原爆投下責任「棚上げ」発言その後:2023年9月22日広島市議会一般質問

昨日、9月21日の広島市議会9月議会において、今年6月に締結された広島の平和記念公園とアメリカ・真珠湾の「パールハーバー国立記念公園」との間の姉妹公園協定に関する一般質問に対し、「(原爆投下)責任に係る議論は棚上げ」との内容の広島市担当局長からの答弁がありました。

今日9月22日の一般質問においても、この件に触れる場面があったので、その部分のみテキストにしました。(誤字脱字はご指摘ください)

本件は広島の平和行政の根幹に関わる部分なので、協定締結の当事者でもある市長ご自身の答弁がほしいところですが、前日に引き続き担当局長の答弁となりました。

門田佳子議員(中区/無党派クラブ):
まず最初に、パールハーバーとの姉妹公園協定締結についてです。今年6月29日に締結された、平和記念公園と米国ハワイ州ホノルルのパールハーバー国立記念公園の姉妹公園協定については、6月議会にて市長が経緯を説明しましたが、その後、市民から様々な受け止めがありました。

まず、協定締結について簡単にまとめます。2017年、ホノルル広島県人会が姉妹公園協定を広島市に打診。このときには断り、平和意識と機運の醸成を図りながら、時間をかけて検討していくと回答したということです。2023年、本年G7広島サミットの機会に、米国政府が広島市に打診し、今回はこの協定を受けたという経緯です。それに対して市長はこれまで、「和解の精神を重視した対応すべき時期に来ていると判断した」「日米の先人が平和を願って積み重ねてきた努力に報いるものになる」「『平和文化』を市民社会に根づかせる重要な一歩になると確信している」と述べてます。

パールハーバー国立記念公園は、真珠湾攻撃で沈没した戦艦アリゾナの残骸と記念館、戦艦ユタの記念碑などからなります。公園には軍事施設は含まれていないと担当課からも説明がありました。しかし、アリゾナ記念館から300mほどのところには、1991年の湾岸戦争まで現役だった戦艦ミズーリの記念館があります。ビジターセンター横には1944年に疎開児童を乗せた対馬丸を撃沈し、1484人が亡くなることになったボーフィン号が係留されています。日本の艦船を撃沈した数が誇らしげに表示されており、軍隊・武力を良きものとして展示しています。これら全てが一体となって、パールハーバーを形成しています。

広島市は今回の締結について、「戦争の始まりと終焉に関係する両公園の提携は、過去の悲しみを耐えて、憎しみを乗り越え、未来志向で平和と和解の架け橋の役割を果たす」としています。真珠湾が戦争の始まりで、その帰結が広島だとしたならば、原爆を落としたのは正しかったとされかねません。米国の原爆投下が終戦を早めたという言い分に、被爆地広島がお墨付きを与えたかのように見えないでしょうか? 事前に市民に周知されておらず、市民と被爆者を含めた多様な方たちとの議論の場を設けなかったこと、協定を結ぶに至った過程の十分な説明がなかったことなど、広島市民からは姉妹公園協定への戸惑い協定を疑問視する声が出ています。

被爆者の方々はどう思われているでしょうか? 広島市民が抱いてきた米国への憎しみ、葛藤、複雑な感情は軽いものではないと思います。今も謝罪を求める市民がいることは事実です

自治体や市民間の友好は大切です。広島市は公園があるホノルル市とは姉妹都市です。姉妹公園協定がなくても、公園間の交流はできます。こんにちまで被爆地広島は、国益とは違う人類的立場から、核抑止を否定し、核兵器のない安全保障を訴えてきました。住民の命を預かる自治体と、国益を追求する国家が、時に対立することがあるのは当然と考えます。

報道によりますと、パールハーバー記念公園の管理監督者らが、今年8月6日に合わせて来日し、平和記念式典にも参加されました。市長と面会した際には、12月7日、真珠湾攻撃の日に米国で行われるセレモニーに市長に出席してほしいと打診したということですが、私は広島市民の複雑な感情を考慮し、出席すべきではないと考えます。同じ理由で、姉妹公園協定をモニュメントとして広島平和公園内に設置したり、資料館内に協定書を展示するといったことも避けるべきと考えます。

