引越し前の家と1人お別れ会

とうとう明後日引越しです。

昨日は4年通った美容室に行って、ずっと担当して下さった美容師さんにお別れの挨拶と、最後に髪を切ってもらいに行きました。
転勤ばかりでなかなか行きつけの美容室が見つからないことが多かった私が、こんなに長く通えたのは初めてでした。

「夫の転勤が決まったので来週引っ越します。お世話になりました」そう切り出したとたん、「そうなんですか。こちらこそお世話になりました」と丁寧に返して下さった美容師さん。この方はお店の店長さんで男性でしたが、私が伝えたニュアンス通りの髪型にしてくれて、私も店長さんもアトピーを持っているので髪に整髪料を付けたくない気持ちもよく理解してくれて、整髪料を使わなくても櫛を通しただけでそれなりに纏まるように考えてくれてとても有難かったです。

「引越しの準備に追われていますが、福岡に5年住んで都会よりもゆっくりとした時間の流れや建物や人の少なさに慣れてしまったので、次の東京に行きたくないんですよ。イヤイヤ準備しています」
ついそんな愚痴をこぼしてしまいました。店長さんも東京で暮らした経験がある方で、そんな気持ちを分かってくださいました。不安に思っていることも出来る限り明るく口に出すことが出来て、心に溜まっていた暗いものがほんの少し軽くなりました。


「オリンピックのせいもあるんでしょうが、関東に引っ越す方が増えているんですよ。見送る側もなんとも言えない気持ちになるんです。見送られる側はなんとも思わないのかもしれないですが…」
髪を切り終わる頃、店長さんにそう言われて、「そんなことないです。見送られる側も寂しいものですよ」と応えながら、私は少し嬉しい気持ちになってしまったのに驚きました。今までいろいろな土地を転々としてきて、行きつけと言えるようなお店に出会える事も無く、その土地で友達も出来ない暮らしが当たり前でした。でも、私は福岡に来て専業主婦ではなく仕事に出るようになり、その為に3か月に1度は美容室で髪を整えるようになり、行きつけの美容室が出来た。その美容師さんに、最後にこんなに嬉しい言葉を言ってもらえた。仕事は短期の派遣を選んでいたけれど、契約期間が終わるたびに一緒に働いた人達と別れる時には「寂しいね」って言い合った。
登録していた派遣会社でとてもお世話になった担当さんにも挨拶の電話をした時に、「次のお仕事をまた紹介したかったのに…。もっと福岡に居て欲しかったです」と言って頂けた。
私は転勤族になってから福岡に来て初めて私という存在と別れる事を寂しがってくれる人と交流する事が出来ました。それは外で人と交流出来ていたら当たり前で些細なことなのかもしれないけれど、転勤する度に新しい土地で旦那以外は私の存在を知る人はいない一人ぼっちの生活が長かった私にとっては、とても大きいことで嬉しい事だったのです。

「私が福岡で暮らしていたという痕跡を少し残すことができた」
決して形では残らないものですが、私がここに居た事を知っている人がいる。それがこんなに嬉しいなんて。

辛いことも苦しいことも福岡では沢山ありました。
それでもいろいろな人に出会えたことはいい思い出です。

一人で缶チューハイを飲みながらこんな時間に思い出を振り返りつつ、この家とのお別れ会をしています。
「この土地に来て、少しは私、成長できたのかな」そんなことを家に問いかけながら、あと少しの時間1人お別れ会をして気持ちの整理をつけようと思います。

福岡で私に出会ってくれた方たち、本当に有難うございました。
お世話になりました。

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