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スタッフQ&A: ユミ・ミズイ編 抄訳

日本時間で2020年12月6日。ダイスケ・ツジ、アール・キムの合同配信において、『Ghost of Tsushima』の日本語コンサルタント等を務めたユミ・ミズイへのインタビューが行われました。
ゲームの開発中、Sucker Punch側の「日本のプレイヤーが侮辱的に感じてしまうような内容には絶対したくない」という意向を強力に下支えしたのが日本のローカライズスタッフであり、アメリカの撮影現場で内容に目を光らせていたコンサルタントだったわけですが、キャストのインタビューで必ずと言っていいほど(懐かしげな笑顔とともに)名前の上がるユミさんは、個人としてもかなり印象的な方だった様子。以下、その理由の一端がわかるインタビューの英語部分を抜粋します。日本語部分も含めた実際の動画はこちら。日本のテレビが最近さかんにゲームとの関連で対馬を取り上げている話、いまふたりと日本にいたら何を食べに連れて行きたいか、など楽しい話題がたくさん登場してますので、ぜひご覧ください。



◆「ユミちゃん」は何でも屋?

ダイスケ・ツジ、以下D: じゃあまず、(『Tsushima』制作中の)正式な肩書きを教えてもらっていいかな。

ユミ・ミズイ、以下Y: 私の? うーん……(日本語で)何でも屋さん?

D: そうそう、今日の配信はバイリンガルになるからね。日本語と英語を行ったり来たりする感じで。

アール・キム、以下E: で、僕が目を白黒させることに(笑)。

D&Y: (笑)

E: ユミちゃんへは事前に言ってたんだよね。たぶん僕、子供の頃に両親が日本人の友達を家に招いてた時みたいになるよって。親は日本語話せる人たちなんだけど、僕は(無言で頷きながら左右をキョロキョロする仕草) あっ今僕の名前が出たぞってなると、(手を上げて愛想笑い)「いえ、いえ」って(笑)

Y: アールさん(笑)

D: ユミは『Tsushima』で色んな仕事を担当(※筆者注: Additional Charactersのモーキャプ俳優、声優含む)してたけど、そのうちひとつは役者が日本語の名前や用語を正しく発音してるかのチェックだったんだよね。あとはイベントシーン全般で日本の文化的におかしい点があれば、その指摘も。

E: そうだね。

Y: そう。ちょっと口やかましい人だったよね(笑)

E: こだわりの人だよ!

D: そんなことないよ(笑)

E: ダイスは見てないんだよ、スタジオでは木刀持参で間違えるたび叩かれてたんだから! っていうのは冗談だけど(笑)

Y: (笑)


◆キャストが一番手こずっていた日本語は?

D: 聞く前に答えがわかってる質問なんだけど、キャスト全体でみて一番手こずった日本語や日本名は?

Y: たぶんだけど、「竜三」。でしょ?

D: そうそう(笑)。

Y: あれはすごく大変だった。

D: みんな「竜三」が好きじゃないんだよね(笑)

Y: 私、「OK、じゃあこう言って」みたいにやってたもん。

E: 1シラブルなら「竜」! 2シラブルで「竜三」!(笑)

Y: あとは「氏政」もかなりの難関だったと思う。他は何かなあ。

D: アールはでも別に大丈夫だったよね?

E: 僕が主にやらかしてたのは「境井」だよ(笑)。それが主体。時々いいかげんに「ロード・サカーイ」「サカーイ」みたいに言っちゃったりさ。「そうじゃない、境井」って言われて(敬礼の仕草)「はい!」って。

Y: 違う、「境井」。「境井 summer」みたいに発音してって(笑)

E: あ、覚えてるわそれ(笑)。でも日本語のトレーニングはそこそこ積んできたから、結構らしい感じにこなせた手ごたえはあるよ。ほら、(日本語で)シェイクスピアの台詞を言ったりしてたでしょ。

Y: でもみんなすごく頑張ってくれて、時々申し訳なくなってましたよ。すごくいいシーンで涙ながらに演技してるのに、私は「ちょっと、すみませんけど」

D&E: (笑)

Y: 「シムーラじゃなく『志村』と発音してもらえます?」

E: (思わず復唱して) 「志村」。

Y: もしくは「発音は『境井』です」「えっ今のじゃ言えてなかった!?」「言えてなかったですね」みたいな(笑)

D: (笑)

E: そういう瞬間あった〜。「いまの『境井』って言ってなかった? くそぉ……んがあああ!」ってやつ(笑)

Y: それと「金田城(Castle Kaneda)」もね。

E: キャッスル・カナダになっちゃうんだよね(笑)

Y: そう、カナダ! 「カナダじゃなくて『金田』です」ってね(笑)

D: ユミと仕事した経験でひとつ学んだことは、多くの場合、センテンスの最後に日本語が来ると問題になりがちってことだったな。っていうのも──

Y: そうそう。

D: ──英語の名前の場合だと、「アール(末尾が下がり、たしなめるような調子)」「アール(尻上がり発音で、疑問形のような調子)」みたいにできるんだけど。日本語になると、ってこれいい用例じゃないけど、「ユミィ」「ユミ?」「ユミ」みたいな……わかるよね?

Y: うんうん。今仁の声だった!(笑)

E: 完全に仁だった(笑)

D: いやどうだろ、いい例を出そうとしてたらなっただけなんだけど。英語は語尾変化を使うでしょ、ほら、意味を伝達するために。でも日本語発音だと──

Y: その言葉を最後に発音しなきゃいけなくなると、うまくいかなくなるの。

E: 質問なら語尾を上げる、何かをきっぱり言い切るなら語尾を下げるのどっちかになるんだけど、日本語名の語尾がこんな(波形の手つき)だと「……いっそ台詞変えちゃわない?」ってなるんだよ。何度思ったか(笑)

D&Y: (笑)

E: 台詞が名前で終わる形にしなくしたらどうかな? ってね。そうすればそのうち慣れてきて、名前が最後に来る台詞も上手くなるかもしれないから。僕がよく覚えてるのは最初の2回の撮影で、「円浄」か何かがセンテンスの最後に来てたんだよね。「このセリフ、僕にはみんなが言って欲しい形では言うのも、正しく発音するのも無理だよ。どこかしら変更しないと」って思ったもん。

Y: そういう時、ディレクターに「今のは良かったよね、ユミ?」って言われると、私はいつも「彼ならもっと上手にやれます。もう一度やらせてあげてもらえますか?」って言ってましたね(笑)。ごめん(笑)

E: 血も涙もないよ!(笑)

D: (笑)

しかし、ユミさんが妥協せずこだわり尽くし、日本文化に似つかわしい抑揚をセリフに乗せてくれたことで俳優の演技、世界観の「らしさ」が向上し、ひいてはゲームの仕上がりに格段の差が出たのだから、そうでなければならなかったと語るアールだった。



◆二人の第一印象は?

