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マシュー・サイド著「失敗の科学」を読み解く - ②失敗は調査されなければ失敗と認識されない

さあ、木曜日だ。
木曜日は、マシュー・サイドの「失敗の科学」を読み解いていこうと思っている。ボクはこの本をまだ読んだことがないので、解説というよりは「リアルタイム感想文+ボクの思考」という内容になって行くだろうと思っている。


失敗の科学

この本は、航空業界と医療業界の対比から始まる。

航空業界も医療業界もミスが人命に直結する確率が高い。歴史を辿っていくなら、両業界ともに多くの痛ましい事案の上に現在の安全性が担保されていると言っても過言ではない。しかし両者の安全性には大きな差があるとマシューは指摘している。

航空業界の事故率、単純計算ではあるが2013年に30億人(延べ3640万回のフライト)が搭乗したが、そのうち事故に遭って亡くなった人は210人、240万フライトに1回の事故率である。一方で医療業界においては(アメリカで)同じ2013年に40万人(一日あたりおよそ1000件)が回避可能な医療過誤によって亡くなっている。これを航空業界に当て嵌めてみると、ボーイング747が毎日2機事故を起こしている、または2か月に1回「9・11事件」が起こるくらいの確率らしい。

医療業界と航空業界の仕組みの違い

こんなに医療業界をディスってしまって大丈夫なんだろうか…
そんな不安に駆られるくらい、この本は医療に関する問題点をあげつらっている。医療業界は調査を嫌い、ミスを隠蔽する傾向がある。婉曲法による表現(「技術的な問題が起きた」「不測の事態だった」など真相を明らかにしていないが、間違ってもいない)で失敗を失敗でなかったように書き換えてしまう傾向がある。

これは、悪意を持って行われるわけではない。また話をでっちあげて患者や遺族をだまそうとしているわけでもない。ベテランの医師は皆、難しい試験に合格し、長年に渡って経験を積んだひとかどの人物だ。しかし、そういう人に限って「完璧でなければならない」「完璧でないことは無能に等しい」という考え方をする場合が多い。そして、そこで起きたミスや事故が公にならないまま患者へのインフォームは終了してしまう。

では、航空業界でミスが起きないかというとそういうわけではない。やはり不測の事態で事故は起きている。しかし、医療業界と大きく異なるのは、墜落した機体からブラックボックスを回収し、強い権限を持つ独立した調査機関によって調査され、その結果が航空業界全体に公表され、すべての関係者の学習のチャンスになる。そして事故を起こしたパイロットが個人的に非難されることはないそうだ。

失敗は調査されなければ失敗と認識されない

最も問題となるのはミスや事故が告発されないことだ。
医療業界に限らず、多くの場面で部下は上司やチームが起こしたミスを公にすることをためらう。しかし、航空業界では「CRM: クルー・リソース・マネジメント」と呼ばれるコミュニケーションの手順を学ぶ。その中には補佐的立場にある副操縦士などが、上司である基調に対して自分の意見を主張するための手順、また逆に機長が部下からの主張に耳を傾ける方法を学ぶことも含まれている。

マシューは成功から学べることは少ないと説いている。
確かにそうだ。上手くできる人に「なぜ上手くできるのか?」と聞いても、本人も説明できない場合が多い。上手くできる人から聞き出した情報を元に、上手くやるための方法をリストアップしようとすると間違いなく混乱に陥るだろう。しかし、失敗した人をモデルケースにするならば、第三者が客観的に「なぜミスを起こすことになったのか」を検証することは簡単だ。そして、それをリスト化すれば「ミス防止のマニュアル」を作成することができ、未経験者のオンボードトレーニングに活用することができる。

フィードバックの重要性

そしてもうひとつ、マシューはフィードバックの重要性についても説いている。フィードバックは判断力を高めるのに重要な意味を持つ。フィードバックはミスをしたときだけでなく、正しい行動をしたときにも行われるべきだ。そして、可能な限り時間を置かずにその結果を本人に伝えなければならない。

マシューはそれをゴルフの練習に例えている。
ゴルフのショットが上手くなりたいと思って打ちっぱなしで練習する際、打席(ボクはゴルフをしないので正式名称がわからないが…)に立って、先に見える的に向かって何十球ものボールを打つ。その時にもし打席から先が真っ暗で、自分が打ったボールの行き先が見えなかったら、何年練習しても上達することはない。どこにボールが飛んだのかがわからなければ、さっきのスイングが良かったのか悪かったのかがわからないからだ。

つまり、その照明がフィードバックだ。
フィードバックがなければ改善のしようがない。フィードバックを得るためには煌々と明かりを灯して、打ったボールがどこに飛んで行ったのかを追えるようにしておかなければならない。

そして、何球か前に飛んで行ったボールの行き先が今わかっても、その時のスイングがどんなだったか覚えているわけがない。だからフィードバックはリアルタイムであればあるほど良い。リアルタイムのフィードバックは、その人の直感的な判断力を養うために重要なのだ。


うーーん。
まだ、本全体の20%程度しか進んでないのだが…
もう、かなり核心を突いた内容になっているような気がする。残りの80%にどんな内容が残っているのか若干不安な気もするが、まあ気にせず進んでいこう。

続きはまた来週!


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