百四十六話 マウント

喫茶店『天使の扉』で初めてのご奉仕を終え、帰途に着く私…。


その帰りの途中、なぜか一緒に帰っていた摩耶が歩きスマホをしていることに気づいた…。


歩きスマホは危ないので、注意して摩耶のスマホを取り上げる私…。


摩耶が取れないように、私の頭上に掲げる…。


スマホを取ろうと必死にジャンプする摩耶…。


今までやられたことへの仕返しだ…。ザマァみろ…!


私は心の中で、ほくそ笑んだ…。


まぁ、翼さんの部屋に着いたら返そうと思っていたんだけど…。


怒った摩耶に、ローキックされて私の弁慶の泣き所にクリーンヒットする…。


あまりの痛さに悶絶して、片膝ついちゃう私…。


その隙に摩耶は私からスマホを取り返した…。


私は半泣きしながら、悠然と歩き去る摩耶の後ろ姿を見るしかなかった…。




摩耶は、そうこうしているうちに、翼さんの部屋の玄関の前に着いていた…。


私は翼さんから合鍵をもらっていたので、優越感に浸っていた…。


摩耶は翼さんの部屋の鍵を持っていないと思っていたのだ…。


だがしかし、摩耶もどうやら部屋の鍵を持っているらしかった。


摩耶はホットパンツのポケットから、鍵を取り出し玄関の鍵を開けている…。


摩耶はごく当然のように、翼さんの部屋に入っていったのである…。




私もアパートの階段を登り、摩耶の後を追い、翼さんの部屋の玄関の前に立った…。


玄関のドアノブを回そうとすると、動かなかった…。


摩耶め、鍵閉めたな…。


でも、大丈夫!翼さんにもらった合鍵があるもんね…!


私は鍵穴に鍵を差し入れ、鍵を開けた…。


よし、開いた…!これで中に入れるぞ…!


なんか好きな人の部屋の合鍵借りて、部屋に入るのって最高に緊張する…。


緊張というか、胸がドキドキして、頭もクラクラしちゃう…。


玄関の扉開けてすぐに、翼さんの部屋の匂い…。


すなわち翼さんのいい匂いが充満してて、そこは幸せ空間だった…。


普通、人の家の玄関の匂いって、へんな匂いのことが多いけれど…。


翼さんの部屋の玄関の先は、シトラスのいい香りでいっぱいだった…。


ただひたすらいい香りのする幸せ空間…。


私は深呼吸して、その匂いを鼻腔の奥に入れる…。


はぁぁ〜、幸せ〜。




しかし、私のそんな姿を不審な目で見てる人物がいたのである…。


「なんでノアも、翼さんの部屋にいるっすか…?」


摩耶である…。摩耶は最初キョトンとした顔でこちらを見ている…。


「なんでノアも翼姉さんの部屋の鍵を持っているっすか…!?」


摩耶は心底びっくりした顔で、私に聞いてくる…。


「ふふふ、言ってなかったっけ…?私昨日から翼さんの部屋に厄介になっているの…」


「それで、翼さんから部屋の合鍵も借りてるのよ…」


私は見せびらかすように、合鍵を指の先につけてクルクル回した…。


摩耶は何やら悔しそうな顔をしている…。


私は少しは摩耶に対してマウント取れたような気がして、満足だった…。

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