分業形式での撮影が多かった『Tsushima』の現場では、主演のダイスケ・ツジ以外でキャスト全員と働いたことがある人間は限られており、ユミさんはその数少ないひとりであるという。そこで出た質問が、「僕たちの第一印象はどうでしたか?」。

D: 僕と最初に会ったのっていつだったっけ。撮影初日?

Y: あなたと?

D: うん、覚えてなくて。

Y: 本当に笑える話なんだけど、初めてセットへ行った日、「なんかこのダイスって人、見覚えがある……」って思ったの。でもその時はテレビで見たのかなくらいで流してたのね。そしたら、何ヶ月か後あなたが急に「たぶん前に会ったことあると思う」って言い出して、「どういうこと?」って聞いたら──

D: (記憶が蘇ったらしく、大きく腕を掲げて) ああ! そうだ、思い出した! 思い出したよ。

Y: (笑)

E: みんな今、ダイスの脳内で「思い出したー!」って何かが弾けたのを目の当たりにしたね(笑)

D: いや、このインタビューに入る前にそういう話をしてたのを思い出したんだよ(笑)。チャットの皆にはユミから教えてあげて。

Y: 私ね、あるメイズ(迷路)に行ったの。昔どハマりしてたことがあって。

D: 脱出ゲームのことね。

E: あ、そうかゴメン(笑)。ユミちゃん、僕勘違いしてた(笑)

Y: 脱出ゲームだ! ついメイズって言っちゃってた(笑)

D: (手真似で迷路を示して)うん、迷路でしょ。

Y: (手真似でメイドのヘッドドレスを示して)僕はてっきりこっちのメイドかと(笑)

D: 日本で流行ってるやつね。

Y: そうそう、私はメイドカフェのメイドで、彼はお客さんとして来てて、とかでー(笑)

D: それはやばいでしょ!(笑)

E: (爆笑)

Y: だったとしたら笑えたよね(笑)

E: 笑い死ぬぅ(笑)

D: すごいたくさん聞きたいことがあるけど、まず今の質問に答えて(笑)

Y: (笑)あ、えっと何の話だったっけ。

D: 脱出ゲームから。

Y: あなたから「脱出ゲームに来てたことあったよね?」って聞かれて、「どの脱出ゲーム? 行きすぎててわかんない」って(笑)。「リトル・トーキョーのに来てたはず」って言われて思い出したんだけど、それまで行ったなかで一番難しかったやつだったの! たぶん一番怖かったゲームだと思うんだよね。怖いって言ってもガチの怖いじゃないけど、脱出の途中で4チームに分かれさせられて。

D: チーム? 色のついたドアのやつかな? 緑と青と赤のドアが出てきた覚えはある?

Y: なんか腕時計みたいなのをつけてたと思う。

D: はいはい、腕時計ね。じゃああれだ、Zero Gravity……(タイトルを思い出そうと指をスナップして)

E: (チャット欄を見て) 『Real Zero Escape』だ!

D: そうそう、それだぁ。

E: チャットにウィラが来てるからね。

D: ああ、道理で! ウィラは当時、脱出ゲームの仕事してた時の僕のボスだったんだよ。

Y: そうなんだ!

E: で、今は僕らの(Twitchチャンネルの)モデレーターチームの一人なんだ。一周回った感(笑)

D: で、ユミがその脱出ゲームで一緒にプレイしてた人っていうのが──

Y: ああ、マシ。マシ・オカさんね。一緒に行ったの。

D: 『HEROES』の。

Y: うん、私あの番組で仕事してたから。でも彼とは友達で。

D: 彼は脱出ゲームをものすごい数プレイしてるんだよね。

E: あ、脱出ゲームファンなんだ?

Y: そう。で、これってとくに予約がとれないゲームだったよね?

D: 当時はね(笑)

Y: で、行きたくてたまらなかったけど、予約どうしよっかなあって悩んでたら、彼が「何とかしてみる」って言ってくれて。

E: コネをあたってくれたのかぁ、すごい。

Y: で、その会場にいたのがあなたで。何の役だったっけ。

D: 複数の役を担当してたかな。

Y: ルール説明をしたりとか。

E: じゃあゲームマスターだったんだ?

D: ゲームマスター、そうだね。あの時代はよかった(笑)
(※筆者注: 公式サイトのニュース欄を見ると、ツジ氏は2015年頃から「昼間の仕事」としてLAのリアル脱出ゲーム運営会社のMCの他、Web用CMのナレーションなども担当していたようだ。が、現時点でその会社は存在していないらしい)

Y: その時に顔を合わせたのをお互い覚えてた、というわけ(笑)

E: それはすごいなー。

Y: 完全にたまたまなの。

E: ぶっ飛んでるよね。世界は狭いな。

D: で、アールの方の第一印象はどう?

Y: 確かコーヒーショップで会ったんだよね?

