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うつしおみ

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真実を求めてこの世界を旅する魂の物語。
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2024年4月の記事一覧

うつしおみ 第58話 小さな光

魂は春の浅い眠りの中で、 心の奥で光る小さな金色の光を見つけた。 それは魅せられるほどに美しく、 見つめているだけで幸せな気持ちになった。 さらに近づき触れてみると、 その輝きは魂を包み込み、眠りから目覚めさせた。 その目覚めは強烈な印象を刻みつけ、 それで魂は誰とも違った存在になれたと思った。 だが、魂はその光を眺めたり触れたりするだけで、 それが本当は何かを知らずにいた。 金色の光はただ美しく輝いているだけで、 魂に特別な何かを与えることはなかった。 魂は次第

うつしおみ 第57話 自由と運命

魂はこの世界を自らの意志で生きていて、 その運命を変えられると信じていた。 自由意志は眩い希望であり、 人生模様を紡いでいく原動力となっている。 ときには絶望し生きる気力を失うが、 自由意志でそこから立ち上がることもできるのだ。 魂はその自由意志を自分だと思ってたが、 それがどこから来るのか知らなかった。 どこからか心に浮かんでくる意志を、 自分の意志だとして信じて疑わずにいた。 それは緻密に編み上げられた世界の意志であり、 魂の中で掘り起こされる未来の記憶だ。

うつしおみ 第56話 正当と真実

魂はこの世界で何が正しいのかの答えを探して、 長い間さまよっていた。 正しいものを見つけてつかんでも、 それは摘み取った花のように萎れていく。 魂は変わり果てたそれを悲しい目で見つめ、 答えのない旅を思い途方に暮れた。 この世界に正しいものはないと結論づけるのに、 多くの人生を費やしてきた。 正しいものは確かにないのだが、 この世界にはまだ知られていない真実が在るように感じた。 魂はこの世界に正しいものではなく、 世界を世界たらしめている真実を探し始めた。 それは

うつしおみ 第55話 真実への旅

真実を求める蒼き魂は、 身を切る冷たい風に耐え忍びながら荒野をさまよっている。 真実を求める朱き魂は、 静かな森で暖かく澄んだ風に頬を緩ませ瞑想に勤しんでいる。 蒼き魂は血の気を失って乾いた手のひらを見つめ、 真実などあるのかと何度も疑った。 朱き魂は瞑想の静けさの中に至福を得て、 真実をその心地よさに重ね合わせていた。 蒼き魂はその厳しい旅を押し通しながら、 ようやく心の中に見紛うなき真実を見つけた。 朱き魂は真実を得て、その森にいる意味を失い、 自信に満ちた気持