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(2022.6.18-20)高松、丸亀旅行の前準備

ヒプノヒスマイクの縁で繋がったTwitter相互の方が、ある日猪熊弦一郎現代美術館の話をしていた。

猪熊弦一郎現代美術館(以下MIMOCA)には思い出がある。数年前の夏休み、大学の研修旅行の行き先となったのが瀬戸内芸術祭だったのだが、そのトリとして訪れたのがMIMOCAだった。谷口吉生さん設計による建築。フラットなコンクリートと大きな窓、吹き抜けが特徴的な美術館で、自然光がたくさん入る気持ちのいい空間だ。そして、猪熊弦一郎のカラフルで力強い筆致の絵画たち。私は雷に打たれたかのように恋に落ちた。私は彼のように物を見て、彼のように創作と向き合いたくて、彼の作品を見ていると勇気をもらえるようだった。全ての言葉たちが自分を代弁してくれているように思え、彼を深く知らぬというのに私はひとり浮き足立った。そんな自分に機嫌が良くなって、友人に絵の前で写真を撮ってくれと頼んで2枚撮ってもらった。『花嫁のスケジュール』という絵だった。

瀬戸内芸術祭といえば、隔年で開催されている、四国の島々をも乗っ取るかなり大規模なアートイベントだ。大学の研修旅行はある程度スケジュールが決まっており、立地の関係なども考慮すると見たい展示が散在していて回り切るのは不可能、などという事態が発生した。そして当時どうしたかというと、仲の良かった友人らと3人で前乗りを画策し、意気揚々と新幹線で高松入りした。しかしそれが確か定休日の店が多い曜日で、折角前乗りしたにも関わらず行き先行き先でたたらを踏むことが多く、私たちは3人「あちゃー」といった顔をしたものだ。そんな苦い思い出にもMIMOCAのお陰で有終の美を飾ることができ、研修旅行は概ね満足のいくものとなった。

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鬼ヶ島も行った。楽しかったなあ

そんなことを思い出しつつ調べ直したMIMOCAだが、現在進行形で猪熊弦一郎生誕120周年の企画展覧会が行われているということを知った。会期は2022年4月2日から7月3日で、情報を知ったのは5月も半ばを過ぎた頃だった。決断は急がねばならなかった。

https://www.mimoca.org/ja/exhibitions/2022/04/02/2599/ 猪熊弦一郎回顧展 美しいとは何か|企画展|MIMOCA 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

仕事を辞めて数ヶ月。私は未だに無職で、独身貴族満載な生活をだらだらと続けている。人は弱っていると、現状を変えるべく様々な行動に出る。散財する者、暴飲暴食に走る者、突拍子もない言動や行動で周りを驚かせる者、そして、自分の中のノスタルジーに吸い寄せられてしまう者も決して少なくないと思う。かくいう私もその内の一人だ。私は日常的に、記録への執着というか、忘却への恐怖を感じている。毎日無意識的にあらゆる記憶を反芻し、スマホでの日記執筆は意識的に毎日行う。それに加え、私は毎日、朝上手に起きられない。というのも、ノスタルジアの化身といっても過言ではない夢、その中へと毎日懲りずに何度も引きずり込まれてしまう。私はいい夢も、そうじゃない夢も、総じて悪夢と呼んでいる。ノスタルジーに浸り続けることは、結局のところ、あまりいいとは言えないだろう。人間は時間の中を生きている。歩みを止めれば、周りから一人だけ取り残されてしまう。職を失い、解放感に歓喜する一方で、私はかなり参っていた。私にとって仕事に明け暮れる生活はある意味現実逃避とも言えたので、それがぱったりとなくなってしまった時何が起こるかというと、自己そのものの100%が目の前に突きつけられる。自己意識の存在有無と日々戦っている私にとって、それはあまりにも酷なことだった。自分探しのために、良くないループへと落ちていく。好きなものたちに会いたい、好きなものを好きと思う気持ちを思い出したい。私は日々焦っていた。しかし、猪熊弦一郎の大規模展覧会は、ノスタルジーのみにとどまらず、とりあえず“物理的に”私を動かしていく、絶好の逃避行チャンスと言えた。私は数週間悩んだ末、香川へ飛ぶことに決めた


高松入りは空路一択だった。航空券が格安でばらまかれている時期だった。成田空港はソウルへ行った以来、2年ぶりの利用だ。高松空港は初めて利用する。私は一人で旅行するのは好きだけど、帰ってくるたびに緊張が解けた反動で、旅に必須な事項たちをさっぱり忘れてしまうのが常である。久し振りの空港利用はわくわくと不安でいっぱいで、下調べをたくさんした。それから体力と脳キャパを考慮し、移動手段や、to doリスト、空白時間にすること(しないこと)をあれこれ調べて決めた。

今回の旅程

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旅券の関係で旅先滞在時間が短くなるあるあるの洗礼を受けた。それに加え、今年はほぼ梅雨がなかった。6月も半ば、既に日本全域で猛暑を極め、旅先では雨やコロナ感染の心配よりも、熱中症リスクの方が高かった。たくさん歩きそうな予感もするので、そのことも考慮しできるだけシンプルな旅程にした。

檀ノ浦の戦いが行われた地を屋嶋城城跡から見下ろす、源平ロマン旅も最後まで候補に上がっていたが、今回MIMOCAを最優先とするにあたり、移動に時間を取られてしまうので泣く泣く諦めた。次香川へ降り立つ機会があれば、必ず訪れたい。私の脳裏には血みどろ知盛が焼き付いている。(歌舞伎『義経千本桜』「渡海屋・大物浦」) 

https://ameblo.jp/sakurahuusilver2006/entry-12257693848.html  サクラハナサク|「歌舞伎座 三月大歌舞伎 仁左衛門の知盛」

↑最高レポブログさん


続く

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