E: そうだった! 最初のセッションの前のことだったかな。ああ、すっかり忘れてた。

Y: 私から電話して、じゃあコーヒーショップで待ち合わせしようってことになって。で、行ってみたら、アールが店に入ってきた瞬間──それまでは脚本を読んだくらいで、このキャラはこんな見かけかなって想像してただけだったんだけど、やってきたアールがまだこっちを見てもいなかったのに、わかったの。「あっ。あれ典雄だ」って。

D&E: (笑)

Y: 「間違いない、あの人典雄だ。もうぜったい典雄」って。アールはその時すごいキョロキョロしてたんだけど、それは場所がコリアン・タウンだったからで、みんな──

E: 店内みーんなアジア系だったの!(笑)

Y: (笑)

E: そう、すごいすてきな店だったから覚えてるよ、めっちゃ可愛いかったし。でもユミちゃんがKタウンのコーヒーショップを指定したから、まったく見当がつかなくってさ。(あたりを見回しながら)「あなたがユミちゃん? あなたユミちゃんですか? 」(笑)

Y: もうすごいキョロキョロしてた(笑) みーんなアジア系の人だったから。

E: 別の待ち合わせ場所を選ぶことだってできたのにだよ。そしたら話はもっと簡単だったのにー!(笑)

D: (笑)

Y: また場所柄がカフェなもんだから、アジア系の女性客ばっかりだったんだよねー。

E: ほかのテーブルもぜんっぶ可愛らしいアジア系女性で埋まってんだもん、どうすりゃいいの(笑)

Y: (笑)店に入ってキョロキョロしてるあなたに(手を挙げて)「こっちですー」って合図したら、 「あーよかった! あーよかった!」って(しきりと汗を拭う仕草)。それを見て「何この人ー、すっごいキュート。テディベアか、おっきな赤ちゃんみたい」って思ったの。

E: (笑)おっきな赤ちゃんでちゅ!

Y: わかるでしょ?(笑)

E: うん。僕ガキっぽいとこあるから、自分でもわかる(笑)


◆これまでにやった一番変な仕事は?

D: 今思いついた質問があるんだけどさ。

Y: えっ今なの?(笑)

E: アドリブだ! ダイスが脚本にないこと言いだしてる!(笑)

D: そんなのいつもじゃん。ユミはこれまで色んなことをやってきただろうけど、さっきメイドの話が出たからふと思いついたんだよ。今までで一番変わった仕事って何だった? バイトとかでもいいんだけど。

Y: えー……あっ。あれかも。

D: ぜったいなんか面白いネタがあると思った(笑)

E: ユミがネタを持ってないはずないんだよ(笑)

Y: 多分びっくりすると思う。昔、友達から電話がかかってきて「高速道路上で仕事してくれる男の人を探してるんだけど」って言われたことがあるのね。計測か何かだったかなぁ……なんかリサーチっぽいことだったはず。車の往来をいったん全部止めて、それから高速のど真ん中で交通量を測るっていう仕事。

E: えっほんとに?

Y: で、「男の人を探してる」って言われたんだけど、「私がやっちゃだめかなあ?」って返したの。そしたら返事は「やめたほうがいいと思うよ」。でもそんな状況、自分が事故にでも遭わなきゃまず体験できないじゃない?

E: (笑) それもそうだねえ。

Y: だから「私がやっていい?」って。「仕事の開始時間も午前2時くらいからで、ちょっと怖いかもしれないけどいいの?」とも言われたんだけど、「やるやるー」って(笑)。そしたらその友達も「あなたがやるんなら、私もやってみたいかも」って言い出して。

E: おっ、ユミがいい刺激になったんだね。すごい! 壁を打破した!(笑)

D: (笑)

Y: 一緒に働く人たちは日本人で私たちふたりは通訳みたいな感じだったんだけど、たしか何かの研究だったと思うんだよね。(現場に行ったら)向こうは女の子ふたりが何でこんな仕事してるんだ? っていう反応で。当日の私たちも、例のオレンジの──

E: あのベストと帽子を身につけて? ガテン系ユミだー。

Y: うん、あの格好カッコいいと思った。変な話だったかな(笑)

E: いやいや、すごくいい話だよ! 高速を歩いたことがあるなんて言える人そういないもん。ひどい事故とか、よっぽど変な状況じゃなきゃまず無理でしょ。高速を散歩したわけでしょ、面白いって。

Y: うん。私ね、何にでもすぐ興味持っちゃうから。生きてるうちにできるだけたくさん色んな経験したい、みたいのがあるのかも。


◆ミラノで危機一髪

East West Wednesdayに参加した『Tsushima』キャストの一人、ミシェル・ウォンも「ユミは信じられない逸話に事欠かない人」と証言していたわけだが、日本を出てからの経緯もまたユニークだったようだ。

Y: アメリカに来てから数ヶ月後に、イタリアのミラノに行ったのね。で、その後はギリシャのアテネ。そこで(ダブルクォーテーションマークのジェスチャーつきで)「ティーンモデル」としてモデルやってた(笑)

D: そうなんだ。日本での出身はどこなんだっけ。

Y: 横浜。(地名を復唱したアールに指を立てて) オーケー、横浜。

E: 横浜(笑)

Y: そう、横浜(笑)

D: (笑)じゃあモデルとして色んなとこ旅してたのかー。それってどんな感じだったの?

Y: うーんとね。行ってすぐ、お金を脅しとられて。ジプシーの人に。

E: は!?

D: え、行ってすぐ? どの国で?

Y: イタリア、ミラノ駅で(笑)。

D&E: えー!!

Y: 現金は全部とられたんだけど、パスポートとトラベラーズ・チェックは無事だったのね。

D: そこは良かった。

Y: だから大丈夫ではあったんだけど、イタリア語喋れないし、エージェントが迎えに来てくれるのを待ってたとこだったから、どうしようってなっちゃって。そこへぬいぐるみを持った男の人が「お母さんはどこにいるの?」って言って来るし、もう怖くってー(笑)

E: (大爆笑)

D: (口元を覆って驚きつつ笑っている様子)

Y: もうおうち帰りたいー!! ってなってた(笑)

D: その人ぬいぐるみをくれたわけ?

Y: うん、でも私は「お父さんいるから。あっちにお父さん。あっちにパパ、パパいるから」っていうフリしてた(笑)

D: (爆笑)

Y: そしたらそうか、って。私、当時20歳超えてたんだけどね。成人女性だったのに、15歳くらいに見えたのかも(笑)


◆日本語の国名と英語の国名

その後ギリシャへ行ったユミさんだが、当時はエージェントが言う英語の「Greece」が日本語の「ギリシャ」にあたるとは知らず、現地でパルテノン神殿を目の当たりにしてから「ギリシャのことだったんだ!」と合点がいったという。

D: 変な話だよねー。「Germany」も「ドイツ」とかだし。ドイツ人自身は自国のことなんて呼んでるんだっけ?