今後についてです。もう協定を結んでしまったのだから仕方ないということはありません。協定が一体どんな意味を持ち、協定を通じて本当に何をしたいのか、市が市民に説明していくことが重要です。そこでお尋ねします。今現在、協定を結んだものの、関わる交流活動の予算確保は2024年度からとなり、これから調整していくものと思います。広島市民に納得がいく説明を広く行うべきと考えますが、どのように実施されますか。また、姉妹公園協定は、署名から5年間有効満了日90日前までに終了通知がなければまた5年延長という取り決めです。5年後の2028年の前に、それまでの活動等にまとめるなりして広く公開し、市民に評価していただく。意見聴取を行う。そして、今後、姉妹公園協定を継続するのかしないのか、決定することを提案いたします。市のお考えを聞かせてください。

市民局長:
パールハーバー国立記念公園と姉妹公園店協定につきまして2点のご質問にお答えします。まず姉妹公園協定書に関わる交流活動の予定や予算確保は2024年度からとなり、米国側と交流内容調整していくものと思う。協定を通じて何をしたいのか、広島市民に納得がいく説明を広く行うべきと考えるかどうかについてです。

姉妹公園協定に基づく交流事業につきましては現在、関係課と検討を行うとともに、市民レベルであるハーバーに関連した平和学習や国際交流事業を行っている団体などの関係者から個別に意見をお聞きしているところです。

今後来年度の事業化に向けまして、両国の次世代を担う若者を中心とする交流などの未来志向の取り組みを中心に、パールハーバー国立国立記念公園の関係者と協議調整を進めていくこととしており、議会において予算が承認されれば本市ホームページへの掲載などを通じて、適宜市民の皆様に情報提供を行ってまいります。

最後に、5年後の2028年の前にその間に姉妹公園としての活動についてまとめ、広く公開した上で市民に評価してもらうための意見聴取を行い、今後、姉妹公園協定を継続するしないを決定してはどうかについてです。今後両公園間で実施する交流事業につきましては市民の皆様にもその意義などを知っていただけるよう適宜ホームページなどを通じて市民に公表したいと考えています。

本市としましては、この協定が平和と和解の架け橋としての役割を果たすことをめざし、まずは5年後の更新に向けて未来志向に達し、和解の精神を具現化した交流の実績を積み重ね、平和文化を市民社会に根づかせていきたいと考えています。

門田議員:
ありがとうございます。まず、パールハーバーとの姉妹公園協定についてです。交流活動の検討されているということでした。その間にもですね、今からでも市民に、この協定締結の経緯ですとか意図ですとか、納得がいく説明をすべきと私考えております。

昨日の一般質問へのご答弁で、この姉妹公園協定は、原爆投下に関わる米国の責任に係る議論は、現時点では棚上げにし、まずは核兵器の使用を二度と繰り返してはならないという市民社会における機運の醸成を図っていくために締結したものですとおっしゃっていました。既に新聞等のメディアでも取り上げられてます。この原爆投下に関わる米国の責任に関わる議論は、現時点では棚上げというのはどういう意味なのでしょうか? 

市民局長:
パールハーバー国立記念公園との姉妹公園協定につきまして昨日の答弁で私の方から「棚上げをする」というご答弁をしまして、その趣旨についてどうかということですが、昨日の本会議で私の答弁の中で「棚上げ」と申しましたのは和解の精神を説明するために用いたもので、さらに姉妹公園協定がですね、アメリカ国家のの責任を不問・免罪にするためのものではないということを理解してもらうために用いたものです。

すなわち、「棚上げ」という言葉は、一般的には問題の解決処理そのものを放棄するというものではなく、あくまで事情に応じて、一時的に保留すると、そういうものだと思います。今回の締結の判断につきましては、米国の原爆投下の責任に係る議論があるということは踏まえつつ、現下の国際情勢、これを考慮するならば、その解決を待つのではなく、核兵器の使用を二度と繰り返してはならないという機運を市民社会に醸成するための未来志向に立った対応を逃がさないようにすることこそが急がれると考え、こんな思いを他の誰にもさせてはならないと世界に訴えてきた被爆者の寛容と寛容と和解の精神に沿うものであると考えたからでございます。

門田議員:
ありがとうございます。姉妹公園協定について一つ申し述べてさせていただきます。今回、6月議会のスケジュールの忙しい間を縫うように、慌ただしく協定の締結が行われました。そのため余計に市民の間にまず戸惑い、驚きはとても大きかったと思うんですね。今ご答弁にありましたように一つ一つの言葉、とても重いものになると思いますので、今後も市民の方への早め早めの説明、あまり驚かせたりと惑わせたりということがないようどうか要望いたします。


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