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ドロン・ゴーの逆襲

どうも。くーぼー(@Soranaki00)です。
普段はツイッ……Xでデュエマとデュエプレの話をしています。

さて、デュエプレが指す時計の針もいよいよ革命編中盤に進み、そろそろE3のカード郡がスタン落ちする時期が近づいてきました。

デュエプレE3の特色は、何と言っても強化されたドロンゴーこと、PSドロンゴー

TCGで全く使われなかったといっても過言ではないこの能力は、デュエプレの歴史に爪痕を残した……どころか、E3本来の主役として堂々と胸を張れる大躍進を遂げました。

果たして、失敗ギミックであったはずのドロンゴーに何が起きたと言うのでしょうか?

今回はその謎をメカニズム的観点と共に振り返ってみましょう。

1.TCG版ドロンゴーの問題点

では、そもそもなぜTCGではドロンゴーが使われなかったのか?
その要因はいくつかありますが、元を正せば大体はまずここに行き着くでしょう。

問題点1.ドロンゴーを持っているクリーチャーが弱い

勘違い、というより混同されがちですが、ドロンゴーという能力自体は弱くありません。『被破壊時に手札に指定した名称のクリーチャーがあれば踏み倒せる』、条件はそれなりに厳しいですが普通に使えば強力な除去耐性であり、特段悪い能力ではないはずです。

ならば何が悪かったかと言えば、その名称指定の対応範囲が狭すぎた事、そしてドロンゴー持ちクリーチャーが有する特性『エグザイルクリーチャー』に原因があると言えるでしょう。 

エグザイルクリーチャー固有のテキストである『同一指定名称カードの一体制限(伝説ルール)』はドロンゴーを汎用的に使う事を拒絶するようなテキストです。

一体場に出てしまうと同一の指定名称を持つカードが場に出せなくなるこの制約によって、エグザイルの枚数を積めば積むほどプレイできないカードが手札でかさばり、除去耐性を維持する為にはその使えないカードをキープし続けなければいけません。

しかも、それを吐き出せるのは場に居るエグザイルクリーチャーが破壊された時だけ。

そんな事が分かっている状況でむざむざと破壊してくれる相手などいません。結果的に、ドロンゴーは常に手札に受動的な死に札を抱えながらプレイしなければいけない能力になってしまったのです。

加えてE3でリリースされたエグザイルクリーチャー達は、この厳しい制約を課されてまで使いたくなるほど強力な能力を持ち合わせていませんでした。

要するに、通常のクリーチャーに毛が生えた(これすらも怪しい)程度のスペックしか持たないのに複数枚引くと非常に腐る、なのに複数枚積まないとそもそも除去耐性が付かない、という最悪のジレンマがエグザイルクリーチャーには存在したのです。

更に、これらの問題は『下級エグザイルが破壊される事で上級エグザイルにドロンゴーする』というドロンゴーのコンセプト自体に負の影響を与えていました。

下級エグザイルのスペックを少し見ていきましょう。

5コストのATは使えねぇって!
ギランド亜種
ちょっとパワーの高いほぼバニラ

見ての通り、下級エグザイルはスペックの低さが目立つものが多く、ドロンゴー以前に5コストのアタックトリガー獣やギランドをわざわざデッキに入れたいか?という話になってきます。 

こんなカード達を使うくらいなら、そもそも強力な効果を持つ上級エグザイルだけを積んで、その中で稀に除去耐性を運用する方がよっぽど合理的でしょう。

実際、TCG版におけるエグザイルクリーチャーとドロンゴーの運用はそのような形が主流でした。

普通に強い人たち①
普通に強い人たち②

問題点2.ドロンゴーはあくまで受動的な除去耐性に過ぎない

例に挙げた強力なエグザイルたちがドロンゴーを活用していたかと言うと、別にそんな事はありません。
これが2つ目の問題点であり、1つ目の問題点で話した『伝説ルールの弊害』、すなわち"デッキに複数枚入れるデメリットがメリットを上回らない為、これを軸にデッキを組む意義が薄い"という根本的な問題が解決していないのです。