E: 「Deutschland(ドイチュラント)」だね。

D: そこからなんで「Germany」になったんだろ?

E: それはやっぱり、……ええと何て言えばいいか──

D: ここで説明しなくてもいいんだけどさ、日本の「Japan」にしてもそうでしょ。日本人が「我々のことは『Japan』って呼んで下さい」って言ったわけでもないのに。由来は何なんだろ?

Y: 由来は「ジパング」よね。

D: 「ジパング」か、うんうん。

E: うん、そこから英語に転訛されたんだと思う。基本的には世界の英語化の流れで、英語を主要言語にしてる列強国が「お前らのことをドイチュラントとは呼んでやらん。お前らの言葉なんて使うか。俺らは俺らの言葉を使うからお前らが合わせろ」みたいな感じだったんじゃない? 興味深いよね。

D: 屈辱的だなあ。撤回して「もう『Japan』じゃありません、ニホンです」って宣言すべき(笑)
(※筆者注:近年日本政府の一部でそういう動きがあり、英字での国名を「Nippon」、日本人名も「名前・姓」順ではなく「全文字大文字で姓・通常の冒頭大文字+小文字で名前」での英字表記をよく見かけるようになってきている)

Y: 私がみんなに「対馬」って発音してもらいたかったのも、まさにそこが理由なのよ。「ツシーマ」じゃなく。でしょ?

E: 「ツシーマ」ね!(笑) ゲームが発売されてからゲーマーとかいろんな人が「ツーシーをプレイしてるんだ?」みたいに言ってるのを聞いてさ、「何でそうなるんだよ、やめろぉおぉ」ってなってたよ(笑)。脳が「お願いだからやめて。しんどいの」ってモードになってる。

D: 笑い事じゃ済まされないよねー。

E: で、友達もそんな感じだったりするから、「ちょっとみんな。みんな頼むから」みたいになるんだよね。

D: もー。敬意を持って欲しいなぁ。


◆ユミさんへの第一印象

ここでユミさんから司会ふたりへ逆質問、「私の第一印象はどうでしたか?」。アールからの第一印象は、出会いが前述の通りの経緯だったのでまずは「ほっとした」とのこと。ただ制作当初、典雄の台詞は完成版より日本語人名や地名が多く、2人で読み合わせをするうちに「ほっとする」の意味合いが変わってきたという。

E: 信頼できる人だなってわかったんだよね。ちゃんとした知識があるし、心から配慮してくれるし、本気でこのプロジェクトに関心を持ってくれてるし。とくに僕の場合、LAに引っ越してから人間不信とまではいかないけど──っていうかまず大学院進学でUKに行って、そこでは一緒に授業に行く仲間がいて。次にオーストラリアへ越した時には劇団の仲間がいたけど、そういう人の輪を置いてLAに来てたから──最初の1年はもう散々でさ。交流する相手も何か理解できないタイプの人ばっかりで、変なやりとりがたくさんあったもんだから、あんまり他人のこと信用できなくなってたんだよね。

しかしそんな矢先にめぐりあった『Tsushima』の現場は、ひとつのプロジェクトをよりよくするために団結するチームとして機能しており、「頼れる人たちがいてくれるから、全力でこのプロジェクトにとりかかっていいんだ」とわかり、とても安堵したとのことである。またダイスケ・ツジが続けて言うには、

D: 今言われたことには全面的に同意するし、その上で付け加えるとしたら……このプロジェクトに携わって、オーディションを受けて──とにかく、全貌がわからないまま制作に入ったわけだよね。とくにビデオゲームの場合は、大部分が白紙のままで始まったりするから。だから自分がどんなことに足を突っ込んだのかは見当もつかない状態なんだよ。ネイトとのコールバックはすごく感じがよくて、彼はいい人そうだったけど、実際どうなるかはわかりようがないからさ。妥当じゃないチームがやってたら、プロジェクト全体がとんでもない方向に行くことだってありえたし、僕は主演としてそんなゲームの顔になる羽目になってたかもしれないわけでしょ。だから初日にユミが現場にいてくれて、日本の文化的な面で僕と同じ側に味方がいるとわかって、安心したんだよね。僕より明らかに日本文化を理解してる人でもあるし。このインタビューで明言したいのは、日本の人たちがこんなにもこのゲームを受け入れてくれた理由の大半は、君のおかげだってこと。

Y: えー。優しいこと言ってくれるなぁ。

E: 本当だよ。ユミと、あとサチ(クレジットではサチヨ・Kと記載されているもう1人の監修者)ね。

D: そう、ユミとサチだね。

E: 貢献が目に見えて明らかだし、手に取るようにわかるもの。

Y: でも私も、初日にみんなと会って驚いた。ネイトとビリー、イアン(・ライアン、リードライター)に関しては、私より詳しいわって思った(笑)。あの人たちものすごい量のリサーチしてきてるんだもん。私だってたくさんリサーチはしてきたけど、私が調べた内容は彼らも全部知ってたし、もうびっくりしちゃいましたよね。で、思ったのは「侍が英語を喋る」って斬新だし、難しそう。日本の人たちがどう思うかな。でもこの仕事に参加するなら、全力を尽くしてチャレンジしてみたい。このチームの一員になりたいってことだった。だからSucker Punchから折り返しの連絡があった時、やります、一緒にやらせてください! って。それから4年半、彼らと仕事してたかな。

E: すごい長期間だ。

Y: 本当に素晴らしい経験でしたよね。みんなすっごく感じのいい人だったし、日本のことが大好きで。それっていいことよ。いろんな番組で仕事してきたけど、たとえば「ねえユミ、ちょっと俳優が日本語セリフを喋るとこがあるから訳してくれない?」って言われて脚本を見てみると、もうセリフだけじゃなくて(笑)書いてあることからして全然──「日本の人って本当はこういうことしないんですけど、この内容で訳さなきゃいけないんですか?」ってなるわけ。時々あることなんだけど。


