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ボンボニエールより、切れっ端の方がいい
港区立郷土歴史館で『ある図案画家の仕事 -宮中の染織デザイン-』展。
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ある図案家とは、中山冝一(1884-1970)。
富山県立工芸学校図案絵画科第一期生、卒業後図案科として活動。高島屋から委嘱を受けて、宮中の室内装飾、歴代皇后衣装の図案など染織品のデザインを手掛けた。
その実物や、図案帖『国華』が見られる展示。
(写真は全てフライヤーより)
まず中山冝一という人物を今回初めて知った。
「図案家」って言葉がいいですね。
そして『ある図案家の仕事』という、中山の名を表に一切出さないそっけない展覧会タイトルがいい。
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御殿とかお城のゴージャスな、どんじゃらした装飾品には正直言って私は全く興味はない。
ベルサイユ宮殿や迎賓館も、見学しても「贅の限りを尽くしてますな」という感想のみ。
でも、本展のフライヤーデザインがとても良くて、さらに紺地に配置された月見草と鵜籠の連続柄になぜか心惹かれるものがあり、見に出かけた。
「教科書で見たアレ」の本物に触れられる展覧会もいいけれど、初めて見る物や初めて知る言葉、事実に出会えるのも楽しい。
本展で初めてその言葉を知り、いいなと思ったのは「お好みぎれ」なる物。漢字表記は「お好み裂」。
皇后が新年の勅題に因んだり自分の好みの図柄で作らせたりした絹織物を、反物のままとか小物(巾着、ティッシュケースみたいなの、アルバム表紙など)に仕立てて下賜した、宮中の贈答品の一種だそう。
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慶事の折に皇室から下賜されるボンボニエールという小さなお菓子箱のことは知っていたが、他にもこんながあったのか。
「お好みぎれ」って響きは偉ぶってなくてかわいい。切れっ端感がつつましく、エコっぽくもある。
別に下賜なんてされなくていいけれど、貰うならボンボニエールよりこういう布きれの方が嵩張らなくてうれしいな。
フライヤーで見ていいなと思った鵜と籠の図柄、貞明皇后が好きだったそう。ボンボニエールにまでこのモチーフが使われている。
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お好み裂も納得いくまで中山に指図したらしい。その時のスケッチが残っていて、中山があーでもないこーでもないと悩んだプロセスがよくわかる。
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自然のモチーフをデザインに取り入れて芸術にする、一人の図案家とその仕事ぶりを知れてよかった。
ところで、ローブモンタントだかローブデコルテだかの皇室の女性の洋風礼装には、ずっと違和感を抱いていた。洋服なのに和風図柄の金銀モールが織り込まれたどっしりとカーテンみたいに重そうな生地。そういえばスカーレット・オハラもマリア先生もカーテンで服を仕立ててたな。映画では苦肉の策の再利用だったけど。
宮中では由緒正しい豪華生地。
明治期からずっとあの形式が変わらないのか、壁や家具の貼り地に使うような生地を無理やり洋服にしたみたいですごく野暮ったい。
でも、貞明皇后が作らせ圓通寺に奉納したという着物は色もデザインも思い切り斬新でかっこよかった。
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萌黄色の地一面に桜がのびのびと枝を広げている。裾のほんの少しの紫地には、スミレ、レンゲ、たんぽぽ、菜の花に、
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桶に糸切りハサミもある
遊び心満載で楽しい。
やっぱり心を躍らせ、人生を豊かにするデザインはいいな。
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