乙女心補給 - 森本美由紀の作品
ぼんやりしていると、いつの間にかどんどんおじさん、いやおじいさん化が進んでいる。
年寄りになるとおじいさんなんだかおばあさんなんだか、パッと見わからなくなる性別が曖昧な感じは嫌いではないが。
今のポール・マッカートニーのおばあちゃんぽい雰囲気はなかなかいい。
おじいさん寄りになりつつある私だが、たまには乙女心も補給しないとね。
ということで、弥生美術館の『伝説のファッション・イラストレーター 森本美由紀』展へ。
弥生美術館では8年前にも森本美由紀展をやっていたのは知らなかった。
その直後の陸奥A子とふろく展には行ったのだが。
この美術館、すごくいい展示をするのでやはりマメにチェックしなくては。
森本美由紀の真骨頂は、墨をたっぷり含ませた筆ですっきりと描かれたモノクロのファッション画。
私が子どもの頃、婦人雑誌や洋裁雑誌のファッションページは既に写真だったが、50年代から60年代初期まではファッション画が多かったのでは。
昔のファッション誌とかシアーズカタログなどの絵、ノスタルジックで写真よりおしゃれだったりする。
森本美由紀はセツ・モードセミナーで、徹底的にモデル・クロッキーの研鑽を積み、プロになって地位を確立して以降も行っていた。
セツの主催者で日本のファッションイラストの草分けである長沢節の「"愛弟子"であり"直系"」というセツの元講師、星信郎氏の言葉、森本美由紀の迷いの無いスタイリッシュな描線を見ると確かにそうだなあと深く頷ける。
この展覧会、とにかく点数のボリュームがすごい。
モノクロのファッション画だけでなく、雑誌の表紙、広告、デパートのキャンペーンとのタイアップ、書籍デザイン、映画ポスター等のカラフルな絵もたくさん。
アーティスト達の作品にも
スタイリッシュな絵だけでなく、こんなかわいい製作物や、
内藤ルネのお人形を森本美由紀が中心となってグラフィックデザイナー達と復元制作した展示会も。
懐かしい雑誌と再会。『mc Sister』と『Olive』。
『mc Sister』は、中学の頃から愛読していた。『Olive』創刊時は「オリーブ少女」とは言えない大学生だったけれど、それでも時々読んでいた。
『mc Sister』も、森本美由紀のタマちゃんのページが読みたくて、いい大人になってからも手にしていたなー。
一つ一つじっくり見ながら、本当にセンスがよくて才能に溢れた人だったのだなと改めて感じ入った。
人気イラストレーターの杉浦さやかの、森本美由紀の絵を集めた個人的スクラップ・ブックも展示されていた。後進に与えた影響もそうとうなものだろう。
10年前に54歳という若さで亡くなったが、存命なら、今どんな素敵な作品を生み出していたのだろうと思う。
かわいいもの、おしゃれできれいなものを愛でる気持ちはおじさん、おじいさんたちにもあるのだから、「乙女心」で限定するのはジェンダー的にアウトだな。
会場では老若男女、みんな楽しそうに見ていた。
弥生美術館、いい展示をありがとう!
森本美由紀が好きだったという、仲世朝子の展覧会も、いつかやってくれたらうれしい。