除去耐性というのは強力なテキストではありますが、無いなら無いで別に負けに直結する程のゲームへの影響力はありません。
同名カードを手札にキープするのが難しく、かといってエグザイルの制限によって枚数も積みたくなく、そもそも効果がグッドスタッフとして強力なら、ドロンゴーなんて不安定な除去耐性に頼らずとも、使い切りの一般クリーチャーと同じ使い方をすればいいだけなのです。

その為、単体で強力な《カツキングMAX》や《ミケランジェロ》は【5c】のようなグッドスタッフに登用され、そこでドロンゴーを期待される事はほとんどありませんでした。

問題点3.そもそもドロンゴーが成功した所でゲームには勝たない

前述の通り、ドロンゴーを主軸にしたデッキには『場に出たエグザイルをわざわざ破壊してもらえない』=棒立ちになるだけという問題があり、これは問題点2の"受動的な除去耐性"という要素が大きく足を引っ張っていました。

E3当時の開発もこの問題点を鑑みてエグザイルを自壊させる手段を複数登場させ、能動的にドロンゴーをできるように仕向けます。

しかし、更に根本的な問題点として、苦労してドロンゴーに成功した所で、それは場にクリーチャー1体が着地するだけなのです。

これはエグザイルクリーチャーの元来のスペックの低さにも関連しますが、下級エグザイルと上級エグザイルと自壊カードというバリューの低いカードを揃えてまでドロンゴーをするというのはとてもリターンが釣り合っておらず、そもそもそのような手間を掛けるのであれば素直にマナを伸ばして上級エグザイルを出した方がよっぽど簡単である訳で、それを差し置いてもドロンゴーで出す事に意味があるエグザイルは《神聖牙 UKパンク》のような一部のカードのみでした。

エグザイルの全体的なスペックの低さと、"ドロンゴー"というギミックを経由する旨みがない上級エグザイルの存在が、ドロンゴーを軸としたデッキが生まれる事を阻害していたとも言えるでしょう。

これらを整理すると、

・ドロンゴーという能力自体は決して弱くない 

・しかし、エグザイルクリーチャーの持つ『同名制限ルール』がドロンゴーという能力ととことん相性が悪い

・加えて下級・上級エグザイルのスペックの低さが祟り、開発者の思い描いていた『下級⇒上級へのドロンゴー』は全く使われず、グッドスタッフ性を評価された一部のエグザイルがドロンゴーを無視して使われるだけに終わった

環境シーンで使われなかった理由はこの辺りですが、実際には同一名称を介した下級⇌上級エグザイルの限定的すぎるシナジー(拡張性のなさ)と、それぞれのレアリティ格差による入手難度の問題によってカジュアルシーンでも十全な遊び方が出来たとは考えにくい部分があります。

例えば下級エグザイルである《武闘龍カツドン》はアンコモンですが、それに対応する上級エグザイルの《武闘将軍カツキング》は最高レアリティのビクトリーレアであり、同じような構図の超次元呪文─サイキックと比べ高レアリティ側にも枚数を求め、結果的に意図された下級⇒上級へのドロンゴー体験をする事自体が難しくなっています。

アンコモン
ビクトリーレア(4枚推奨)


そうした単純なホビーという面でも、ドロンゴーには機能不全な部分があったと言えるでしょう。

2.PSドロンゴーの革新

こうしたTCG版の問題を踏まえて、デュエプレ独自のドロンゴーとして開発された"PSドロンゴー"は以下のような仕様で実装されました。

PSドロンゴーの革新その1:ツインカード化による枠の圧縮


TCGのドロンゴーの問題点としてここまで散々語ってきた、『複数枚積まなければ耐性として機能しない上に、複数枚積むと腐る』という部分。

PSドロンゴーはまずここに手を入れています。

従来のドロンゴーギミックでは下級エグザイル獣が破壊された場合、手札に上級エグザイル獣を抱えていなければ下級⇒上級へのチェンジが不可能でした。
これは「低スペックな下級エグザイルを積まなければ(小型から大型へのマナジャンプという)ギミックの本領が発揮できない」という事に加えて、「下級&上級分のエグザイルでデッキの枠を圧迫する」問題を引き起こしていました。

