見出し画像

映画「ELLE」

ポール・ヴァーホーベンが好きで見た。

Amazonプライムの紹介が"暴行をうけた女性が過去のいまわしい経験から警察に頼らず犯人と対峙していくのだが、しだいに彼女自身の驚きの正体があきらかに…"という風なふれこみだった。

で、そう思って見始めたけれど、映画のキモはそこじゃなかった。

主人公ミシェルが友人の夫と寝たことを、こともなげに当の彼女に言うシークエンスがある。そこでわたしは一冊の漫画を思い出した。

沖田✖️華の『毎日やらかしてます、アスペルガーで、漫画家で』の一節と重なるのだ。
同著者の風俗嬢時代の経験談も含まれる『こんなアホでも幸せになりたい』も、作品内のピースとハマる気がする。

だから何だ?というと、ミシェルはしばしばひとが傷つく言動をするが、彼女には悪意が無いのだということだ。サイコパスでもない。彼女は息子が、血の繋がらない赤ん坊に執着する理由を自ら理解している。

そのほか自分の知っている作品で近いのは村田沙耶香の『コンビニ人間』かな。
その切り口で見ると「フツーじゃないヒト」がともかく真っ向勝負で人生に向き合っていく映画だ。だから清々しさを感じられるのだと思う。

それをヴァーホーベンが撮り、絶妙奇妙に意味がズレたり真実がシンクロして、こんなにスリリングでエロティックで爽快な作品になったのだ。

世間的な好奇と蔑みの目にさらされてきたミシェルが、他者にも自己にもまっすぐに向き合って立っている姿に胸がすく。

しっかりと立っている女たちのあいだで、フラフラと揺れ動く男たちの姿がある。女に慈しまれたり、突き飛ばされたりして、最後までいいところがない。でも憎みきれない風にも描かれていて共感する。

「フェミニズム」のような単純な一言で覆いきれない。
自由でありつつ根っこでは背負ったものを全うする真摯さを感じて、わたしもミシェルに惚れてしまいそうになった。

アウトローでありつつ、まっとうさがどこかに潜むヒロイン。『ショーガール』でヴァーホーベン作品にハマったファンとしては、彼が描いているモノが変わっていないのが嬉しかった。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?