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フィンランドの地域熱供給と住宅

1)ガス化熱電併給のニーズはなぜあるか

Volter社を含むガス化の熱電併給が、なぜ欧州で広がるのか。フォレストエナジーの沼さんと話していて、ようやくわかってきました。それは、ガスや石油だろうがバイオマスだろうが熱源に関わらず、欧州の都市圏では、大きなCHP(熱電併給)がドンと導入されることが普通であって、熱に対する需要が非常に高いことが基本的にあります。そうした周辺には、もっと小さい規模ですが数十〜数百世帯向けの地域熱供給もあって大きな熱グリッドにはつながっていない。そこの熱供給を担う際に、ガス化の技術が使われるようです。熱電併給ができる、というのは重要なソリューションで、かつ規模感も、そうした大規模なものの辺縁部の小さな地域熱供給には合致していると。
つまり、地域熱供給というインフラはすでに行政がつくってくれているのです。そこに民間事業として繋ぎこむ。そういうパターンなわけです。これって西粟倉はじめ地域熱供給がすでにあるところはすごくチャンスある。まず、熱を搬送するグリッドがあるだけで、普通は運べない熱を運んでくれるんですよね。オンサイト(需要に対して供給設備がその場所にある)だと1on1になりやすくて、設備が壊れたら供給できなくなるリスクがある。やっぱりグリッドというバッファーがあるのは最強だなって思うのです。そして、新たな熱利用の事業がやりやすくなるとも思うのです。

2)フィンランドの地域熱供給 

フィンランドの地域熱供給は、1970年頃に敷設が始まり、現状では総延長15,400kmまで広がり、170の自治体で導入されており(うち121でバイオマスまたはカーボンニュートラル)、全体で19GWの熱源となっているとのこと。このうち、地図を見るとわかりますが、かなり広い範囲に分布しています。熱の利用先はこの配管につなぎこめば良いのですから、安定した熱購入先がある状況で、事業を計画できるということになるわけです。

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出典(「District heating in Finland 2018」Energiateollisuus ry 2019 (Finnish Energy))

全体像は、こちらから見れます。

3)地域熱供給は豊かな暮らしとセット 

今回、オウル市から車で2.5時間ほどにあるVolter社社長の別荘にも泊めていただきました。その住宅で感じたことは、洗練されたインテリアデザインや照明のゆるやかな暗さと、圧倒的な断熱気密のレベル、そして換気の熱回収もされており、冷たすぎない程度の温度を保った空気が循環していました。基本的な暖房は床暖房(地中熱ヒートポンプが非常に多いとのこと)による非常に柔らかい暖かさが足元にあって、全体としては「涼しい」と感じることができました。さらに多くの戸建て住宅にはサウナがあるそうで、別荘ではすぐ外に出られましたので、雪にダイブして寝転んだ経験は貴重なものになりました。 

こうした非常に省エネな住宅の上に豊かな暮らしがあって、そこに地域熱供給がセットになっていることに気づかされます。今回、1つの例として、オウル市郊外の32世帯が1つの熱供給網となっている街区を訪れました。中央にVolter社のガス化熱電併給装置(40kWe+100kWth)が導入され、電気は電力会社に販売し、熱は暖房と給湯へと供給しているとのこと。熱供給の需要を運転の基本とし、10tの蓄熱タンク温度が高ければ(=熱需要が低ければ)、運転を抑制するとのことで、視察時も抑制気味で40%程度の運転を行っていました。日本では、FITによる売電単価が高いので、発電が運転の基本となりますから、ほぼ100%で運転するのですが、全く異なる状況に驚きました。

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以上、ガス化熱電併給側から見た、地域熱供給と住宅に関する報告でした。

文責:井筒耕平

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