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好きなことを仕事にするということ

好きなことを仕事にするというのは、誰しもが憧れることだと思う。好きなことで食べていけたら、どれだけ楽しいだろうと。毎日が充実した毎日を送れるんじゃないかなんて夢を膨らませながら。

そういう私も、高校生の時に舞台照明に触れたときからこれを仕事にしたいと考えて進路を決め、もうかれこれ20年近く好きな仕事をしている。きっと、将来は舞台照明スタッフになりたいと思っている学生たちにとって憧れの存在なんだろうなと思う。

好きなことを仕事にするのは、そんなに難しいことではない。これから進路を決める年代であれば、今はとにかく多種多様な専門学校と大学の学科があるので、進みたいと思う道のことを学ぶことができる。また、そういう学校であれば、就職口も進みたい職業の企業に特化しているので選ぶのは容易い。

では、実際に好きなことを仕事にするというのは、本当に楽しいのか。

好きなことだけで食べていくというのは、お金をもらって生活をすることになる。もらったお金で税金を支払い、一人暮らしであれば家賃を払い、光熱費、食費、通信費、交通費、保険などを支払う。すべてもらったお金だけで賄うことになる。

舞台スタッフなんて、もらえる給料は本当に雀の涙だ。雀の涙しかもらえない給料で、生活を賄わなくてはならない。どれだけ忙しく働いていても、気付けば何年も給料が上がらず、上がってもわずか数千円なんてこともある。

好きな仕事に就いたからといって、すぐに希望する現場に出たり、ポジションに着くことはない。「この仕事はやりたくないからしたくない」なんて思っても、自分で仕事を選ぶことはできない。

人間関係による悩みもつきまとう。気難しい人、口の悪い人、性格の悪い人、何かあると人のせいにする人、自慢ばかりする人などなど、合わないなと思う人はどこにでもいる。実は仕事の悩みは人間関係の悩みが多数を占めるのではないかと思うくらい、悩みは尽きない。

という、書いているだけで暗くなる現状を書いてみたのだけど、決して「だから好きなことを職業にするのはやめろ」と言いたいのではない。

好きなことを仕事にすることは楽しい。でも好きなことが仕事になった時点で嫌なこと、やりたくないこともしなくてはならなくなる。想像していたのとは違うというギャップに悩まされるかもしれないし、中には好きなことを仕事にしたはずなのに、嫌いになって辞めてしまう人もいる。好きなことを嫌いになってしまうのは本当に辛い。

だからこそ、他にも好きなことを見つけてほしい。好きなことは一つだけじゃなくてもいい。どんなことでもいいので、舞台以外に全然違うジャンルの好きなことを見つけてみる。そうすると、今までと違った角度から舞台の仕事を見られるし、気分転換にもなる。

私の好きなことは、カブでのツーリング、写真、動画撮影、登山、文章を書くこと、ピアノを弾くこと。カブが好き過ぎて小型二輪免許を取ってスーパーカブC125を購入したので、これからもっとツーリングで忙しくなる。ツーリングキャンプもしたいので、少しずつ道具を揃えている。動画撮影がもっとうまくなりたいので、カメラ機材を揃えてドローン撮影もしてみたいと思っている。

どれも全く舞台とは違うジャンルのようだけど、根っこの部分ではつながっていると思っている。舞台という一つのジャンルを好きな状態で木しか見ていなかったところから、森を見られるようになるし、ドローンで森全体を空撮しているような視点で見ることができるようになる。

それからもう一つ。逃げ道はいくつでもいいから作ってほしい。もちろん、辛い先に希望が見えるのであれば、歯を食いしばってでも食い付いていってほしい。でもその先に絶望しか見えないのであれば、まずそこから逃げ出してほしい。自分を責めたり、自分にはこの仕事は向いていないんだなんて思わなくてもいい。たまたまいた場所に合わなかっただけ。

安全なところに逃げ出した上で、もう一度次に進むための計画を練り直してほしい。いわゆる戦略的敗退である。

私も何度も辛いことから逃げてきた。その先に絶望しか見えなかったから。一旦、舞台業界からも逃げたことさえある。それでも、今まで頑張ってきたのであれば助けてくれる人は必ずいる。

好きなことを仕事にしたからこそ、それが嫌いにならないために他に好きなことと逃げ道をつくることが大切だと思っている。

これから好きな職業に就こうとしている人は、どうかこの2つを頭に入れておいてほしいと思う。

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