虚夢十行 〜序〜(執筆者:すいか)

 意味を探してしまう。

 何気なく置かれたものにメタファーを感じたり、沸騰するケトルの湯気に巻き上げられ消えゆく昨日の夢にしがみつき、示唆するものがあるのではと勘繰って『夢占い』を検索欄に書き込んだりして、意味を探す、いや、もしくは、作りたがる。

 私は『私』という形を表面ではしているが、そこに言いようのない不安定さを感じてくる時がある。手を離せば、スライムのように形が崩れ、そのまま床に飛び散ってしまうのではないかと床を見つめることもあった。

 そのまま戻れないのではないか、アイデンティティが濁りそうで、あやふやが怖くて、明確化したくなる。

 しかし、無意味が嫌いというわけではない。無意味は自由だ。意味を見出すことも、ましてや名のまま無くてもいい。
 そしてこれから始めるのは人工的な無意味の作成である。見たことない夢を思いつきで綴っていくだけなのだから。
 
 まずは、と机に向かおうとしたら、足に不快なぬめりけを感じた。