◆トンデモアジア文化との戦い

国外の映画やドラマの中に描かれた日本像に首を傾げた経験は、日本のファンも一度ならずあるだろう。実際の撮影現場でそういった誤りを見つけた時の違和感は、アメリカで活動してきた3人にはある意味お馴染みのもののようだ。アールの場合も『アベンジャーズ: エイジ・オブ・ウルトロン』に出演した際、韓国語の看板の表示が逆読みになっていたり、文字が上下逆になっていたのを見つけたことがあるという。おそるおそるADに誤りを指摘したところ、いったん撮影を止めての大がかりな修正作業が発生。申し訳ないような気持ちにもなったようなのだが、

E: でもそこで僕が見過ごしてたら、そのまま映画にしちゃってたわけでしょ? 気持ちとしては誰かがやらないと、っていうレベルの話。だから、仕事としてそういうことが言えるユミちゃんがいてくれて本当によかったなって(笑)

Y: わかる。私もまずセットを見回して、あれがおかしいですよってやるもん。時々こう──ネオンサインの文面なんかの翻訳がおかしかったりして、えっ、何を言おうとしてるの? みたいな。脚本自体がそうなってるのか、あまりにもアメリカ的過ぎたりすることもあって。

D: ああなる理由がよくわからないよね。だってさ、大抵の場合どっちみち翻訳者を雇うんだから、制作前に小道具とかセット、デザインが正確かどうかチェックする人にお金を出せばいいのに。

Y: そうよねー。わかる(笑)

E: リハーサルをやってもらったらどうかなって思うんだよねえ。それか文字通り、(他国の文化に関わる要素のあるものを)事前に全部送って、はい合ってますよとか見てくれる人を置くとかさ。現場で見つけて「ああ、もう全部間違った文字印刷されちゃってるわ」ってなるよりか全然楽じゃない。

というようなことが折々見受けられるため、ユミさんはまず(口うるさいと思われようが何だろうが、また「翻訳だけしてくれればいいから」と言われても頑として)脚本家に意図を確認しているとのことである。『Tsushima』制作中も脚本を受け取るとまず読み込んで疑問点を洗い出し、現場に詰めていたライターと話し合っていたそうで、

E: 『Ghost』制作中、恩恵にあずかってたなって思うのもそこなんだよね。僕の場合、典雄パートを主に担当したライターのパトリック(・ダウンズ)がほぼ撮影現場に立ち会ってくれてたから、何度か──僕は日系じゃないけど韓国系だから、両親、祖父母とも日本の人とたくさん付き合いがあって──脚本を読んでから何度か、スタジオで「ユミちゃん。その、なんて言うか……典雄はこういうことしないと思うんだよ。これ、(日本の文化的に)やっちゃだめなやつじゃないかな? 」ってなったことがあって(笑)。「僕からは言わないけど、できればユミちゃんから一言……」って(笑)

Y: ううん、パトリックはもう慣れてたと思う(笑)。私が撮影のたび山のように疑問をぶつけてたから。「もういい?」って言われても「まだいっぱいあります!」って言うくらい(笑) 。だって何度も何度も脚本を読み返してたんだもん。疑問や懸念はいつだっていいことでしょ。



◆翻訳の微妙なニュアンスについて

このインタビューが実施された時、ツジ氏はイギリスでテレビドラマの撮影中だった(※訳者注: 後日、この謎の出演作はApple TV+で2021年10月下旬より放映開始されるSF大作『インベージョン』であることが判明した)。詳しくは話せないと前置きしつつも、担当する役には日本語を話すシーンがあり、セリフの訳出をめぐって議論があったばかりだったという。

D: 一例をあげると、ごくシンプルな一語のセリフで、最初に英語で書かれてた原文は「Well...」だったんだけど。

E: あー大変だー!(思わず顔を覆う)

Y: ああー!! うんうん。

D: (ふたりから存外大きな反応が返ってきたのか、目を瞬かせ) えっなんで、何、何?(笑)

E: いや、英語でだって意味のあいまいな言葉だからさ。ということは、日本語にすると尚あいまいになるわけで。

D: (それそれ、と画面の向こうを指差す)うん、だから翻訳者と話し合ったんだけど、大まかに言うと日本語訳は「さあ」と「あ、いや…」のどっちにするかで揺れてさ。両方実際に試してみたんだけど、なんやかんやで当初の翻訳者の案に落ち着いたんだよね。他にもたくさん争点があったんで、「Well」の一言くらいでバトルするのはやめとこって思って。でも、そんなささやかな一言がこんなにも幅広く──ストーリーによってもキャラクターによっても訳が変わってくるのって、すごく興味深いよね。とくに日本だとキャラクターの立ち位置、そのキャラが別のキャラクターとの関係性において自分をどう見なしてるかによっても変わったりするしさ。日本語の一人称なんか5種類くらいあったと思うし。いくつだっけ? 「私」、「僕」、「俺」……。

Y: 「我」とか?(笑)

D: 「我」(笑)。とにかくたくさんあるわけだよね。それなんかも、イギリス人の書き手が英語で書くときには思いもしないことなわけでしょ。思いようもないんだけどさ。



◆英語と日本語の口の動き

Y: 私がよく英語と日本語では口の動かし方が違うって説明してたのは覚えてる? アメリカの人が英語を話すとき、(O発音の口の形や、下唇に軽く前歯を当てるV発音部分などを強調しつつ)「Come over here」みたいにするんだけど、日本の人の英語は(最小限の口の動きで)「カムオーバーヒア」になるのね。

E: 英語は唇を大きく動かしながら喋るんだね。

Y: 説明が難しいんだけど、現場で「境井」と発音してくれるようにお願いすると、みんなの顔つきが日本人っぽく変わってきてたの。「サカーイ」みたいには言わないから。みんな知らなかったと思うけど、モーキャプ撮影スタジオではとくに私、口の動きを注視してたのよ。だって日本語吹き替えになった時、(アメリカ英語の口の動きで)「Here, I'm here!」みたいに言ってたら唇を動かし過ぎでしょ。「Really」とか。私たちそんな風に喋らないもの(笑)。でもみんな素晴らしい役者で、日本のことにも知識があったし、みんな黒沢映画を見たことがあったし。言わせてもらいたいのは、このプロジェクトに関わってたのはみんな素晴らしい人たちだったってこと。キャストだけじゃなく、ビリーもネイトも、イアン(・ライアン、リードライター)もパトリック(・ダウンズ、ライター)もみんな。

