【タロット研究】テンプル教会の騎士たちとマルセイユ・タロットの「交差した脚」
タロットの交差した脚をもつカードたち
タロットはさまざまありますが、古くから伝わるマルセイユ・タロットでは、大アルカナのさまざまな象徴の意味合いを知ることが醍醐味のひとつだったりします。
その中には、タロットの分野だけに限らず、昔からその意味合いを取りざたされている象徴があります。
多くの文化の中で「あれはどういう意味」「これはこういう意味」とささやかれ、人を惹きつけて来た象徴には、何か興味深いことが隠れているようです。
その中で、今回は『皇帝』『吊るし』『世界』に見られる共通した脚の形状のシンボルを見ていきましょう。
王尺を突き出して椅子に寄りかかった『皇帝』、逆さになってぶら下がっている『吊るし』、教会の装飾壁タンパンで踊るような『世界』。
脚の前後や左右などの状態に違いがありながらも、これらのカードが片足を伸ばし片足を曲げて交差させた形を繰り返し示しています。
言葉が長くなるので、便宜上「交差させた脚」と呼ぶことにします。
この象徴は、タロットを学んだ最初の頃から目につきやすく「同じものだ」と気づきがやすい象徴です。
他とは異なった大きなボディランゲージなので、脳がシグナルをキャッチしやすいのかも知れません。
そのように描かれているということはタロットにおいて重要な意味があると推測できます。
交差させた脚の騎士が眠るテンプル教会
「交差させた脚」は、英国ロンドンのテンプル教会にある中世騎士像のものがよく知られています。
テンプル教会は12世紀にテンプル騎士団のロンドン本部として建てられた建物です。
テンプル騎士団は、第1次十字軍がイスラム教徒から奪還した聖地エルサレムを守護するという目的で作られた修道騎士団です。
日本語では神殿騎士団や聖堂騎士団とも呼ばれ、その正式名称は「キリストとソロモン神殿の貧しき戦友たち」です。
テンプル教会の建物は、エルサレムを守護するというテンプル騎士団の伝統に基づき、エルサレムの聖墳墓教会に触発されたという内陣の長方形の建築物と身廊の円形の建築物で出来ています。
テンプル騎士団と2人乗りの印章
テンプル騎士団にはその意味を取りざたされる有名な印章があります。
2人の騎士が1頭の馬に乗っている図です。
これは修道騎士の「修道士であり騎士である」という二重性を表していると言われています。
テンプル教会に安置されている中世騎士像ですが、脚を交差しているものもあれば、交差させていないものもあります。
「交差させた脚」は「十字軍騎士の印」という説がありますが、テンプル教会に騎士像が安置されている騎士たちの経歴を紐解くと、
十字軍に参加し、5人もの王に仕えた有力な騎士で、死の直前にテンプル騎士団に入ったという初代ペンブルック伯爵ウィリアム・マーシャルは脚を交差させておらず、
父と同じ名前の第2代ペンブルック伯爵ウィリアム・マーシャルは騎士として戦っているが十字軍には参加しておらず、交差させた脚の下に獣を踏んでいる、
第4代ペンブルック伯爵ギルバート・マーシャルは亡くなった兄(第3代)の後を継いで爵位を継承するために聖職者の地位を取り消してもらい騎士に叙された人物で、脚を交差している、
というふうで、その説の解釈では一貫しないようです。
騎士像の解釈を試みるためにも、まずはマルセイユ・タロットの「交差させた脚」から調べてみましょう。
『皇帝』の交差させた脚
『皇帝』は鎧兜で身を固めた兵士であり、『女帝』の伴侶です。
ワシの空色の盾を抱く『女帝』は創造的アイデアをはらむ人ですが、『女帝』のアイデアは「アイデアのまま」の状態であり、『女帝』はアイデアを具現化してはいません。
『女帝』の盾の下端は尖っていて、地面に置いても安定せずに倒れてしまうかも知れません。
それを地上に具現化できるような「プラン」にまで応用させるのは『皇帝』の役割です。
『皇帝』の姿勢や服・持ち物を調べてみると、スカートのような服を着ています。
そのスカートはどのようかと言えば、
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