三百五十九話 優しいお姉さん

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。


冬休みのある日…。

外は冷たい風が吹いているというのに…。

グレモリーはすぐにサタン様に会いましょう!と言う。

私は寒いので、ずっと炬燵に入っていたい…。

でも、私は炬燵から無理やり出されてしまった…。

この寒い中、サタン様に会いに行くというのか…。

しかも、サタン様はすごい怒りっぽい性格のご様子。

七つの大罪でも、憤怒を司っているのです。

会うだけで、怒られそう…。

私はサタン様と会うのがとても憂鬱だった。

それでもグレモリーに連れられて、家を出る私…。


家から出たあと、歩きながら…。

私はグレモリーにサタン様がどこにいるかを聞いてみた。

グレモリーの話によると、サタン様は新宿にいるという…。

しかも、新宿都庁で働いていて…。

都知事を目指していたけれど、なれなくて…。

都知事の元で、秘書をやっているという…。

現都知事の女性の御威光がまだ十分強いそうだ。

ちなみに秘書の正式名称は、政務担当特別秘書という名称。

本来都知事の指名がなければなれないそうだが…。

サタン様は魔力を使い、秘書になれたという。


私とグレモリーは山手線に乗って新宿を目指す…。

山手線内は結構混んでいて…。

私は以前みたいに痴漢とか出てこないか不安だった。

痴漢に会ったり、変な勧誘受けたり…。

電車で会った人にはあまりいい思い出がない…。

そんなことを考えていると…。

グレモリーが身体に寄りかかっていいと言う…。

私たちは立って電車に乗っていたので…。

私が立っていて疲れたと勘違いしたのだろうか?

私はグレモリーに甘えさせてもらって…。

グレモリーの身体に寄りかかることにした…。

そうすると、グレモリーは私を抱き寄せて…。

もぎゅっと、私の顔に胸の谷間を押し付けた…。

途端に私の鼻腔にグレモリーの甘い匂いが…。

いっぱい広がって、私は咽せそうになってしまう。


私は頭がクラクラしてきて…。

グレモリーの身体の匂いは…。

すっごい甘くて…。砂糖を焦がしたような匂い…。

決して嫌な匂いじゃないんだけど…。

さすが女悪魔。日本人離れした匂いなのだ…。

そんなこと考えていると…。

私のカモシカのように細い脚を…。

誰か撫でているのであった…。

やっぱり痴漢がいる…!

私の脚をサワサワする不埒な指先…。

その指先は私の太ももから…。

何とお尻まで伸びてきて…。

私の下着の中まで、指先が入ってきた。

下着の中の生のお尻も撫で回す指先…。

私がグレモリーに助けを乞おうと思った矢先。

「ご主人様のお尻は小ぶりでかわいいですね!」

とグレモリーに言われた…。

何のことはないお尻を撫でていたのはグレモリーだった。


そんな何とも言えないどっと疲れるアクシデントがあって。

それでも、無事?私たちは新宿駅に着いた…。

しかし、新宿駅はすごい迷いやすい魔境…。

新宿駅の構内はかなり複雑な構造で…。

迷う人が多数いるという…。

駅から出られない。遭難者が出るらしい…。

とかそんなバカな…。と言う噂も多数聞くらしい…。

世界一の乗降客数を誇る新宿駅…。

ギネスブックにも載っているらしい…。

1日で360万人以上の乗降客数がいるらしい…。

電車が着いたホームからして結構な人混みだった。


新宿駅から西口に出れば都庁へ行けるらしい…。

私は必死にグレモリーの後に着いて行ったのだけれど。

グレモリーの脚が結構速くて…。

ついに私はグレモリーとはぐれてしまったのであった。

私は慣れない新宿駅で…。

しかも遭難者も出ると言う魔境で…。

迷子になってしまったので…。

途方に暮れて、涙が出てきてしまった…。

周りは忙しそうに早歩きで立ち去る通行人ばかり。

私のことなんて誰も気にしてないようであった。

これが噂に聞いた東京砂漠か…。

私は悲しくて、しゃがみ込んでもっと泣き出してしまう。

早くグレモリー助けに来て…。


何分泣いていたかはわからない…。

涙も枯れ果てようとしていたその時…。

「あなた、大丈夫?泣いているの?」

と心配そうに話しかけてくれた人がいた。

私は、ハッとして顔を上げると…。

キラキラと輝く銀髪で…。

その髪を後ろに纏めて、髪留めで止めた…。

ものすごい綺麗な美人なお姉さんがいた…。

切長な瞳に銀の長い睫毛…。

鼻筋はシュッとまっすぐ伸びていて…。

薄い唇に大人なルージュが乗っていた。

切長な瞳の上には銀縁の眼鏡をしている…。

知的ですごい綺麗なお姉さん…。


私は新宿駅で、迷子になってしまった…。

と涙を流しながら答えた…。

泣いていたら恥ずかしいし…。

何か安心してしまったので…。

悲しみとは違う涙が流れてきてしまったのだ。

そして、都庁に行きたいのです…。

とか細い声で、言ってみるのだった。

するとそのお姉さんは…。

「私も都庁勤務なの。一緒に行こう?」

と手を差し伸べてくれるのであった…。

あぁ、優しいお姉さんがいてよかった…。

私はそのお姉さんの手を取って…。

やっと立ち上がることができたのであった。

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