【2019年11月6日(水)天満天神繁昌亭 昼席】

 本日は、花の平成6年組 噺家生活25周年ウィークにお邪魔いたしました。
芸歴25周年の同期の皆さまが交代でご出演されます。
繁昌亭、最近リニューアルして、心なしかキレイになってはります。
狭さは変わらんけど……カフェなくなったしちょっと広くなったかな……。(言うな)
ロビーには米紫師宛に美しい胡蝶蘭が。
それもなんと紫。米紫師のお客さま、粋でシャレオツであります。素晴らしい。
ぜひこの珍しい胡蝶蘭も目当てに寄席へ訪れていただきたい。

本日は私事で誠に恐縮でありますが、夜に推しドルのライブに参戦予定ゆえ、思いっきりヲタ格好で繁昌亭へ。なんか場違いで、すみません。
そんなことを気にしなくて良いのが大阪の寄席の素晴らしいところ…!(サンケイホールはちと緊張しますが)
三若氏もマクラで仰ってました。
「東京の方は寄席へのドレスコード気にしますけど…」て。(笑)
大阪のドレスコード的にはレオパード(いわゆるヒョウ柄)でおkです。

本日は吉弥師目当てのお客様と初めてのお客様が多かったように思います。
お着物マダム軍団は、吉弥師目当てかな?
皆さま、華やかでした。

ではでは、レポへ。

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開口一番……桂 文路郎【つる】
 本日初見。文枝師匠のお弟子さんです。
声量が少々不足気味。
ただ、初見ですのでこんな持ち味の人かもしれない。と、気持ちをフラットに。
 開口一番は10分くらいしか持ち時間がないのであんまりお喋りできないのはよくわかるのですが……。“つる”の大切なところをカットしすぎて、微妙にお客さん置いてけぼり。
そもそもの噺の筋がわかりにくくなっている。甚平さんにつるの因縁を聞くまでをハショり過ぎて、「えっ?この人だれ?急になに?ホラ吹き達人?」的な感じになってて、《本当は物知りオジサンだけど、なぜ鶴と呼ばれるようになったかは知らなくて、でも物知りオジサンの意地として知らないと答えるわけにはいかんからつい誤魔化しちゃいました。テヘッ☆》感が全く見えない。このポイントは要改良かと。
 そしてなんと、大工の徳さんがカンナを登場冒頭の0.5回しかかけていないのだ。
いやいや、あかんがな。
“仕事で忙しいのにアホが邪魔しに来てる”という様子を見せとかんと。
その所作があって初めて、2回目来たときに「今日は仕事さしよらへんな」というセリフが活きてくるのだから。これだと『どーせハナっから仕事してへんやないか!』とツッコみたいぐらいである。他、多数。
 先日、桂二豆さんの完璧なる【つる】を見てしまっただけに残念だが、初見なので文路郎さんのこれからに期待。
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二ツ目……桂 鯛蔵【ふぐ鍋】
 正面から見ると気づかないが、今回は2階席。前にも増して髪のてっぺん危険度がマシマシ状態の鯛蔵氏。アブラカラメヤサイマシマシ。みたいな。←どないやねん)ここはおとなしく見守る。

 いつもどことなく目がイッちゃってる鯛蔵氏の落語が好きだ。
【軽業講釈】は特にぶっ飛んでいて爽快なのだが、少し季節を先取りしたネタとなった。(繁昌亭ということも含まれているだろうが)こちらも冒頭は端折ったショートバージョン。
鯛蔵のふぐ鍋。文字で見ると一見シュールだが、氏の演じる旦さんには、愛とやさしさがある。
おこも さん(御薦 - 薦(こも)被りからきているそう) がふぐ鍋に味を占めておかわりをと再訪するシーンでは、従来は《「もう無いので帰ってもらえ」という主人をよそに、おこもさんが勝手に家の表へ回り込んで直談判をする。》パターンであるが、氏の旦さんはなんと、自分から勝手口へ出向くのだ。
当時の身分関係の厳しさがどれほどであったかは知れないが、少なくとも主人自ら下級民のために足を動かす…といったことはしないように思える。
この設定から、大橋さんの世帯が楽しく暮らせるよう日頃からなにかと融通をしてあげ、息子の就職の世話までしてくれる。そんな人のいい、心優しき旦那像がここで確立されることとなった。
ふぐ鍋はなかなか食べれないので、今日はたら鍋にしようかな。氏の食べ方も魅力的な、そんな一席。
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三ツ目……桂 文鹿【さわやかおみくじ製作所(新作/題名想定)】
 ええ感じに白銀に染まってまいりました。アウトローな師匠のご登場。←失礼)
もう10年ほど前から好きな方で、当時は繁昌亭では【子ほめ】をよくかけておられたが世界で一番面白いと思っていた。師は真面目であるが波乱万丈な方で、ネタを忘れて途中で変更したネタもうろ覚えで、お茶子さんを睨みながら高座を降りた目つきが忘れられない。←もう忘れたれよw)
 ナイスミドルになった師は、様々な新作落語(自分は“さわやかシリーズ”と呼んでいる)を生み出しているのだが、今回なんと25周年のための新作ご披露(ではなかろうか)。
題名の通り、おみくじを作成している会社の話なのだが、ネタの中に同期の噺家9名を全員盛り込んだ一作となっている。
師が同期を好きなのがわかるとともに、それぞれの性格がよく表れていて抱腹絶倒。
聴けたらその日はラッキーな気分でいること間違いなし。大吉を当てたときくらい嬉しい一席(笑)
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浪曲……菊池 まどか【あたたかい手】
 本席唯一の浪曲。桜柄のテーブルかけが衣装と合い、一層舞台を華やかに彩っている。
文鹿師のあとだったのも手伝ってか、砂漠にオアシス。とても目の保養となった。感謝。
浪曲には全く馴染みがないのでいつもわくわくする。ただ、同時に眠くなるのも事実。
今回は眠気襲ってこず。まどか氏の歌声や人物の演じ方に引き寄せられるのもあると思うがとにかく話の続きが気になった。
想像すればオチなど容易にわかるのに、なぜだろうか。
心温まるハートフルストーリーの【あたたかい手】は、前列のマダムたちは軒並みハンカチを頬にあてていた。「25周年記念のお祝いに…」と仰っていたが、めでたいことはめでたい話なのだがあまり”お祝い”といった雰囲気ではない。むしろ、
感動しちゃって泣いちゃって、号泣――!!!
となってしまったお客の心を、中入りを挟まずに次の演者へバトンタッチとは…。
ある意味乱暴とも言える、一席。
―――
中トリ……桂 米紫【厩火事】
 さて、号泣後のウルルンモードでバトンが渡された米紫師。改めて客席の空気をリセットすべく、マクラでじんわりアイスブレーク。
師はやはりすごい。どんどんお客さんを魅了し、心を鷲掴みにしていく。マダムたちがヘドバン(ヘッドバンキング)の勢いで首を縦に振って相槌を打っている。
今回はマダム層多めということで、【厩火事】だったのかな?隣にいる自身の旦那を小突きあっている組もチラホラ(笑)
師に女形をさせたら日本一なのではないだろうか。とてつもなくいじらしい、可愛い。
厩火事のお咲さんは、他の噺の”お咲さん”とは違い、かなりしおらしく、乙女。
でも内なるものには虎を秘めているので、やはりお咲さんはお咲さんである←どないやねんw)
この噺は、乙女心をよく描けている作品の一つだと思う。
万葉集にも、似た歌があるように、恋人のほんとの気持ちを探りたいのはいつの時代も同じだ。特に女性が年上の場合は、特に気になるのではないだろうか。師の演じ方で、胸が甘く締め付けられる。