しかし、デュエプレのエグザイルは、下級エグザイルと上級エグザイルを1枚のカードにする(ツインカード化)、というDCG的な解法で、この問題を解決しています。

これにより、序盤は軽量な下級エグザイルを、終盤は上級エグザイルを召喚と、状況に応じて自由に空いたマナカーブを埋める事のできるカードタイプに生まれ変わった事で、汎用性とカードパワーがグンと向上しています。
本来8枚積んでいた所が4枚に圧縮されただけでなく、4枚の中に8枚分のカードがある(カードによってはそれ以上)のだから、カードとして強くなるのは道理が過ぎますよね。

上級エグザイルを使う事を目的にしたデッキにおいても、ツインカードとして下級エグザイルが付いてくる事自体は何のデメリットにもならない為、TCGのような「下級エグザイルが置いてけぼり」になる事が物理的に発生しません。 

下級を使ってもらえないなら、使ってもらえるように上級にくっつけてしまえ。発想自体は剛腕そのものながら、その実スマートな解決策と言えるでしょう。
実際、デュエプレには過去にゴッドカードやルナティック進化のような、ツインカード化によって大幅に使い勝手が向上したカード郡が存在する訳なので、これもまたこれまでの経験値を良い方向に活かした発想です。

更に、ツインカード化に伴ってドロンゴーのシステムが「下級エグザイル破壊(手札の同色エグザイルを捨てる)⇒上級エグザイルへのドロンゴー(破壊された下級エグザイルが上級になって蘇生)」へと固定された事で、本来意図していた「小型から大型へのチェンジ」というギミックコンセプトがようやく形になりました。

PSドロンゴーの革新その2:ドロンゴー自体のしやすさの改良

ここまではエグザイルクリーチャーというカードタイプ自体が強化された事について触れてきましたが、PSドロンゴーにはそもそも、ドロンゴーというギミックを使いやすくする工夫も仕込まれていました。

その最もたる所は、TCGのような名称指定によるギミックではなく、「自身と同色のエグザイルクリーチャー」を手札から捨てる事で変身するギミックへと転換した事でしょう。

流石に、ツインカード化によって4枚に圧縮されてしまったエグザイルで名称指定ドロンゴーを行う事は難しいと判断されたのかもしれませんが、これがPSドロンゴーというギミックの利便性向上に一役買っています。

TCGドロンゴーの名称指定、という極めて厳しい縛りにおいては、特定のエグザイルを主軸にしたデッキの構築は硬直化せざるを得ませんでした。
つまり、枠の圧迫問題と表裏一体の問題として、互いに名称指定し合うエグザイルにのみシナジーがあり、名称指定サポート外の他のエグザイルを積んだりするメリットがほとんどなかったという事です。

しかし、PSドロンゴーはここに目を付けます。

同色エグザイルをコストとする事で、他のエグザイルと組み合わせる、という構築の選択肢を新たに提示し、実際に汎用的なトリガーとなる (他エグザイルのドロンゴーコスト用を兼ねた)ドロンゴーを持たない通常エグザイルをオリジナルカードとしてリリースする事で、エグザイルというカードタイプ、ドロンゴーというギミックそのものを汎用的に普及させるという手段に出たのです。

