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欧州最大手3社が保険業界の脱炭素イニシアチブから脱退

Axa、Allianz、ScorがNet-Zero Insurance Alliance(NZIA)の脱退を決定しました。本日は、欧州最大手の保険会社3社がNZIAを脱退した背景についてお話したいと思います。

NZIAとは?

NZIAは、2050年までに温室効果ガス排出量ネットゼロ社会の実現に向けて保険引受ポートフォリオの移行を推進する国際的イニシアチブです。保険引受ポートフォリオの温室効果ガス排出量の計測、および、パリ協定に整合した目標設定手法の開発、企業の脱炭素化を支援する手法の検討等を進めています。また、NZIAは金融機関のネットゼロ移行を推進するフォーラムであるGlasgow Financial Alliance for Net Zero(GFANZ)に加盟しています。

GFANZとは?

2021年にスコットランドのグラスゴーで開催されたCOP26で正式に発足した「2050年カーボンニュートラル」にコミットするグローバルな金融機関の有志連合です。GFANZの共同議長は、前イングランド銀行総裁マーク・カーニー氏とブルームバーグ社長のマイケル・ブルームバーグ氏が務め、傘下にNet Zero Banking Alliance(NZBA)、Net Zero Asset Managers Initiative(NZAM)、Net Zero Asset Owner Alliance(NZAOA)、Net Zero Insurance Alliance(NZIA)など7団体があります。45ヵ国から約450の金融機関が加盟しており、総資産額は130兆ドルに上ります。活動内容としては、投融資先の脱炭素実現に向けた支援や働きかけを行っています。

3社が脱退する理由とは?

Axa、Allianz、Scorが脱退を決めた背景には、アメリカにおける政治的圧力や訴訟リスクが高まっていることが関係しているようです。GFANZとその傘下にあるNZIA等の気候関連イニシアチブは、不要に石油・ガス業界を排除しているとして米国共和党から攻撃の対象となっています。また、今月初旬には、アメリカ合衆国司法長官がNZIAの加盟機関に対して、イニシアチブの活動が反トラスト法に抵触していないか申告な懸念があるという内容の書簡を送付しています。脱退を決めた企業は、反トラスト法に抵触することによって、アメリカ市場でのビジネスを失うことを恐れています。

脱退の影響

今回の脱退は、NZIAの影響力や将来性に疑問を投げかける形となっています。これまででNZIAを脱退した企業は、今回の3社を含めて合計7社となりました。過去には世界最大の再保険会社かつ創設メンバーであるMunich ReやZurich、Hannover Re、Swiss Reが脱退しています。現在加盟している企業は23社です。

NZIAの課題

NZIAの課題は、欧州とアジア以外、特にアメリカ企業の加盟が少ないことと、保険業界の脱炭素を目指しているものの、加盟条件に石炭関連の保険引受を禁止する条件が含まれていないことと指摘されています。

5月27日の最新情報

Lloyd'sとSOMPOホールディングスも脱退することを決定しました。NZIA創設以来脱退した企業は、合計9社に拡大しました。

参考文献

https://www.unepfi.org/net-zero-insurance/

https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00020/051100008/

https://greenfinanceportal.env.go.jp/pdf/news_report_221005.pdf


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