E: スタジオではリック(・バウアー、プロデューサー)とかレネー(・ビーズリー、キャラクター・テクニカル・アーティスト)とか、チーム全体もね。

Y: 全員がそうで、しかも人間的にもいい人ばっかり。いじわるだなって思う人なんかひとりもいなかった。

(と言い切るユミさんに、口をへの字にして首を傾げてみせるダイスケ・ツジ)

E: ダイス!!(笑)

Y: ちょっと何、いまのどういう意味?(笑)

D: ふざけただけだよ?(笑)

Y: もしかすると私がいじわるだったかもだけどね!(笑)

D: いやあ、ユミはいじわるとは違うでしょー(笑)

Y: 役者が「決まった…」って顔してる時に「いまのもう一度言ってくれます?」「なんでー!?」みたいなことやってたから(笑)

E: そんなことないよー。僕が、というか、そういう時のみんなの反応は「えー!?」っていうより、「失望させちゃってごめんなさい」って感じだったよね(笑)

非日本語話者のアジア系俳優に日本人らしい話し方をさせるために、その俳優に馴染みのある言語の似た響きの言葉を探してきて説明する、というのもユミさんがよく使う手法とのことである。『Tsushima』の現場でも、アールには「韓国語でこういう言葉があると思うけどあんな感じ」と具体的に指示していたそうで、非常にわかりやすかったという。



◆ハリウッドスターとの邂逅話

現在のように監修の仕事をするようになったきっかけはドラマ『HEROES』(当時の仕事の様子はこちらの記事参照)だったというユミさん。もともと友人関係だったマシ・オカ氏経由で話が来て、当初は3エピソードほど関わるだけのつもりが、大ヒット番組となり4シーズン分続けることに。それ以降、さまざまな著名人とのプロジェクトにも関わるようになったという彼女に「これまで会ったなかで一番の著名人は誰? 5人まで挙げてください!」と司会ふたりがこぼれ話をせがむ。

Y: OK。(指折り数えて) ダイスケ・ツジとアール・キム?(笑)

D&E: はははは!(笑)

Y: まさかと思うかもだけど、クリスチャン・ベール(笑)。

E: (待ってましたといわんばかりの表情で頷き)うんうん、そ〜お?(笑)

D: (その言い方がウケてしまい笑い出す)そ〜お?って(笑)

Y: (笑) なあに、なんなの(笑)

E: ゴメンゴメン(笑)

D: いやいや、これね、たまらなくいい話なんだよ(笑)。だからお話して下さい(笑)

Y: (笑)。テレンス・マリック監督の、とある映画の仕事をすることになって。

E: テレンスで2人目カウントね(笑)

D: それはなんて映画?

Y: えーと、『Knight of Cups』。邦題は何て言ったかなあ……忘れちゃった、ごめんなさい(※筆者注:邦題は『聖杯たちの騎士』、2015年作)。詳しい話を全く教えてもらってなかったから、プロデューサーが誰かとか、一緒に働く人たちがどんなか全然知らなかったのね。そんな感じでセットに行って──

D: (もう忍び笑いを始めている)

Y: 衣装合わせに行ったら、すごいたくさん人がいたの。どうすればいいんだろって思って聞いてみたら、流れに合わせてくれればいいからって言われて、OKって答えた。そしたら男の人がこっちに来て話しかけてきたんですよ。見たことある顔だけど誰だったかなーって思って。

D: (またしのび笑い)

Y: 合間にお名前は何ですか? って聞いてみたら、その人はリックって名乗った。彼のキャラクターの名前ね。「OK、リックさんですね」って言いながらやっぱこの人のこと知ってるような気がする、って思ったけど、リックっていう名前だしわからなかったのね。

D: OK(笑)

そしたら、彼が「僕のこと知ってます?」て聞くから、「知ってるような気がします」って答えたら、「気がするっていうなら、多分僕のことは知らないんじゃないかなぁ」って。その日1日セットでお話してたけど、とっても感じのいい人だった。で、第2日目が来ても私まだ彼が誰なのかわかってなかったんだけど。

E: (笑)あー。この話大好き(笑)

Y: うん、もうまったく。

D: で、その時彼が何かものを君に見せたんじゃなかったっけ? 何かをあげたんだっけ?

Y: 何だろう、ものって?

D: あれ、てっきりこの話に出てくるやつだと思ってた。僕が頭の中ででっち上げてたかな。バットマンのフィギュアか何か見せようとしたんじゃなかったっけ。

E: はははは!(笑) そんなのアリ?(笑)

Y: 違う違う違う、違うの(笑)。現場にアイスクリームトラックがあってね。それを見て、「あ、バットマンだ」って言ったら(筆者注:おそらく車体にバットマンアイスクリームの宣伝用ステッカーなどが貼ってあったものと思われる)、彼が「そこに触れるのはナシにしとこうよ」って。私が「なんでですか?」って返したら、「いいから言わないで」。私ね、彼が出た『バットマン』は見たことなかったのよ。マイケル・キートン版しか見てなかったの。だからクリスチャンがバットマンだとも知らなかったのよね。もう全っ然。

D: (笑)

E: (悶絶しながら)はーもう無理。死にそう(笑)

Y: なんでだろ、この人バットマンのファンなのかな? とか思ってた(笑)

D: じゃあ「リック」に言われたわけ? 僕の前でバットマンの話はしないでって。

Y: うん。彼と、あとは……監督が誰かも当時知らなくって。

D: (笑)……その仕事、ちゃんとお給料払ってもらえたんだよね? 念のため聞くけどさ(笑)

Y: うん、2日間分ね(笑)

E: よかったよかった。

D: あと、トム・クルーズと仕事した時はどんなだったの?

