだろうか?
今回の記事では、この考えに至った理由について記していく。

理由1:5c色基盤としての役割と、《ニューゲイズ》とのシナジー

DMPX-01環境では新しく、【5cニューゲイズ】というデッキが生まれた。

これはDMPX-01に収録された新カード・《神聖貴ニューゲイズ》の能力を十全に活かす事を目的としたデッキタイプである。

フルスペックを発揮するのにデッキを5色にまとめる事を要求しながら、自身は無色カードである《ニューゲイズ》。
このカードの抱える大いなる矛盾を満たす為には、周辺カードで5色の要件を達成する必要がある。

しかし、最近まで単色推しのパックが続いたNDのプールでは、1枚で複数の色を兼ねられる多色カードの選択肢自体が少ない。

必然的に、3色を兼ね、自身も優秀なフィニッシャー・妨害能力を持つ《ニコル・ボーラス》か《偽りの王ヴィルヘルム》が【ニューゲイズ】デッキの主軸として考えられる事になるが……

これらのフィニッシャーの色(赤黒(+青))+マナブースト用の緑、という色の組み合わせにする場合、5色を達成する色基盤として青白のカードが必須になる。
また、最初からマナ基盤として扱う事を考えるのなら、序盤に使用しないフィニッシャーや手札から使用する事をあまり想定しないトリガーの受け札などが都合の良い存在だ。

色基盤となる青白の多色で、受け札にもなるカード……

そう、ここで《アルカディア・スパーク》の出番である。

まず、色基盤という視点において、現在環境最大の勢力である【5cニューゲイズ】というデッキを成立させる上で、このカードの存在は無くてはならない。

またそれだけではなく、そもそもこの《アルカディア・スパーク》の持つ全タップ効果自体が《ニューゲイズ》と相性が良いのである。

例を挙げよう。
相手の盤面に5体クリーチャーがいる状況で、《アルカディア・スパーク》を踏ませ、全てのクリーチャーをタップした。
返しのターン、マナに5色が揃っている状況で《ニューゲイズ》を出す。
すると何体まで処理できるだろうか?

答えは5体全てだ。

まず、《ニューゲイズ》の出た時の効果で《ガイハート》を装備、タップしているクリーチャーに攻撃。

《ニューゲイズ》の攻撃時効果で《ガイオウバーン》を装備・バトル効果使用、この時点で1体処理。


《ニューゲイズ》が攻撃先とのバトルに勝つと、《ガイオウバーン》は《ガイラオウ》に龍解。2体目の処理。


《ガイラオウ》で更にタップしているクリーチャーに攻撃、2回目の攻撃に反応して《ガイハート》が《ガイギンガ》に龍解、7000火力を放つ。3、4体目もここで処理できる。


最後に龍解しSAとなった《ガイギンガ》が攻撃。
これで5体を処理しつつ、《ガイラオウ》のバトル効果による防御まで構えられる。

この様に、スパーク系の効果と《ニューゲイズ》が組み合わさると、その万能な処理能力を十全に発揮できる、という点において相性が抜群なのだ。

単なる色合わせとしてだけではない、《アルカディア・スパーク》の強みが見えてきたのではないだろうか。

理由2:『スパークをケアする』横並びデザイナーズ&侵略の隆盛と、それに対する『確定1体除去orスパーク』の2択の押し付け

とはいえ、先述の例は少々極端だ、という見方もあるだろう。

5体処理できるといっても、環境にいるのはクリーチャーを並べるデッキばかりではない。 
【バイク】のような、1体のクリーチャーを大型に変換しながら攻撃するデッキも存在している、というのは事実としてある。
そうした【侵略】デッキに対して、(最初の攻撃における)スパーク系のトリガー呪文は無意味になりがち、というのは常識と言っていい。

