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浮心

ぽっかりと、している。
朝からジムに行って、服を買って、その後バイト。私にしてはハードスケジュールで充実していたはずなのに。またしにたくなっている。

正直になりたい、と思う。1人で考えている時も自分に嘘をついている。誰が好きなのか、どうなりたいのか、目をそむけている。昔好きだった曲を聴きながら考え事をしていると、ふと自分の本心に気づいてしまう。

私には彼氏がいる。けど、もう1ヶ月、会っていない。私には彼氏が必要なのだろうか。そうするとあの人達を思い出す。

1人目。
今の彼氏と付き合う直前、私には好きな人がいた。その人は、私ととてもよく似ていて、似すぎていて傍にいてつらいことの方が多かった。けど、似ているから、普通の男女にありがちな価値観の齟齬なんてなかった。何を言ってほしいのか、何を考えているのか、何が嫌なのか全部手に取るように分かった。、だから自分の客観像としても捉えていたように思う。こういうところはみじめに見えるんだな、とか。けれど、一つだけ分からなかったことがある。それは、彼が私を女として好きであったかということだ。愚かな彼は、私が彼を好きだと自惚れていた。だから私は今の彼を選んだ。とおもう。

2人目。
今は連絡がとれなくなってしまった、昔からの友人。彼は生きるのが不器用な人で、それが表にでてしまっている。私なんかと本質は同じなんだろうけれど、正直な人であるからそれを隠すことができない。
いま生きているのかも分からないけれど、絶対に生きていてほしい。私の希望だから。私が生きていていい理由は彼が生きていていい理由でもある。太宰治みたいに異性と無理心中することになるのなら、私は迷わず彼を選ぶだろう。
たとえ彼とまた会えたとしても、楽しく会話できるか、自信がない。いつもぎこちなかった。自然体でいられないのはなぜだろうか、傷つけるのが怖いのかもしれない。

3人目。
ただ一度、一緒に映画を見に行っただけの人。彼にとって私は大勢の中のひとりなんだろう。人と話すのが好きな彼。言葉では言い表せないようなきがするけれど、私はどこか彼に惹かれている。いや、惹かれているというよりも、憧れているのかもしれない。時々、というより頻繁に、私は男になりたいと思っている。そして、男になるのなら彼になって生きてみたい、と思う。
他の人と話しているときはそんな風には見て取れないが、私と話しているときの真っ直ぐな目が、すきだ。対面している人にしか見せないのかもしれない。真っ直ぐな目を持つ男。

色々と思いを馳せる。自分をみつめる。私には彼氏が必要なのだろうか。その問いは、きっと、男になりたいと感じている時に出てくるのだろう。外を歩く時、ショーウィンドウに映る自分を見る時、そこに映るのがきりっと背の高い、強そうな男であったら。
1人でも生きていける。

このぽっかりと空いた穴をうめることができるだろうか。

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