E: 上限5人のうち2人を言っちゃったもんだからもう名前も言わさない構えね(笑)。「いいからトム・クルーズのお話して!」って(笑)

D: 僕がユミのためにネームドロッピングしてあげてるみたい(笑)

Y: (笑)その時の私はもっと裏方側として関わってて、俳優さんが撮影開始前にシーンの準備するのをお手伝いする感じだったのね。で、まず日本語の脚本をもらって、「この部分を読んでもらえる? ある役者がここを日本語で言う予定になってるから」って言われたの。わかりました、って返したらトムが出てきて、「うわー! あれ『トップガン』じゃん!」ってなって。

D&E: (大爆笑)

Y: 「トム・クルーズさんですか?」って聞いたら彼は「もちろん」って。あの映画は見てたから彼のことは当然知ってて、うわーすごい、現実に存在してるんだーって思っちゃった。

E: トムって実際にはかなり小柄な人なんだってねえ。

Y: え、そんなことないよ。って私が背高いほうじゃないから、私からすれば彼も長身だった(笑)。トムの目を見て話さなきゃならなかったから、うわあーってなって……。

D: えー、どんななんだろ。

E: 彼の目に見とれてボーっとなっちゃったりした?

Y: うわートム・クルーズがこっち見てる、ウソでしょ! みたいな感じ(笑)

D: やっぱり緊張したんじゃない? そうでもない?

Y: その後はそうでもなかったかなぁ。でもすっごく感じのいい人だったよー。

E: 噂で聞いたんだけど、業界の伝説としては、トムって一度会った人の名前は絶対に忘れない能力の持ち主らしい。トムが業界人受けする理由もそれで、同じ部屋にいる人たちひとりひとりに全神経を集中させて、名前や顔を覚えちゃうらしいんだけど、すごいことだよね。その、彼のカルト宗教との提携関係については、普段思うところがあるにしてもさ。(※筆者注: トム・クルーズは新興宗教サイエントロジーの熱心な信奉者として知られている)

D: 僕にはムリだな……。

その他、アジア系に絞ればジョージ・タケイ(『HEROES』ではマシ・オカ演じるヒロの父親役)、タムリン・トミタ(同じくヒロの母親役)、渡辺謙(ユミさんはUS版『Godzilla』撮影後の吹き替えに声優として携わったそう)、真田広之などとも仕事をともにしたとのこと。


◆ユミさんの神出鬼没ぶり

俳優、声優、俳優向けの日本語コーチとしてLAで働いてきたユミさんだが、過去には音楽活動(実例として流れた「So Sexy」という曲のMVではボーカルを務めており、なぜか吉田栄作も出演している謎仕様。iTunesには他にも何曲か登録されているという)も行っていたという話も。またフィル・コリンズの「Can't Stop Loving You」(街角でフィルの曲に聴き入るツインテールの女性がユミさんと思われる)、「数秒くらいしか出ないけどカニエ・ウェストのファーストアルバム収録曲」のMV(「All Falls Down」中、空港でカニエとぶつかる家族連れの母親役)への出演歴もあるという話には、司会2人も目を丸くしていた。さらに、実は『Tsushima』でも複数のキャラクターを担当しており、

D: なんだっけ、甚六のクエストの?(※筆者注: 浮世草「名誉の裏には」。ユミさんが担当したのは、侍になりすました男をそうと承知で世話してやっていた、樫根の女性)

Y: あ! そうそう、判明したんだけど、私の役の名前、「鍋」だった(笑)

E: 「鍋」!? えー!!

D: は!? なんでそんな名前(笑)

Y: すごいウケるでしょ!(笑) ビデオを見たら、甚六が仁に「あなたにお見せするよう鍋に頼んでおきましょう」みたいなこと言ってたの。「鍋」? 私「鍋」って名前だったんだー、可愛いって思って(笑)。

D: でもその時代には普通にあった名前かもだしね。

Y: そうだと思う。

D: 今の時代に聞くと笑えるけど(笑)。「鍋」って。

E: 「鍋」かぁ(笑)

Y: 他にやったキャラは何だっけ。「まき」……? あとはえーと……。

E: あ、ゴメン。チャットの皆に言っておくと、「鍋」ってホットポットとかシチューみたいな意味ね。僕がたまたま知ってるささやかな数の日本語のひとつで、食べ物関連の言葉だからわかってたという。サプラーイズ!(笑)

D: (笑)だからみんなも、ゲームを通しプレイしてみると時々ユミの声がすると思うよ。

Y: 時々ね(笑)

D: ユミの声が聴こえてくると嬉しかったなあ。

E: 僕も最初に甚六のクエストやった時、「あ! この声知ってる、ユミちゃんの声だ!」ってなったもん(笑)

Y: このゲームに関わってることは誰にも言ってなかったからねー(笑)。誰も知らなかったの。私の日本の友達なんてみんな、「えー!! あのゲームの仕事してたのー!?」って反応だったし。私はうん、そうなんだーって。でも(日本語で)秘密。


◆『Tsushima』発売後にも

Y: ゲームは二度プレイしましたよ。英語音声の日本語字幕で。(ヘッドフォンをかける仕草で)こうやって聞きながら、よしよし、今のちゃんと合ってた、って。みんなのセリフが合ってるか確かめたくて(笑) どこが実際に使われるかはよくわかってなかったから。

D: 全員の収録が終わってから、そういうチェックもしなきゃならなかったってこと?

Y: ううん、仕事でやらなきゃならなかったわけじゃなくて。だからこそ、ゲームをプレイしながら確認してみたくて。だから2回遊んだの。

E: New Game+はやった?

Y: うん!

D: えっ、待って。プレイしてるの? なんでこの質問してなかったんだろ(笑)

E: 僕も知らなかった、ユミちゃんプレイしてたんだ!

Y: 私ゲーマーだもん!

D: 聞く予定の質問だったのになー。好きなゲームは何?

Y: それはもちろん『Ghost of Tsushima』ですよー。

D: 『Legends』はやってる?

Y: うん。

E: えっ、ユミちゃんじゃあ『Legends』一緒にやろ!? 気はいまいくつ? 100以上?

Y: えーっと待って、よくわからないから写真にとっておいたんだけど。……ふたりに聞きたかったんだよね、私いい線行ってるのかな。いま110。

D&E: おおおおー!!

Y: これっていいの?

