三百八十三話 美貌

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。


『小悪魔の休憩所』と言うお店で…。

数時間?バイトしていた私…。

謎のマダムKという女性の紹介で。

今日から働くことになったのだ。

このお店は女の子が各自寛いでいて。

その様子をお客様が眺めて楽しむ。

そんなシステムのお店なのだ。

私もちょいギャル風制服に着替えて。

寛ごうと思ったのだけれど。

紆余曲折、色々あって…。

隣の眠子さんという女の子を…。

なでなで撫で回してしまうのであった。


何かチャイムのような不思議な…。

音楽が店内に流れて…。

他の女の子達が立ち上がり始めた。

私の膝枕で寝ていた女の子も…。

立ち上がって歩いていく…。

今日の仕事は終わりだと教えてくれた。

私も後をついて行って部屋を出る。

部屋の外ではマダムKが待っていた。

マダムKは今日のお給料をくれて…。

なんと一万円以上くれた…!?

そして、真門圭子という本名を教えてくれた。

なんと私がなでなでしてた女の子が…。

真門さんの娘さんだとも教えてくれる。

名前は眠子さんと言うことらしい…。

私は眠子さんのお母さんの前で…。

眠子さんの色んなところを…。

なでなでしまくっていたらしい。

私はなぜか恥ずかしくなってしまい…。

顔が赤くなってしまう…。


眠子さんたちは、衣装部屋に入っていく。

そうだ、来た時の私服に着替えないと…。

恥ずかしくてそのまま帰りそうになってしまった。

私も衣装部屋に入る…。

衣装部屋では数人の女の子が…。

着替えていた…。

みんなもう服を脱いでいて…。

下着姿の子が多かった…。

下着姿もすっごいかわいいし…。

女の子のいい匂いが充満していて…。

みんな色とりどりの下着をつけていて。

私は着替えの様子をじっと見てしまう。

よくよく考えたら…。

私の学校も女子校なので…。

体育の時間の着替えとか見てるわけだけど。


今日いる女の子はみんな美少女ばかりで。

もしかして、マダムKさんの目利きなのかな?

と思ってしまうのであった…。

マダムK、真門圭子さんと会った時も…。

私の姿を見て、すぐに採用されたし…。

自分で言うのもなんですけれど…。

私、結構見た目は美少女なのですよ…!

すみません、図に乗りました…。

しかも、胸はぺったんこだし…。

あははは、なんか情けなくなってきた…。

そんなことを考えながら…。

私も私服に着替えるのであった…。


やっと、『小悪魔の休憩所』を出て…。

帰路に着く私…。

秋葉原の夜の街並みは混んでいて…。

歩いている人にぶつからないように…。

気をつけて歩かなければならなかった…。

秋葉原の店舗のビルには今流行りの…。

電脳ゲームの看板がいっぱい飾ってある。

今の人は大抵、脳にマイクロチップを…。

埋め込んで、VR世界を楽しんでいる…。

脳内のチップで足りない場合は…。

最新スマホと連動して…。

リアルな電脳ゲーム世界を楽しめる…。

広大なネット世界の知識も共有できる。

だから、過去のような勉強も必要ない。

私はチップを埋めることが怖いので。

脳内チップは入っていない…。

だからずっと、学校でも落ちこぼれだった。

今流行りの電脳ゲームは…。

オーソドックスなファンタジー世界で。

いろんな職業のキャラになって冒険できる。

そんなゲームらしかった…。

そのゲームのキャラクターが…。

書いてあるイラストの大きな看板もあれば…。

立体映像でキャラが飛び出てくる看板も…。

最近では当たり前なのだろうけれど…。

初めて見た時は私はびっくりしてしまった。


道には客引きのアンドロイドのメイドが…。

いっぱい立ち並んで、嬌声をあげている…。

いわゆる、アニメ声というやつで…。

すっごい甘ったるいかわいい声を出している。

私も家出して秋葉原に来た時…。

機械仕掛けのアンドロイドの子に…。

街を案内してもらったなぁ…。

そんなことを思い出していた…。

それほど昔ではないけれど…。

この街に来て色々ありすぎて…。

すごい昔の出来事のような気がする…。

そのあと、とある喫茶店で働いて…。

世界で一番愛してる人と出会って…。

やめよう…。過去を振り返っても…。

悲しくなるだけだ…。時は巻き戻せない。

私は首を横に振った…。


道を歩く人は大抵、VR世界を見ている。

よくそれで普通に歩いてるなと感心する。

そして、後の半分は機械仕掛けの人形だ…。

秋葉原はまさに電脳世界なのかもしれない。

そして、私は異質なアナログ人間であった。

私はふと店舗のガラス窓を見る…。

そこには黒い髪と紅い瞳をした…。

ものすごい綺麗な美少女が映っている。

私のことをアンドロイドと勘違いする…。

そんな人もいるぐらいだ…。

そう、こんな美貌を持つ美少女…。

これが私なのであった…。

私はこの美貌だけを武器にして…。

この世界を渡り歩いていこう…。

この時はそう思っていたのである…。

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