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DeathComeTrueがゲームとしても映画としても失敗している理由

新作ADV『DeathComeTrue』(デスカムトゥルー)をクリアしました。筆者はこの作品を、ゲームとしても、映画としても全く楽しめませんでした。どうしてそう感じたのかを、この記事で分析してみます。

DeathComeTrueとは

2020年6月25日、株式会社イザナギゲームズから発売された新作実写ムービーゲームです。
イザナギゲームズはダンガンロンパシリーズのディレクションやシナリオを手掛けた小高和剛さんが独立して設立した会社で、『DeathComeTrue』も小高和剛さんがディレクション、シナリオを担当しているそうです。

作品概要
リリース    :2020年6月25日
価格      :1,960円(税込)
シナリオ    :小高和剛
ディレクション :小高和剛
プロデューサー :梅田慎介
製作      :イザナギゲームズ
プラットフォーム:Nintendo Switch、iOS、Android 、Steam(7月17日対応予定)、PS4(対応日未定)

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プレイ前の期待

筆者はiTunesStoreのおすすめの新着ゲーム欄でたまたま本作を見かけました。ゲーム一覧の中で、実写のアイコンが並んでいるのは目を引くため、同じように気になった人は多いのではないでしょうか。

紹介欄を見てみると「実写アドベンチャーゲーム」と書かれています。この時点で『428 封鎖された渋谷で 』を連想してしまい、本作への期待が一気に高まりました。

Storeレビューを見てみると、やはり428と比較しているレビューがちらほらありました。ただ、『DeathComeTrue』単体で評価しているレビューより「428」と比較しているレビューのほうが辛口なものが多いように感じました。

さらにDeathComeTrueについて調べていくと、実写ADVである「428」とは違い、実写映画に選択肢を加えたような形式の作品であることがわかりました。同じようなジャンルとして、2018年にNETFLIXで公開されたインタラクティブ映画『ブラックミラー:バンダースナッチ』をご存じの方も多いのではないでしょうか。

また、iOSだけでなく、いくつかのプラットフォームでリリースされていることもわかりました。アプリで1,960円はちょっと高いかな、と思っていたため、迷うことなくテレビでプレイできるSwitch版を購入しました。
新作映画を1本観ると思えば、そこまで高い値段設定ではないと思います。(筆者は同価格なら断然大きな画面でプレイできるほうを選びます!)。

ゲームを起動すると、主人公のカラキマコトを演じる本郷奏多さんによる「配信だめよ~」的なアナウンスがはじまります。本郷さんは映画『キングダム』で悪の皇帝を演じたあのイケメン君です。俳優の顔が全然区別できない筆者でも、彼の特徴的な顔は見分けがつきます(一瞬、神木隆之介の顔立ちがこわくなったのかと思ったけど)。

その後、制作ゲーム会社のロゴがぽーん、ぽーんと表示されます。

イザナギゲームズ・・・TOOKYOGAMES・・・。

えっ!?TOOKYOGAMES!?えええええぇぇぇぇぇぇぇ!!
TOOKYOGAMESとは、何を隠そう、筆者の大好きなADV「極限脱出シリーズ」や「AIソムニウム」のシナリオやディレクションを担当した打越鋼太郎さんらが独立して立ち上げた会社です。筆者の中でのTOOKYOGAMESの情報は、ユルキル制作中で止まっていたため、まさかまさかのTOOKYOGAMES産ゲーム初プレイとなりました。

というわけで、事前調査で少し下がったハードルが結局爆上がりした状態で『DeathComeTrue』を遊ぶことになったのです。

プレイ後の落胆

率直に言って、楽しめなかったです。
ハードルを上げすぎたから……ということも無きにしもあらずですが、遊び終わった後に何の感情も湧き上がってこない作品も久々でした。

ネタバレにならないように、良かった点と悪かった点を箇条書きする程度にとどめようと思います。

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良かった点
本郷奏多の演技がよかった。
CG演出、特に選択肢の演出が良かった。
選択肢は、テキスト+小ウィンドウになっているのですが、小ウィンドウに映し出される映像がストーリーの展開に応じて、先の展開だったり、砂嵐だったりするところが洒落た演出だなー、と思いました。
舞台セット全般が非常に凝っていると感じた。英国風の装飾でまとめられており、後述の色彩調整と相まって、とても没入感を高めているように感じた。
映像全体の色彩調整が、明るすぎず、暗すぎず、舞台セットが際立つようになっていた。

悪かった点
本郷奏多以外の演技がゲームと合っていなかった。
 演技力に言及できるほどの知見は持ち合わせていませんので、専門的なことは言えませんが、演技力がダメ!とかでは決してないと思います。ただ、ゲームキャラクターの演技をそのまま俳優さんにさせている感じがして、違和感がありました。
 本郷奏多さんはキングダムでもそうでしたが、漫画やアニメのキャラクターを演じても違和感がない俳優のように思います。

・シナリオが面白くなかった。
 ネタバレはしたくないので詳細は書きませんが、真新しさは全くないです。シナリオに期待してこのゲームを購入してしまうと、がっかりすることは避けられないでしょう。

・感情移入が全くできなかった。
 尺が短い(キャラクターの設定や背景が、感情移入できるほど語られていなかった)、前述の演技の違和感、セリフが悪い意味でゲームっぽい等複合的な理由で私は全く感情移入ができませんでした。

・選択肢に意味がなかった。
 意味のない選択肢が多い、選択する面白みがない、そもそもあまり分岐しない等の欠点が目立ちました。

まとめ

結果として、ゲームとしても映画としても楽しめないものになってしまっていると思いました。こんな半端なものになるなら、ゲームか映画のどちらかに振り切ったほうがよかったのではないでしょうか。

ADVや脱出ゲームにしてキャラクターとの会話を増やしたり、背景やアイテムの情報で世界観を深堀させたりして、より感情移入をしやすいかたちにするとか、(しかしこれではパブリッシャーの意図とは反します。※後述)
バンダースナッチのように、もっと映画に近いものにして、メタ要素を組み込み、ゲームキャラクターでなく作品に没入できるようにするとか、いろいろ工夫はできたような気はします。

と、あまり良い評価ではありませんが、珍しいジャンルのゲーム(?)ではありますので、一度遊んでみるのはありかなとは思います。

最後に


パブリッシャーは「このゲームを機に、若い人がADVを遊んでほしい」というようなことをインタビュー記事で言っていますので、おそらく対象ユーザーが「ループものをやったことがない」「ADVや脱出ゲームをあまりやったことがない」若年層なのだなと推察できます。前述のとおり、既存のADV等を遊んできている人には、物足りない内容になっているからです。だとしたら筆者が物足りなさを感じるのはある程度理解できますし、致し方ないのかなとも感じま・・・・・・・・・・・せん!!!!!!

バンダースナッチもそうですが、比較的安価で体験できるインタラクティブコンテンツは世の中に腐るほどあります。スマホで遊べるアプリには無料で手軽にできるADVや脱出ゲームだってたくさんあります。「若い人がADVの入り口とするようなゲーム」はあふれているのです。
そういうコンテンツの中で抜きんでて面白いものであったら、関連ゲームにも手は伸びると思いますが……本作『DeathComeTrue』にはそこまでの魅力は感じませんでした。

ただ、何度もいうようですが、ジャンルとしてはまだ珍しく、意欲的かつ挑戦的な作品であると思いますので、興味があるならやってみることをオススメします!値段も高くないし!

※使用している画像はすべて、イザナギゲームズの著作物です。
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