四百七話 VR世界でのスマホ
「ごきげんよう」「神のご加護を…」
朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。
学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。
そう、ここは神田ミカエル女学院…。
中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。
天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?
その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。
ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。
制服は翻さないように、静かに歩き…。
清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。
この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。
否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。
バイトで知り合った眠子さんという…。
女の子に頼まれて…。
『デモンズファンタジア』というゲームの…。
テストプレイヤーをやることになった私…。
眠子さんの家に泊まって次の日の朝…。
朝食を食べようと思ったら…。
謎のスーツの女性がいるのであった…。
その女性はゲームの運営さんなのであった。
運営Lと名乗った女性…。
私は初めて運営会社の人を見た…。
朝食のパンケーキを食べ終えた…。
そして、眠子さんと私…。
運営Lさんの3人は…。
眠子さんの部屋に集まるのであった。
そして、ゲームの運営の女性から…。
VRゲームのVRスーツを試着してみてと言われ。
私は最初、躊躇ったのだけれど…。
テストプレイヤーの時にどうせ着るのだからと。
試着してみることにしたのだった…。
VRスーツはとても薄い半透明の物体で…。
ゲームをするプレイヤーの全身を…。
くまなく覆ってしまうスーツであった…。
着てみると、最初は布団圧縮機みたいで…。
全身を薄いビニール袋で覆われているような。
違和感があったけれど、すぐに無くなった…。
息苦しさとか視界の悪さとはない…。
服を着たままでも付けれるので安心だ…。
もちろん?全裸で付けてもいいらしい…。
全裸でVRスーツを着た妄想をする私…。
全裸で着たら、ゲームの世界でも全裸なの?
私って、すぐに変な妄想しちゃう…。
変態美少女でごめんなさい…。
そんなことを考えていたら…。
必死に破廉恥な考えを消したのであった。
それから運営Lさんがなにやら…。
操作をしてVRスーツを着ている私は…。
少しだけファンタジーゲームの世界に…。
ログインしてしまうのでした…。
ファンタジー世界の街?村?にダイブして。
人間や人間以外の種族の人たちが…。
いっぱい街を歩いてた…。
こんなところを裸で歩いたら…。
私は恥ずかしくて死んでしまいそう…。
服を着ててよかったぁと思った…。
ゲームの装備はなかったので…。
現実世界の服のままであった…。
なんか異世界に転生したみたいだな。
そう思ってしまう私…。
石畳の道を少し歩いてみた…。
ちゃんと石畳の感触が伝わってくる…。
この世界の風も感じるし…。
どこかで料理を売っているのだろうか?
美味しそうな匂いもしてきた…。
食べたいけれど、この世界の通貨もない。
諦めるしかないか…。
武器や装備を売ってるお店もある…。
あとはいかにも冒険者の人たちが…。
いっぱい集まっている場所もあった…。
あれは俗にいうギルドという場所かな?
私だって、少しはそういうゲームの知識はある。
あそこでジョブとか選ぶのだろうか…?
あと不思議なことに色んな種族の人がいるが。
みんな手にはスマホを持っているのだった。
このゲームの世界はスマホも持ち込み可能なのか?
「どうですか?このゲームの世界は?」
突然、脳内に直接声がした…。
声の主はどうやら運営Lさんであった…。
「すっごいリアルですっごいですね!」
私は語彙力ゼロな返答をした…。
アホ丸出しである…。
「そ、そうですか。あと声は出さなくていいです」
運営Lさんはコホンと咳払いをした…。
脳内で直接お話しができるらしい…。
脳内チャットというらしいのだ…。
最新の技術って本当にすごいなぁ…。
歩いたりとか動作も…。
頭で考えるだけでできらしい…。
「なんでみんなスマホ持ってるんですか?」
私はさっきから気になってることを聞いてみた。
今度は頭の中で話しかけてみた…。
「あれは現実世界との通信手段ですね」
運営Lさんは答えてくれる…。
VR世界にのめり込みすぎて…。
現実世界の電話やメールに気づかないという
現象が昨今問題になっているという…。
それを防ぐために、VR世界でも…。
スマホを使えるようにしたということだった。
あとはSNSでゲームの世界の…。
写真や動画をアップすることも可能だという。
ほとんどの人はそっちの目的らしかった。
「今日はお試しなのでこれぐらいにしますか」
運営Lさんがそう言うと…。
私は瞬時に現実世界に引き戻された…。
「お帰りなさい。乃亜さん…」
目を開けると運営Lさんがいて…。
その膝にはまだ眠子さんが寝ていた。
私はいきなり現実世界に…。
帰ってきたのでぼんやりしてしまう。
「それではVRスーツを脱いでください」
運営Lさんにそう言われるけれど…。
どうやって脱ぐのだろうか…?
そう思っていると…。
勝手に薄い絹が風に舞うように…。
VRスーツがスルスルと脱げていった。
そしてこれまた勝手に畳まれて…。
A5サイズぐらいになってしまう…。
頭の中で思うだけでできるらしかった。
やっぱり最新技術はすごいですなぁ…。
私はえらく感心してしまうのであった。
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