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この世界を去ったでかちゃん③<5/24のでかちゃん>

Jさんがご神木ふもとに到着したときのでかちゃんの様子が、あまりにも印象的だった。

鳴く。
みたことないぐらい、鳴く。
特にここしばらくの間、でかちゃんが声を出して鳴くことがほとんどなかったので、その様子を見て驚いた。

泣く。
だったのかもしれないね。
「Jさん、待ってたんだよ。来てくれてでかちゃんうれしいよ」
って。
そう言っていたんだね。最後の力を振り絞って。

Jさんはバイオレゾナンスの機器をわざわざ持参してくれていた。それを見たでかちゃん、まるで「早くやってよ、Jさん」と言わんばかりに、自らシート(その上でトリートメントする)の上に乗り、どさっと横たわった。
でかちゃんは、ちゃんと知っていたんだよね。Jさんのところに行くと、いつも気分よくなれたことを。Jさんのところに行くと、なんだか気持ちよくなれたことを。知っていて、覚えていたんだね、でかちゃん。

Jさんはひとしきり、バッチフラワーの波動を流してくれた。でかちゃんは静かに横たわっていた。

森の中は変わらず、風と光と声と静けさに満ちていた。
ご神木のすぐ目の前に大きな枯木。
せわしなく動き回る虫たち。
遠くに聞こえる沢の水の流れ。
そして、でかちゃんの息づかい。
今、確かに生きている証。
わたしもJさんもそしてでかちゃんも、確かにこの世界の一部なんだ。目に見えていることも見えていないことも、全てでこの世界なんだ。

わたしはたまらなくなって、振り返ってご神木を見上げたら
「大丈夫。任せて」
木の神さまがそう言いながら、キラリと微笑んだように感じた。

1時間半くらいご神木の森で過ごした後、Jさんと一緒にうちに向かうために、でかちゃんを再び抱えて歩き始めた。
「またこようね」

おうちに着いてでかちゃんをお布団の上に横たわらせて、汚れてしまっているでかちゃんのお尻を拭いた。それから、Jさんと少しお話をした。Jさんは、きっとわたしがごはんを食べていないだろうと予測して、タケノコごはんのおむすびを作ってきてくれていた。ありがたい…。ありがたい…。
「じゃあ、そろそろ行くね」
Jさんは、でかちゃんにご挨拶をして帰路につこうとした。玄関先で堪えきれず、わたしはJさんに抱きついて泣きじゃくった。
「Jさん、本当にありがとう。今日だけじゃなくて。今までこれまで全部全部ありがとう」
Jさんと二人、しばし涙を流し合った。

玄関でJさんとさよならをして、でかちゃんが横たわる部屋に戻った。もう、でかちゃんを撫でながら涙しか出てこない。
「でかちゃん、ありがとう」
「でかちゃん、だいすき」
「でかちゃん、かわいい」
「でかちゃん、ごめんね」

そして加えてわたしはこう言った。
「M(夫)もW(息子)も待たなくて大丈夫だからね」

Jさんがうちを後にして10分も経たないぐらいか。でかちゃんの呼吸が荒くなってきた。
「いよいよだ」
わたしはグッと腹の底に力を込めた。そして、でかちゃんを抱きかかえた。

でかちゃんは「ハッ、ハッ」と吐き出すような息を5回して、そのかわいらしい眼を見開いてわたしの視線をしっかりと捉えて、そのままわたしの腕の中で、呼吸することを止めた。

でかちゃん。
でかちゃん。
でかちゃん。
行かないで、って言いたいけど。
その言葉を頑張って「ありがとう」に変換するよ。おかーさんは。

でかちゃんを抱きしめたまま、わたしは気が済むまで大きな声で精一杯心ゆくまで、泣いた。

でかちゃんはおかーさんと「二人きり」のときをちゃんと選んでくれたんだね。誰かがいると、おかーさんはこんなに目一杯泣くことができないことを知ってるからね。

優しいね。でかちゃん。
かわいいね。でかちゃん。

ありがとう。でかちゃん。

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