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車いすママの日常22(息子は治療入院中)

私も息子も、骨形成不全症という病気を持っています。

遺伝子の異常によりカルシウムが尿中に流れ出してしまい、これにより骨が脆くなったり、骨の変形が生じたり、骨の中に細かい亀裂が入ることでひどい痛みが出たりするのがこの病気。私たちは一般的には状態が軽い方だと言われているけれど、「マイクロフラクチャー」と呼ばれる「骨の中で細かい亀裂が無数に入る」という症状がひどく、私もそうだったけど息子も小学生の頃までは痛みで文字通り「のたうち回る、泣き叫ぶ」ことがたびたびありました。

私が子どもの頃はこの「マイクロフラクチャー」が認知されておらず、病院にいくら行ってもこれは骨の中で起きている症状なのでレントゲンには写らず、医師からは「気のせい」「甘えたいだけでしょう」などと言われるだけで、その後入所していた障害児の施設では「そんなに構って欲しいのか!!」と職員に怒鳴られることもありました…。だって痛いものは痛いのよ、でもそれをわかってもらえないつらさ。ちなみに痛みがひどい時にMRIを撮るとちゃんと亀裂が無数に写るらしいです。私は誰にもこの痛みを信じてもらえなかったので当然痛み止めなんてもらうことはできず、施設にいる時は湿布も病院側の管理なので貼らせてもらえないこともあり、泣きながら、ううーっと体に力を入れながら、痛みに耐えるしかありませんでした。

息子も全く同じ症状が出たので、整形外科に相談したことがありました。しかしやはり、「レントゲン上は問題ありません。小さい子によくある、甘えたいだけでしょう」とのこと。しかし先生、そうは言っても本人は絶対痛いんだよと思い、そもそも私は何があっても息子を信じる、疑わない、と生まれた当初から心に固く決めているので、一晩中痛がる足をさすり、大丈夫、大丈夫、辛いね、頑張ってるね、と抱きしめながらよく夜を明かした。

そしてある時出会えた骨形成不全症専門の先生にこの話をしたところ、「あ、お母さん、それはマイクロフラクチャーという症状です。日本ではまだあまり知られていないけど、間違いなくそれは骨形成不全症の症状のひとつなんです。痛いよね、よく頑張ったね」と教えていただき、もう私も思わずその場で涙が出ました。私の幼い頃のあの痛みが、いくら痛いと言っても信じてもらえなかったあのつらさが、いま、救われた気がして。

それからは堂々と、いや、言い方おかしいかな?でも文字としたらこれが一番しっくりくるのだけど、「堂々と!」痛いことを周囲に伝えられるようになりました。これ、マイクロフラクチャーという症状なんです!って。ありがたいですね、ちゃんと症状のひとつとして認められるって、こんなに気持ちが救われるものなんだなと心底思いましたよ。

息子はこの春中学2年生になり、今年初めての治療入院に挑んでいます。年3回程度行われる、5時間ずつの点滴を3日間連続で投与するという治療の入院のたびに痛み止めと湿布薬を処方してもらうのが常だったけれど、今回初めて1回も痛み止めを使わないで治療の日を迎えました。これはすごいこと。マイクロフラクチャーが一度も起きなかったなんて、今までこんなことはなかったから本当に驚きです。

この病気は成長期に入ると途端に症状が重くなる(成長に骨がついていけず、さらに脆くなる場合が多い)ことがあり、私も成長期と呼ばれる時期はほとんど病院で過ごしていました。骨折して→治って→また骨折する、の恐ろしいほどのループで。しかし息子は生後9ヶ月の時から定期的にこの治療を受けていることで流れ出ていくカルシウムを堰き止めることに成功しているようで、それでも同年齢比を見ると低いもののある程度の骨密度は維持できている状態です。だから歩けるし、走れる。でもいまだにちょっと無理をすると足とか腕とか肋骨とか背中とか痛みは出るのだけど、それでも痛み止めを飲むほどではないからありがたい。

こういうふうに、時代は流れていくんですね。私の子どもの頃にはなかった治療が今は当たり前になっていて、だから骨形成不全症でもこんなに元気に自由に暮らせるようになった。こんなにありがたいことはありません。本当に、医学の進歩や、広く見れば世の中が障害を持つ人たちにとてもあたたかくなったと身をもって感じるし、ああ心から、感謝しかないなぁとしみじみ思うわけです。ありがたいです、本当に。できないことをできないと嘆くより、できることを「できる!」と喜ぶことが幸せで、例えば少し違う方法であっても、例えば少しの工夫でみんなと同じことを楽しめるならそれが「できる!」ということ自体に感謝をしたい、そんなふうに思います。息子はこの治療を受けることで、ずいぶん自由になりました。本当に、先生に、世の中に、時代の流れに、感謝しかありません。

コロナの影響で昨年から面会が禁止になっているため、入院中は私は息子に会えないのだけど、LINEで細かく報告が入るので安心しています。「もうこの治療入院は慣れっこだから平気だよ」という息子、頼もしい。がんばれ息子よ、そして入院中にスマホにダウンロードしていった映画ばかり観てないで少しは勉強もしろよ、と心に思う母なのでした。

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