が、《アルカディア・スパーク》に限ってはその常識は当てはまらない。

ここで《アルカディア・スパーク》のもう1つの効果、『デッキバウンス+1ドロー』が意味を持ってくるのだ。

『侵略』によってサイズが大きくなり、《ニューゲイズ》では処理できない大型獣に対しても、除去モードを使用すれば《アルカディア・スパーク》が腐る事はない。

また、【5cニューゲイズ】と同じく、DMPX-01によって新しく環境に登場したデッキタイプ、【赤白サムライ】や【メカオー】は横並びを推奨するデザイナーズでありながら、スパークに対する耐性を持っている。

【赤白サムライ】は《紫電ボルメテウス・武者・ドラゴン》によるタップ時の全軍アンタップによってスパークを掻い潜る事ができ、【メカオー】は《超神星マーキュリー・ギガブリザード》による呪文封殺でスパークによる脅威を遠ざける事ができる。

しかし、それはこれらの対策カードを上手く建てられた時の場合に限る。

【メカオー】は確かに《マーキュリー》によって《アルカディア・スパーク》を止める事が出来るが、【5cニューゲイズ】の持つ更なる防御札・《界王類邪龍目デッドブラッキオ》との両対応は不可能だ。

最初の攻撃で《マーキュリー》をマナ送りにされてしまえば、結局は残りの2点で《アルカディア・スパーク》を踏むかどうか、という勝負に持ち込まれてしまい、これに対する完全なケアは難儀な課題である。

加えて《紫電武者》の場合では、《紫電武者》自体が建てられたとしても、そのデッキ構造上《アルカディア・スパーク》をケアする事は極めて難しい。

【赤白サムライ】は、サムライクロスギアを予め盤面に並べておく事で《紫電武者》のシンパシーを発揮させ、その上で《竜装ザンゲキ・マッハアーマー》を装備した《紫電武者》と共にその打点量で一気に攻め込むワンショットデッキである。 
つまり、その性質上、ワンショットに使用する打点は《紫電武者》を出すターンと同一ターンに一気に吐き出す事が多い(クロスギアに比べてクリーチャーは除去されやすい故、出来ればワンショットするターンに使用する事が望ましい為)。

しかしその状況は、『《ザンゲキ》をクロスした《紫電武者》が味方の召喚酔いしたサムライにSAを付与している』という事に他ならない。

そうなると、たとえ《紫電武者》の効果でスパーク効果に対して耐性を持っていたとしても、《アルカディア・スパーク》のもう1つのモードである『デッキバウンス』を《紫電武者》に使用するだけで味方のサムライはSAを失い、打点は止まる。

そうでなかったとしても、【赤白サムライ】の打点量の源泉は《紫電武者》の持つ全軍アンタップによって生じている。盤面から《紫電武者》が消されるだけで、【赤白サムライ】というデッキは機能不全に陥るのだ。

これらを見ても分かる通り、スパーク系への対策が増えた今の環境においても、《アルカディア・スパーク》と【5cニューゲイズ】のシナジーパッケージを完全にケアし切るのは極めて難題であると言える。
そしてその理由には、『除去orスパーク』という、ファッティの一騎当千の攻め方にも、ウィニーのレギオン的攻め方にも対応できる両方のモードが備わっている事が大きく関係しているのである。


理由3:『エンジェル・コマンド』の活用法と、『確定1体除去"+"スパーク』の対応範囲


さて、ここまでは《アルカディア・スパーク》のそれぞれのモードの強みについて触れてきたが、このカードの持つ強みはそれだけではない。

そう、『エンジェル・コマンドが盤面に存在すれば両方の効果が使える』、というのも強みの一部であるからだ。

【5cニューゲイズ】においてそれを実感するのは、《真・天命王 ネバーエンド》や《聖槍の精霊龍ダルク・アン・シエル》がバトルゾーンに存在する時だろう。

これらがバトルゾーンに存在する場合、両方の効果が使用できるようになる。

また例を挙げよう。
【緑単サソリス】というデッキタイプは、横並びの後一気に打点で攻め込む性質上、スパーク系統の効果に弱い。

今の環境は《アルカディア・スパーク》を筆頭に、スパーク系トリガーが比較的刺さりやすいかつ採用するデッキも多い為、これらへのケア手段として《獣軍隊 シュパック》を採用している事が多い。

