内定式でスピーチをしてきました(していません)

カルロです、更新をさぼっていました。反省

時期的に内定者の方向けで働くってことは……みたいなのを書くつもりでしたが、ちょっと考えて僕に求められているのはたぶんクリエイターとしての何かだと思い直しました。

でも、ハウツー百億部ヒット作書き方術とかは知りません。なんで、適当に内定式でスピーチする態の原稿を書きました。


X年X月X日X会場にて X時X分より byカルロ・ゼン

クリエイターとして内定の決まった皆さま、おめでとうございます。

小説家とか漫画家に内定した皆さまとはこれからご一緒させていただくことになるのだと思います。

小説家とか、漫画家とかに内定関係ないだろって常識的な突っ込みはさておき、デビューが決まった皆さまを前にして、大げさに申し上げると恐怖の心で胸が一杯です。

いったい、何人が生き残れるのでしょうか。

皆さまはきっと面白い物語を書くでしょう。そんな作品を手に取る読者としての僕は幸せです。

ただ、クリエイターとしての立場となると僕らは全員が全員と競争し、打ち破ったり、打ち破られたりするであろう立場でもあります。

出版業界は、縮小傾向です。

業界を全員で盛り上げていければ……という理想論も嫌いではありません。クリエイティブにかかわる一員として、同じ悩みを共有する仲間として仲良くやっていきたい……とも願っています。

だけど、現実をお話しましょう。

例えばラノベ作家の生存率は決して高いものではありません。

3年やれば、2人に1人だけ。

5年やれば、2.5人に1人だけ。


そして、僕が当面の目標としている「10年続ける」を達成できるのはなんと4人に1人です。※詳しくは下記の記事をご参照ください。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64710

幸か不幸か、毎年大勢がデビューし、そして、夢破れてしまう世界です。

一冊目が全てとは言いませんが、一冊目で『結果』を出さないと次が見えにくいのは真実という最悪の世界です。

デビューが決まった皆さんは、我こそは! という意気込みと、同業者を虎視眈々と狙う獰猛な視線をお持ちだと思います。

素晴らしいハングリー精神ですが、同じような気持ちの同期が100人、200人単位で存在してもいます。

牙を持ち、知恵を練り、そして『自分の物語』を武器に戦う同期諸君は強敵です。

のみならず、先達ともビシビシ競争しなければなりません。

普通の会社であれば、1年目の新人と、10年目のベテランを同じ土俵で勝負させようなどと考えたりはしないでしょう。

ですが……クリエイターでは、別です。

発売日が同じであれば、同じレーベルで映画化してアニメ化して1000万部売れているような怪物のような先生とだって同じ土俵で競争です。違うレーベルの先生や、違うジャンルのエンターテイメントとも競わなければなりません。

まるで企業競争みたいだなと思われた方、その通りです。

小説家や漫画家は、創作を仕事とする(多くは)個人事業主として、創作活動という事業を行っていくことになります。

好きなことを仕事にするというのは一見するとユートピアですが、案外と楽しいことばかりでもありません。

なぜなら『良いものを書く』という『作り手』の視点に平行して、『売れるか』という『仕事』としての視座を持たねばならないので。

さらりと書いてしまいましたが、これは非常に残酷です。

ミリオンヒット級の作品を書き上げても、ミリオンヒットは確約されていません。

今、デビューが決まった皆さまの中には僕の書いたものを読んでくださった方もいらっしゃるかもしれません。たぶん、『あんなのが売れるなら、俺だってすぐに一億部は堅いな』とかいう自信をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

自分の物語が一番面白いに決まっていると、クリエイターであれば誰だって言いたいものです。僕だって言いたい。

だって『貴方の物語』よりも、『自分の物語』の方が『面白い』とクリエイター個人が信じるのは誰にも侵害されない権利です。自由であり、救いでもあるかもしれません。

不幸なことに、商業作品としての売れ行きを決するのは『あなたの作品』にも『あなたの努力/苦労/犠牲』にも全く思い入れのない市場という怪物です。

読者の目線で、考えてみてください。

『どうして、こんなに面白い作品が売れていないんだろうか?』と思ったことはないでしょうか。

宣伝が適切ではないのかもしれません。
タイミングに恵まれなかったのかもしれません。
流通に問題があったかもしれません。

なんであれ、『読んでほしいと思う方々』に届かなければ、どんな名作も全く評価されずに埋もれてしまいます。

だから、宣伝へ必死になる……というのは痛いほど気持ちとして理解できてしまう。

なんですが、結構、『PR』と『Advertising』をごっちゃにしているという印象があるのが残念なところです。

この辺、『SNSで宣伝すれば売れるよ!』という雑な言葉に欺かれすぎないように注意してください。

たしかに、SNSの力は壮大なものですが、同時に『あなたのための専属広報媒体』というわけではないので知恵と工夫が大いに必要となるでしょう。

長く論じるのはあれなので、下記のリンクをご紹介しておしまいにしますが。

https://www.huffingtonpost.jp/hisami-oshiba/prpublic-relations_b_7951804.html

※ご紹介している津田先生の記事と合わせてご確認いただくと、味わい深いかなと思う次第です。

さて、色々と暗い話をしたところで呪いか救いかよくわからない話を最後に一つ。

クリエイターは、運や巡り合わせに左右される仕事ではありますが、実力一本だけで仲間を集め、強大な運命にすら挑みうる冒険者だと僕なんかは勝手に思うのです。

ドン・キホーテにも、ドラゴンキラーにもなりうるでしょう。

創作仲間たちと競い合い、自分の作り上げた作品を大いに世に問うことができる仕事というのは、苦しく楽しいものです。

売れなければ、続けられないかもしれません。でも、『クリエイター個人』として『面白さ』を見失ってしまうとあとが辛いと思います。

むしろ逆とかいいと思います。

『売れる要素』で『これが面白んだ!』という本命をくるみ、糖衣錠のようにして世間様を『なんか、あまそー』と欺ければこっちのものですよ。

めっちゃ苦労すると思いますが、お互い、頑張って好き勝手に生き延びていきましょう。

それでは、大先輩方に『カルロはまた適当なことを……』とお叱りを受けそうですし、そろそろ失礼させていただきます。