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映画レビュー

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2021年4月の記事一覧

ワンス ダブリンの街角で

あらすじ: ダブリンの街角で毎日のようにギターをかき鳴らす男は、ある日、チェコ移民の女と出会う。ひょんなことから彼女にピアノの才能があることを知った男は、自分が書いた曲を彼女と一緒に演奏してみることに。すると、そのセッションは想像以上の素晴らしいものとなり……。 音楽は、人と人を紡ぐ。 ダブリンの街角で男は歌い、通りがかった女は男の奏でる音楽に惹かれる。 女はピアノを男の前で紡ぎ、男は女の奏でる音に惹かれる。 男と女は、自己紹介がない。 名前が無いのだ。 音楽で繋がっている

女は女である

あらすじ:子供を欲しがらない夫を慌てさせようと、妻はボーイフレンドと関係を持ったかのように信じ込ませたが……。ジャン=リュック・ゴダールによるコメディ劇 私は、フランスのコメディ映画や難解なゴダール作品は苦手である。がしかし、この作品はコメディ要素たっぷりでありながら、ウィットに富んだ会話、色彩豊かな衣装やセット等でゴダールの世界観に気持ちよく酔わせてくれた。内容なのだが、いたってシンプル。夫婦の痴話げんかに終始していながら、ゴダールの恋愛哲学が込められているので観応えがあ

ノマドランド

あらすじ:リーマンショック後、企業の倒産とともになくなったネバダ州の企業城下町エンパイア。ここに暮らしていた60代の女性ファーンは長年住み慣れた家を失ってしまう。彼女は、キャンピングカーに最低限の生活必需品を積み込み車上生活『現代のノマド』として生活をはじめる。 今作品は今のアメリカを映す鏡だ。主人公であるファーンが住んでいたネヴァダ州エンパイアは米国石膏社(USG)の古典的な企業城下町だった。サブプライムローンの崩壊によりコストを削減し、効率の悪い事業を閉鎖。エンパイアは

デ・パルマ

様々な映画監督のドキュメンタリーがあるが、『デ・パルマ』のインタビュー側の声を消し、監督のみの言葉で構成された作品は珍しい。今作品の構成のおかげで監督の作品の意図や想いが観客側にシンプルに伝わるし、映画を作る上で監督の苦悩が垣間見えて面白い。箇条書きになるが、心に残ったデ・パルマ語録を記す。 “芝居を効果的に見せるために新しい手法を考えた。二つの映像を撮り並べる編集だ。前方を大写しにしつつ画面後方の情報と並列にする” “セリフのない長回しのシーンには音楽が必要だ” “我

太陽はひとりぼっち

あらすじ:ヴィットリオ(モニカ・ヴィッティ)には、3年間も付き合っている外交官の婚約者がいた。しかし、結婚して平凡な生活に落ち着く事が嫌になり、別れる事を決意する。そんな時に、ヴィットリオは青年のピエロ(アラン・ドロン)と出会う。 今作品は、非常に難解な作品です。ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「愛についての禅問答」に疲れました。モニカ・ヴィッティとアラン・ドロンが手をからませ、抱き合い、キスをする。しかし、愛を確かめ合う行為なのにそう見えない。二人が愛し合う姿を映して

アウトポスト

あらすじ:アフガニスタン北東部に位置するキーティング前哨基地。米軍の補給経路を維持するための重要拠点とされていたが、派遣されてきたロメシャ2等軍曹ら兵士たちは、その地をひと目見て驚愕する。そこには基地として致命的な欠陥が存在していたのだ。四方を険しい山に囲まれた谷底に位置しており、敵に包囲されれば格好の的となる。いつタリバン兵の銃弾が撃ち込まれてもおかしくはない。彼らの日常は死と隣り合わせだった。そしてその日、ついにタリバン兵の総攻撃が開始される。 2009年10月3日アフ