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【詩】ストロベリージャム

秋の気配が増して青空は白くなってきた
私にできることってなんだろうと思った
いつしか雨やどりをしている気分になって
惨めにもなる

こうもり傘が街を通る時
どきりと心臓がなる

お父さんを思い出す
もう今はいないけれど
お父さんは優しい人だった

私の初恋はたぶんお父さんだ

ファザコンだと近所の同級生が言ってきた時
お母さんに
『お父さんは疲れてるんだから』と言われた時
それでも甘えることはやめなかった
誰にでも平等で勇気のある人で憧れだった

私にできることってなんだろう

他人に親切にできない
いつも愚痴ってる
幸せな人を見ると嫉妬してしまう


秋は哀しみの色
通り過ぎる人もどこか早足で寂しい
街路樹が葉っぱで覆われて
もうすぐ落ちてゆく運命
ポツポツと降り出す雨の粒
癒してくれるなんていうけれど
私には無理みたい

学校への道に並ぶ
寒々しい桜が春を待ち望む

道路に落ちた空き缶を拾って
近くのゴミ箱に捨てた

向こうから着物を着ている人が歩いてくる
こんなお天気なのに大変だ
通り過ぎる時に
お香の匂いがふんとした
『雅だな』
そんな感想ありきたりな気がした

私は孤独で友達も少ない
幼馴染の涼ちゃんがいるけれど

今日は口紅はつけていない
『ストロベリージャムみたいだね』
そう言った涼ちゃんに早く会いたい
あの坂を登った先で歩いているだろうか

足早に登った
涼ちゃんの背中が見えた
私は走る
思いっきり
それから元気な声で
『おはよう』って言うんだ


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