怖いほど

「声をかけてくれたらよかったのに」
その一言が欲しかった。
でも返ってきたのは望んだ言葉じゃなかった。
前に戻っただけなんだ、と自分に言い聞かせる。
ずっとそうだった。僕は追い続けてきた。
草木が芽吹く時期、ようやく隣に並んだ。
君はこっちを向いてくれた。
それがとても嬉しかった。
僕だけに向けられる笑顔は季節外れの向日葵のようで、眩しくて特別だった。
でも、どんな花もいつかは枯れてしまう。
今の君は花がらだけになってしまったようで。
でも花がらを残してくれているのなら、種を取ってもいいんだよね?
今度は追いかけなくていい、横で芽吹くのを見守るだけでいい。
君がそれでも良いのなら僕はいつまでも待ち続ける。
背中を見続けるよりも辛いものじゃないんだ。
前に戻ったわけじゃない。
ただ、花が枯れただけ。

花が枯れた理由を知らないだけ。

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