問題の原因が見つからないことが問題

早口言葉みたいになっとるやないか。どうも、神谷です。

なんか教員の娘息子って、家族関係で問題の根本原因が見つかることが多いらしいですが、神谷さん原因が見当たらないって言われたよ……
いや、原因が家族にあってほしかったわけではないんだけれども、でもないはないで、解決ができないのでちょっと困るっちゃ困る。
ちなみに、自己肯定とか他者肯定に関しても問題が見つからず、なのに「禁止令」の診断で「子どもであるな」の命令がみょーに高く、原因がないのに問題があるもんで、カウンセラーの先生が本気で困っていたのが今回のハイライト。

天才佐々君とスパークの話。

天才は紙一重、という言葉がある。
これは、天才と呼ばれる人物は、その才能故に何かを犠牲にしていることも多く、馬鹿、あるいは狂人と紙一重なのだ、という格言である。

確かに言われてみればそうかもしれない、と思うことはよくある。

友人に、佐々君、という男の子がいた。
まず、佐々君はとても勉強が出来た。どの教科もまんべんなく、だ。
これは高校生卒業頃まで変わらなかった(その後については、佐々君との交流が途絶えてしまったのでわからない)

また、佐々君には音楽の才能があった。
ピアノもとてもうまく、歌も上手かった。
合唱コンクールで伴奏をしていたこともあるし、それに対して「いや、佐々が歌ってくれないと困るー佐々が二人ほしいー」という声も聞いたことがある。
私はそのつながりで佐々君と仲良くなったような記憶がある。

また、佐々君は絵も得意だった。
佐々君の絵がコンクールで飾られているのを何度か見たことがある。

そして佐々君、最終的にはイケメンに育つ。
小学生の頃は普通だった佐々君だったが、高校あたりでグッとかっこよくなり彼の持つ才能も相まって大変モテていた。

下手すれば少女漫画のヒーローでもここまでは持っていない、と思わせる才能の塊、佐々君。そんな彼の奇行を、私は一度だけ目撃したことがある。

あれは小学校の理科の時間だった。
実験をする日だったので、我々は理科室で、器具を準備したり、ふざける男子をけんけんと牽制したりしながら、おのおのに授業の時間を過ごしていた。
私はというと、うちの班は早めに実験のメイン箇所が終わってしまい、私はぼやっと、斜め前の机を眺めていた。たまたま、佐々君の班だった。

実験にはピンセットが使われており、佐々君がそれを持っていた。

もし、同じ事をしたのがお調子者のおバカ男子だったとしたら。
私は大方二十年も前のことをこんな風に覚えてはいなかっただろう。

佐々君の手に握られたピンセット。彼はそれをしげしげと眺めていた。
あの瞬間、なんだか全てがスローモーションに見えた。

彼はそのピンセットを、理科室の机に、実験器具を使うために備え付けられていたコンセントの穴に、おもむろに差し込んだ。

コンセントの穴は見事に火花を吹き、パーン、という間抜けな音が理科室に響いた。
その時佐々君がどんな顔をしていたか、私は覚えていない。
あの佐々君が、賢い佐々君が、まさか金属製のものをコンセントに突っ込むなんて!

それよりさらに前の事になるが、うちの従姉妹がコンセントの穴にマンドリンの弦(注:ギターの親戚みたいな楽器。つまり弦は金属)を突っ込んで手のひらをやけど、病院沙汰になったことがあった。
私はその経験から、コンセントに金属を突っ込めばどうなるか、を知っていた。

マンドリンの弦ほど通電性がよくなかったのか、佐々君がすぐに手を離したのか、佐々君には特に被害がなく、実際私は、その時のピンセットがどうなったか覚えていない。
ただ、佐々君はその後、担任に死ぬほど叱られていた。

佐々君が死ぬほど叱られているのを見たのは、あれが最初で最後である。

頭がよく、才能があり、その上いい人だった佐々君。
彼が何故、コンセントにピンセットを入れる奇行に走ったのか、私は未だに解らない。

ちなみに、佐々君とは一瞬だけいい雰囲気になったことがあるが、なっただけだった。
そして私、佐々君ちの猫には死ぬほど嫌われていた。

その後、私が片思いしていたはやて君が、技術の時間中にほぼ同じ事(釘をコンセントに突っ込んでスパーク、技術の岩みたいな先生に死ぬほど叱られていた)をするのは、それから三年ほど後の話となる。

何故だ、お前たち。そんなもん火花散るに決まってるだろう、と私は未だに思っている。

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