【プロローグ】「それ」に会ったことによって自分の組成が変わってしまう。人生が変わってしまう。そんな出会いの記録。
自分の欠片を探す旅、それが人生かもしれない。
正気を保つのに役に立つこと
首都圏を捨て道北に移住してきて一年になります。
掛けていた年金保険を担保にお金を借りての移住でした。大きく人生が動いて生活を整えるので精いっぱいの一年がすぎると、ちょっとした凪がやってきました。
手ごたえがなくてどこか平坦な日々。
生きている実感が薄れたんですね。まるで、大海に出たものの風もなく潮も見えずなすすべもない凪の船のようでした。
風待ち・潮待ちしているときは、焦って無駄なことをしがちです。
先日も、破格の家があるんだけど、という声掛けに、「所有」という概念から離れて生きようとしていたはずの私は、恥ずかしながら色めき立ってしまいました。
ふ~。
なんとか自分を取り戻して、「所有」は「不自由」の始まりであると思い直したものの、今度は自分の死後のことが気がかりになってしまうという罠にはまってしまいました。
連れ合いもいない。子供もいない。そして、親族はみな千葉県にいる、というこの状況。これは、私に何かあったら、親族たちに足労願わなければならないということであります。
私に有り余る金さえあれば何の心配もない案件なんでしょうが・・・。
生きるのにだけでなく死ぬことにすら金がかかるこの世。
久々に厭世観をたっぷり感じました。この世はなんて不自由なんだ!!
ああ、人生が面倒くさい。
生きる意味が見えない。
正気を失いそうになる・・・。
こんな時、役に立つのは過去を振り返ることです。印象的な「事件」をひとつの点として、その点と点を並べて線で結んでゆくと、自分の人生を貫く主題が見えてきます。主題がみえてくれば人生は面倒くさくなくなります。
なぜなら、主題があるということは意味があるということだから。
その「事件」のひとつが、本との出会いです。
振り返ると、人との出会い同様、本との出会いが私を正気に戻してくれていたのです。
大洪水が起きて世界が終わればいいと思っていた
不思議と言えば不思議、当然と言えば当然でありますが、世界が終わればいいと思っていたのは、原作付きのまんがを描いて月に40万円ほど稼いでいた時のことでした。「まんが家として成功していた時」と言えばいいんですかね。
そのときも、私は人生の意味を見失いかけていました。
ひっりなしにタバコを吸い、寝ている時間以外は仕事しているという状況で、稼いだ原稿料は右から左へアシスタント料などの支払いに消えてゆきました。自暴自棄的に不本意な人間関係にも身を投じていました。
夢を実現したのになぜか幸せでない。寛ぐことができない。
未来は暗かったんです。本当に。それを直視するの怖さに刹那的な快楽で紛らわせようとするのですが、それもどうかすると成功していませんでした。
何かが間違っている。
そんな時にであった本がありました。
「神との対話」ニール・ドナルド・ウォルシュ著。
奥付には1997年とあります。
「私は今あなたに語り掛けている」
本に名指しされるという体験をされたことがありますか?
私は、この時、まさにその体験をしたのです。これは、私に向けたメッセージである。その時、私にはそう思えた。
そこには、いままで私が知りたかったことが書かれてました。
「夢を叶えたはずなのに、なぜ私は不幸なのか?」
それは、私が人生を諦めていたからなのでした。知らず知らずのうちに、夢にしがみつくことで、まんがを描く以外の自分の可能性を殺していたわけです。自分を殺していた。それで、幸せになれるはずはないんです。
この現実を作り出しているのは自分自身の意識である。それを、信じるのか信じないのか。認めるのか認めないか。「神との対話」は私に選択を迫りました。認めることは当初とても無理なようにも感じました。なぜなら、不適当であるかもしれなくてもいままで積み上げてきたものをすべて捨てることになるからです。足場を失うことの恐怖に私は立ちすくんでいました。
でも、いままでの意識のままでは、人生はいままでのままなのです。
私は決断しました。
喫煙習慣をやめることは、「生きる」という宣言になりました。
不本意な関係を終わらせることは、「自分を愛する」という宣言になりました。
変化はゆっくり訪れました。
気が付くと、いつのまにか「世界が終わればいい」とは思わなくなっていました。この世界で私には何かができる。何かはわからないけど。そう思えるようになってきました。
だから語ろう。出会いの物語を。
本との出会いや人との出会いによって得られた真実たち。私は、それが本来の自分の欠片との再会のようないものなのではないかと思えてなりません。
自分の欠片を探し集める旅。これが人生なのではないかと。
ですから、これからここで語られるシリーズは、本の内容の紹介ではありませんし、読むべきとか読んだ方がいいとかそういう類の推薦でもありません。時系列無視。ジャンルも無視。
「これは私に語り掛けている」と思った本たちと私の物語をここで書いていこうと思います。