確かに、《シュパック》の持つ『相手の効果によってタップされた時、全軍をアンタップする』能力はスパークへの回答になる。
【緑単サソリス】は《豪勇者「猛攻の面」》によって打点に余裕があるデッキである為、《紫電武者》のように《アルカディア・スパーク》で除去モードを使用されても、リーサルに必要な打点は残りやすい。
つまり、《アルカディア・スパーク》であっても"シールドに2枚要求"にする程度の活躍は見込めるのである。

しかし、それはバトルゾーンにエンジェル・コマンドが存在しない時の話である。

《アルカディア・スパーク》のようなモードを持つ呪文はテキストの上に書かれている効果から先に処理しなければならないが、《アルカディア・スパーク》は見ての通り除去効果が先、スパーク効果が後。

つまり、《シュパック》を除去した後、スパークを放つ、という挙動になる為、《シュパック》の全軍アンタップ効果は起動しない。

これを踏まえると、《シュパック》が《アルカディア・スパーク》に対する完全回答にはなっていない、という事が見て取れるだろう。

また、この『盤面にエンジェル・コマンドが存在する』という条件、クリーチャーに限ったものではない。

クリーチャー以外のエンジェル・コマンドなんて存在しないだろう、と一笑に付す事はできない。

なぜなら、DMPX-01はその『クリーチャー以外のエンジェル・コマンド』かつ、クリーチャーよりも遥かに場持ちの良いカードが収録されていたからだ。

《天装 タイショウ・アームズ》
【赤白サムライ】のリソース源として使用されるこのクロスギアは、cipによるドロー効果を目的として採用されている事がほとんどであり、盤面に残ったこのカードをわざわざ処理しようと考えるものは少ない。

だからこそ、《アルカディア・スパーク》の効果を余すこと無く使い切る事のできる優秀な『エンジェル・コマンド』として白羽の矢が立った。

ただでさえ【赤白サムライ】は《紫電武者》の持つ6000火力以外は除去手段に乏しいデッキだ。
《永遠のリュウセイ・カイザー》のような封殺クリーチャーが出てきてしまうだけで、趨勢は大いに揺らぐ。

そこに、盤面全体をストップしつつ、苦手な大型獣の処理までしてくれるこの《タイショウ》+《アルカディア・スパーク》のパッケージは、スパークによる受けとワンショットを信条とし、妨害に弱めな【赤白サムライ】の弱点と強みを補完するカードとして大いに活用できる存在だったのだ。


おわりに

デュエプレの歴史において、《ホーリー・スパーク》から連なる『全タップトリガー』の系譜は常にその存在感を遺憾無く発揮してきた。

それはデュエプレというゲームが『ワンショット』とそれを防ぎ貴重な1ターンをもたらす『スパーク』、更にそれを止める『封殺』のイタチごっこを繰り返してきたからだ。

ならば、封殺とワンショットを兼ねるデッキが増えに増えた昨今、(【5cニューゲイズ】という圧倒的なパトロンの存在があるにしろ)『封殺を咎める除去』と『ワンショットを咎めるスパーク』の両方を兼ねた《アルカディア・スパーク》が台頭した事も頷けるだろう。

現在環境トップのデッキに重要な色基盤兼メイン防御札として採用されている事、そしてその周辺デッキはこのカードのケアの方法に四苦八苦している事。
見れば見るほど、環境を裏から支配しているのはこのカードのように思えてくる。

《反撃のサイレント・スパーク》や《ボルメテウス・ホワイト・フレア》、《支配のオラクルジュエル》など多色かつ+α(除去)効果を持つスパークはこれまでも生まれてきたが、スタン落ちしたそれら以上に《アルカディア・スパーク》はその輝きを放っている。

DMPX-01環境の影の支配者、《アルカディア・スパーク》。聖霊王の威光は、影からどこまで環境を照らし出すのか。


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