こうした通常汎用エグザイルや他のドロンゴー持ちエグザイルをドロンゴー用のコストにできるようになった事で、同名制限に引っかからないドロンゴーコストを手札に抱えられるようになり同名制限の負荷が軽減された他、TCGではドロンゴー先としてタイミング良く上級を抱えておかなければならない、厳しいハンドキープを強要されていた部分が大幅に緩和された事で、ドロンゴーというギミックそのもののピーキーさが削ぎ落とされ、「比較的使いやすいギミック」という言える範疇まで引き上げられたと言えるでしょう。

この仕組みはPSドロンゴー更に上位の能力、PSドロンゴーVにも活かされています。
PSドロンゴーVはPSドロンゴーとは異なり、コストとして捨てるエグザイルの文明すら問わない事で、どの文明のエグザイルとも組み合わせる事ができる、というビクトリーレアならではの能力であり、すなわちそれは文明の垣根を越えたエグザイルデッキを作り出すのに十分な動機づけとなる訳です。
その事はこの能力を持つ《カツキング》と《UKパンク》が主軸となったデッキ、《赤青UK》が成立した事からも見て取れるでしょう。

PSドロンゴーの革新その3:元々のスペックの底上げ

ツインカード化によるカードパワーの向上と枠の圧縮の成功、PSドロンゴーのシステムによるドロンゴーそのもののピーキーさの軽減と構築の幅の広がりなど、ギミック面での革新について触れてきましたが、実際には単体のカードスペックの部分にも大きなテコ入れが図られています。

例えば《超合金ロビー》。
このカードはTCGでは5コストともはや下級と呼べるかも怪しいコストをしていましたが、デュエプレに登場するに当たって3コストに減量。

エグザイルの性質上、当然コストが離れていた方がドロンゴーをした時の旨みは大きい為、2コストの減量は大幅な強化と言えるでしょう。
更に、それに伴って、《ロビンフッド》側も出た時・攻撃時に1ドローor1バウンスだった所から、デュエプレでは両方行うように変更された事で大幅な強化を享受。
結果としてこの《ロビー》/《ロビンフッド》はエグザイルの中、否、デュエプレのカードの中でも屈指のパワーカードになりました。

特に《ロビー》の強化は目覚しいですが、それ以外のエグザイルもTCGの反省を活かすように、コストあるいは能力に大なり小なりのテコ入れが成されています。

直接的にはドロンゴーの強化とは言い難い部分ではありますが、問題点の所でも「そもそも下級エグザイルのスペックが低い」事を挙げていた為、まずは根本原因としてそこにフォーカスを当て、しっかり改善したという点で、デュエプレにおけるドロンゴーの革新の一部として役割を果たしていると思います。

3.まとめ

問題点と革新の部分を見比べてみると分かりますが、デュエプレのドロンゴー革新のスタイルは元々のエグザイル・ドロンゴーの抱えた問題をそのままなかった事にしたような解決策を取っている訳ではありません

エグザイルクリーチャーの同名制限ルールはそのままですし、ドロンゴーに当たってカード1枚をコストとして使用する、という元に近い挙動は遵守しています。

しかし、その中で、ツインカード化という根本的なカードパワーの引き上げに、PSドロンゴーというドロンゴーをしやすいシステムの構築、周辺カードプールの整備に単体スペックの向上など、コンセプトを壊さない範囲で出来る限りカードとしての可能性を拡げるような開発方針を取っている訳です。

散々述べている通り、本来ドロンゴーという除去耐性能力は弱くはないのです。ただ、それを持ったカードのカードスペックの不足や、単なる一体分の除去耐性でしかないそれをメインギミックに据えようとしたズレが、弱い部分だけを過度に強調する結果となってしまった。

それを丁寧に掬い洗い、「ツインカードというカードタイプが強いから付属のドロンゴーも強い」というあるべき状況にまで再編した所に、デュエプレの革新の本質があると思います。
 
結果として、エグザイル・ドロンゴーはゴッドカードやルナティック進化と同じく、DCGらしい、または"デュエプレ"らしい革新的なギミックとして、デュエプレの歴史に名を刻んだのです。  


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