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私がどうやって広東語通訳者になれたのかを紐解いてみる(61)- マカオでの通訳・コーディネイター案件 -

せっかくなのでマカオでの仕事をちょっと紹介してみよう。

「あ!これ、あそこだ!」と見つけるのが楽しいMVと写真をどうぞ。

UTOPIA 崎山つばさ

「UTOPIAな感じの絵にしたいんですよねー」というプロデューサーの思う所が全く掴めないまま、世界遺産の写真などを見せ、気に入ったポイントを挙げてもらって撮影許可を取った案件。

プロデューサーの思う「UTOPIA」って何?どういうこと?どんな場所のこと?いかにも業界のプロデューサーな感じのイメージが先行する抽象的な表現をする方だったので、提案した場所が気に入ってもらえるかどうか半信半疑のまま現地入りして撮影開始。

出来上がってきたこのMVを観ると、プロデューサーはどうやらグランド・リスボアが気に入った模様。行ってみた現地でメチャクチャ気に入ってくれたのは後半ガッツリ使っている高い場所。高所恐怖症の私は撮影中は地面に降りて待っていた。しかも床面が傾いてたし。

現地で歩いていてプロデューサーが突如気に入ったのが廃墟な感じの壁。座って歌っている部分の壁。向かい側には旅行者がこぞってインスタに上げるカラフルな壁があるのに、気に入ったのはこちら側の何もない廃墟壁。教会まで歩いている途中に見つけて突如「ここ!これだ!これまさにUTOPIA!ここで撮って!」とプロデューサーの希望により撮影。何が琴線に触れたのか本当にわからなかった。

実は現地入り前に、日本人が撮影してネットで出回っている古い町並みの向こうにグランド・リスボアが抜けて見えるストリートの写真を出して来て「ここで撮りたいから、この場所を探してくれ」と言われていた。

え?誰かが撮ったのと同じアングルで撮るってパクリじゃないの?と思ったが、自身で撮ったものは版権的には問題無いようだし、こちとらはMVなのでまた別物ということのようだった。

グランド・リスボアの角度やら古い住宅とのサイズ比率からいろいろ試行錯誤してみたがわからない。前日に現地入りしてから探すしかない。焦る。

現地入りして撮影期間中レンタルしている車のドライバーに「これが撮れる場所を知らないか?」と写真を見せた。「知ってるよ。これ撮った日本人をここに連れてきたの俺だもん。」ギャー!多謝龍哥保佑!

「ほら、ここだよ」と車を停めてもらった場所は、私の宿泊ホテルの目の前の十字路だった。おいー!燈台下暗しとはこのことか!

ということで撮影時には「この写真の場所はここです!」と如何にも事前リサーチ十分で余裕綽々な態度でご案内した。

OLYMPUS PEN E-PL9 E-PL8 Official Catalogue

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これもまた「この写真と全く同じのを撮りたいんです!」と言われ事前リサーチで必死に探した場所。同じ場所だけじゃないよ。湖面に映る建物までもクリアじゃなきゃいけないとのリクエストで撮影時間まであれこれ考えた。

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朝一番、夜明け前からスタンバイの案件。寒かったよー。モデルさんなんかこの薄着。寒かったと思う。モデルさんもスタッフも本当に大変だった。

カメラのカタログなので、メインはカメラ本体とモデルさんだけど、マカオの建物や街並みがバックに映っている写真もいっぱいあるので、上記の写真の上の下線が付いているタイトルのリンクから入って見てみてね。この写真もカタログの写真をまんま載せていいのかどうかわからないので一部切り取って載せてます。

夕暮れセンチメンタル 渡辺美優紀

このMVはザ・ヴェネチアン・マカオとザ・パリジャン・マカオの館内撮影がメイン。この曲になぜこのホテルなのかわからない。

夕暮れから夜にかけての街もちょっと出ている。看板や店名でどこなのかわかりやすいと思う。マカオの街の皆さんがとても協力的なのでいつも助かっている。

実はこの時のカメラマン、インフルエンザ大流行中の仕事から休みなくこちらの現場入りしてきた。「俺の周りバタバタ倒れたんだよね。俺も実はちょっとヤバイんだ。」とか言いながら。そして案の定、2日目高熱で倒れた。撮影時間を調整したり、アシスタントが頑張ったりしてなんとか撮影続行。

もう断然インフルエンザなのがわかっているので病院に行くことに。お金を握っているプロデューサーと私が一緒に行ったのだけれど、プロデューサーが「感染したかどうかわからないけれど、万が一の為に僕も注射を打っておくことにする。ソフィさんも一緒にどう?」と言ってくださったので、私も注射してもらった。熱も咳も出ていないので、未感染であれば予防になるということで。おかげで(?)私は感染せず。ラッキーした。

SCARLET feat. Afrijack 三代目 J SOUL BROTHERS

これはMVとスティル撮影を同時進行で行ったもので、私はスティル・チームでの参加。MVチームの照明が『Man Hunt』の照明チームだったので現場での「うわー!お久しぶり!元気ですかー?」な再会が嬉しかった。

しかしこの撮影はハンパ無い殺人スケジュールだった。クライアントからスケジュールが出て来た時点で「え?ウソやろ?いつ寝るん?」なスケジュールだったが手配会社が請けてしまったので私も断れず。寝不足すぎて頭が朦朧とした状態で撮影したことだけは覚えている。

撮影現場となった City of Dreams Morpheus は撮影許可出さないことで有名なホテル。しかし流石 EXILE。あれこれ豪華すぎて頭が更に朦朧。

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日本の俳優も歌手も本当に知らない興味ない私なので EXILE という名前は聞いたことがあったけれど、この J SOUL BROTHERS はもちろん初耳。「え?なんで第三代目?」というボケぶりは当然口にしないで現場に臨む。

真ん中の一番背の高い人とエレベーターで一緒になって少しお喋りしたのだけれど、もうビックリするぐらい腰が低くて丁寧で優しい方だった。香港に住んでいてこの仕事でマカオ入りしたと言うと「香港、今大変なんですよね?大丈夫ですか?」と気遣ってくださった。聞くところによると EXILE の事務所は礼儀にとても厳しいのだとか。だから大きくなれたのかもね。

撮影に来る日本のクルーへ

海外での撮影だとわかって来ているのに、日本と同じようなサービスや環境を期待して来る人が少なくない。

現場で突然「電源が欲しい」と言い出すが、ホテルのロビーなんだからあちこちにコンセントあるわけないでしょう。

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撮影しに来てやっている的な心持ちの人も少なからずいる。いやいや、撮影に使わせてもらっているんだよ。アジアを下に見るのはもう世界の現状に即していないということを認識して欲しい。

日本人お得意の粉骨砕身なサービスや日本と同じようなインフラを期待してはいけない、突然のリクエストに日本人のように無理やりなんとかするというメンタリティは無い、ということを心してから海外撮影に臨んで欲しいと常に思うのですよ、我々コーディネイターは。(続)

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