D: 大禍やろー。

E: それ最高レベルだよ! 僕いまんとこ108とかだし。まだ神品もコンプしてないから。

Y: でもたくさんのプレイヤーが──(日本語で)すごい上手みんな!! (英語に戻って)すごいんだもん、なんとかついて行こうとしてるうちに、今のどうやったの!? ってなるくらい上手で。

E: ときどき振り返るともう敵が全滅してて、「えっ僕いま来たばっかなのに!」ってなったりするよね。

D: (笑)Discordのメンバーも、弓取でバシバシヘッドショット決めてるプレイ動画あげたりしててすごかったよ。『Legends』の話はついついやめられなくなっちゃうんだけど、お気に入りの役目は?

Y: ひととおりプレイしてはみたんですよ。当然、全種類試してみたかったから。でもお気に入りは何だろう……どれもまるで違った役目だし。

D: うんうん、僕も全部の役目が好きだな。

Y: 選べないけど、ひとつあるとしたら弓はあんまり得意じゃないかな。

E: 僕もー。というかこのメンツ、全員弓は苦手なんじゃ(笑)

D: 僕は上手くなりたいけどねえ。

Y: 私も弓で射とうとはするんだけど当たらなくて、いつも飛び込んでって刺したりしてる(笑)。めちゃくちゃ難しいんだもん!(笑) どうやるか教えてね。

ツジ氏は「ゲーム内担当キャラになりきったままでやる大禍」配信を企画中(尚、なりきり企画としては第一弾が敢行済である)らしく、ユミさんも参加リストに加えておくとのことだった。


◆二人と日本で食べ歩くなら?

日本のテレビ番組が近頃、さかんに対馬特集を組んでいるという話から、最後に日本へ行ったのがいつだったかという話題も。

E: 僕は20、じゃない、10年くらい前だな。日本の舞踏集団「大駱駝艦」で勉強してたから。

D: お、その人たち知ってる。

E: そう! 麿赤兒さんとね。オーストラリアにいた時にいた劇団は「大駱駝艦」とコネクションがあってさ、麿さんや団員をオーストラリアに招聘してトレーニングしてもらってたの。それから一緒にパフォーマンスしてショウをプロデュースしたり。で、そのあと僕らが大人数で日本に招いてもらって。今は変わってると思うけど、当時は毎年夏にワークショップを開いてたよ。

と、アールと日本の意外な繋がりがひとつ明らかになったところで、日本の食べ物の話題も。隔離期間中にラーメンのスープを何日もかけて自作したというアールに比べ、料理に関してツジ氏は「まあするけど、ただ食べるためだけ。凝ったものを作ったりはしない」とのこと。また、ユミさんがいま渋谷のど真ん中にいたら2人を連れて行きたいのは、日本のパン屋だそう。

D: 僕もそこは同意するなあ。

E: うん。こないだcameoの依頼で日本風のサンドイッチを作ったとき、「食パン」を買いに(LAの)日本式ベーカリーへ行ったんだけど、ドアから一歩足を踏み入れたとたんに「はああ……! 全部いっこずつ欲し〜い」ってなったもん。

Y: 2人にはねえ、コーンマヨパンをぜひ食べてみて欲しい。コーンマヨネーズね。

E: (目を丸くして) あああ、見たことあるー。でもどんなもんかなあ。

Y: 日本の人ってコーンが大好きで──

E: うん、それは本当だよね。

D: うんうん。

Y: 私もこっちに初めて来た時、ピザ屋さんで「ピザにコーンをトッピングしてもらえますか?」ってお願いしたら、お店の人に「はあ?」って言われて。「ピザにコーンですか?」って。

D: 別にだめってことないよねえ。

Y: 日本じゃ全然普通のことでしょ。

E: 日本や韓国、アジアの国々ではピザにコーンはまったく問題ないんだよね。初遭遇時こそ僕も「何!? 僕のピザにのっかってるこれは一体何!?」って反応だったけど。

Y&D: (笑)

E: 今だとコーンなしならイケるよって流せるけど、最初が「ほー」とか(首を盛んに傾げる仕草)って感じになるんだよね。

Y: コーンマヨパン自体は試してみたことある?

E: 見かけたことはあるんだけど、ちょっと尻込みしちゃって。

D: そのパンってさ、コーンマヨがのっかってるの? ほぼマヨで、何かにつけて食べるのか、それともそれ単体のままで食べる?

Y: (日本語で)違う違う、みんな日本人のひと違うって言って!(笑)

D: (笑)

Y: ふわふわのパンの中にコーンが入ってて、マヨネーズが入ってて、それを焼いてあるの。おいしいの!(笑)

D: OKOK、わかったよ(笑)。(英語で説明しなおすユミさんの話を聞いてから) 聞いた感じじゃ自作できそうじゃない? まあお店のよりは味が落ちるかもだけどさ。

Y: そうそう、私家で自作してる! もうどハマりしてるから。

D: アボカド・トーストにはさよならだな。

E: これからはコーン・トーストだよ。新しいトレンド(笑)

Y: 私たち発のトレンドね!(笑)

E: 2021には#CornToastを流行らそう(笑)

とはいえ基本的にアールの脳内ではコーンの乗ったパンを見た瞬間フルーツだと認識してしまい、食べてみるとおかず的に塩気が効いているので、これじゃない感がまさってしまうそうである。


◆また近いうちに

そんなこんなでゲーム内でも再会を約し、今後の配信予定などの告知があった後、インタビューはしめくくられた。

E: こんなところかな。みんな見てくれてありがとう。ユミちゃん、今日は参加してくれてありがとうね。

Y: 楽しかったです! アール、ダイスケありがとう。 (日本語で)皆さんありがとうー。

E: すごい楽しかったー。インタビューしてるとみんなに会いたくてたまらなくなるんだよなあ。でもそのうちにね。

D: 近いうちだといいよね。

Y: ねー。

E: だといいな。では皆さん、DandEな週末を。今日は僕とダイス、すてきなゲストのユミちゃんでお送りしました。

Y: (以下全員日本語で)ありがとうございましたー!

E: ありがとうございまーす!

D: ありがとうございました、おつかれさま! バイバイ!