百十七話 睨む

摩耶は翼さんのことを、姉であり母であり恋人でもあるという…。


何という贅沢…。


何という羨ましさ…。


いつも翼さんに、めちゃくちゃ甘えているのだろうか…?


翼さんに、あんなことやこんなことをしているのだろうか…?


あぁん、もうダメっ!考えなきゃいいのに、色々考えてしまうっ!


摩耶と翼さんが、仲睦まじくしている様が、脳裏を横切っていく…。


姉のように慕っているなら、まだいいけど…。


翼さんを母親だと思って、私の胸を触ろうとしたことを思い出した…。


いつも、摩耶は翼さんの胸に顔を埋め、胸を吸っているのだろうか…?


いつも、翼さんに抱っこされて、顔を胸に埋めているのかな…?


羨ましすぎる…!


ダメだよ!そこ代われよ…!


実際見たわけじゃないけど、ドヤ顔で翼さんに抱っこされてる摩耶が脳裏に出てくる…。


翼さんに抱っこされていいのは、このボクだけっすよ…!


そう言って、あっかんべーする摩耶の顔がまざまざと脳裏に過ぎる…。


ぐぬぬ…。おのれ摩耶め…。いいな…。


私はありもしない妄想に出てくる摩耶に嫉妬と羨望の眼差しを向けるのであった…。




翼さんのことを、母親のようにに慕っている様を妄想した私だけど…。


摩耶は翼さんのことを、恋人でもあるという…。


恋人ってことは、恋人同士の関係ってことだよね…?(当たり前…)


恋人同士ということは、もう手とか繋いだりしちゃったのかな…?


き、キスっ!?キスとかしちゃったのかな…!?


摩耶と翼さんがキス…!?


ダメっ!そんなこと絶対ダメっ!あってはいけない…!


私は猛烈に頭を横に振った…!


摩耶がへんなことを言うから、へんな妄想が脳内を占めてしまうのだ…。




「なんて顔してるっすか?気持ち悪いっすよ…?」


目を開けると、眼前に摩耶の顔があった…。


ずっとあらぬ妄想していた私の顔を、ずっと摩耶に見られていたらしい…。


「う、うるさいわねっ!あんたが変なこと言うから悪いんでしょ…!」


私は恥ずかしさから、顔が真っ赤になってしまいながら言った。


「ずっと弛緩した顔になったと思ったら、変に顔をしかめたり…。変っすよ」


摩耶は、執拗に私の顔の表情のことを言ってくる…。


「あんたがなんと言おうとも、私は翼さんが好き!好きなの!」


私は胸に手を当て、そう言った。


「ノアの思いなんて、翼さんにはこれっぽっちも届いてないと思うっすけどね!」


なんだとー。摩耶に何がわかると言うんだ…!


私は摩耶の顔を、睨みつけるのであった…。

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