キュンキュン♡を通り越して、なんかもう
ギュンギュン! **( ᐛ)**である。

萌え殺されるところであった。

また、「ちっちゃい うし」「岸和田のサル」というワードにいつもながら笑ってしまう。言い方がもうすでに可愛い。
「牛の小(ちぃ)さいのん」でもなく「小(ちぃ)さい牛」でもなく、「ちっちゃい」という関西弁になぜかとてつもなくときめきを感じる。師の言葉選びは、いつも心にカチッとハマるのだ。
ぜひご夫婦で、カップルで、シャイな彼氏をお持ちな方へ贈りたい、一席。
―――
四ツ目……桂 三若【宿題(新作/桂三枝作)】
 だいぶご無沙汰な三若氏。醤油とソースをかけ合わせたようなサーファーなお顔立ちなのは以前と変わらないが、文鹿氏同様、やはり年を重ねられたなぁと感じる。今は東京に拠点を移しご活躍中とのこと。
 品の良さげな話し方はマダムにガッツリ届いているようで、なんか、そのまま通信販売とかやったら売れそうな勢い(笑)

「そういえば三若さんは、まいちゃんとの離婚などなど、あぁ…そんなこともあったなぁ…」と走馬灯のように蘇ってくる←マクラ中にwゴメンナサイwww)
まさか【宿題】が聴けるとは。ありがとうございます。ちょっと声質が中尾隆聖さんっぽく感じてるのは、自分だけだろうか(笑)
ぜひ東京でも三若節を見せつけていただきたい。そんな一席。
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モタレ……桂 三金【寿限無の本場所】
 相変わらずの大柄なお身体である。聴けばなんと体重120kg/体脂肪率50%。身体の半分が脂、半分は優しさでできてるとのこと(笑) きっと頭痛には効かないと思う←そりゃバ●ァリンw)
三金師の”創作寿限無シリーズ”のうちの一作を初めて聴けたので幸せな気分♪以前、チラシで見た中に 桂 三金【寿限無、救急車よぶ】とあった。めちゃくちゃ面白そうなタイトルである。もう見たくて見たくて、隣のおじさんを売ってでも観に行きたかったのだが仕事のため断念。またの機会を待つ。
 三金師を初めて観たネタは【ダンシングドクター】であったが、噺せて笑いがとれて踊れるぽっちゃりさん。←そこはツッコまないで) 三金師の素晴らしいところは、高座以外の人柄にも表れている。
まず、自ら繁昌亭の表でお客様を迎える。25周年ウィークの記者会見日時を段取りしたのも師だと言われている。話しかけてもいつも明るく優しく対応してくださる師は、まさに金のごとく光り輝いている。←ここもツッコまないで)
ぜひこの寿限無シリーズは、ナマでご覧いただきたい。
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トリ……桂 吉弥【佐々木裁き】
 満を持してのご登場。客席が沸く。やはり吉弥師目当てのマダムたちであった。
相変わらずお忙しい模様。朝ドラ効果はすごい。人気を持続させる師もすごいが。
 マクラでは「おまたせしました。私で終わりですんでね。みなさんコロッケも買いに行かなあかんし」

…言うなーーーーっっ!!!!!!!!!! (((ฅ** ༎ຶ۝༎ຶ )))
ただでさえ並んでんのに!!!!!!
余計並ばなあかんやろが!!!!!**

初めてのおばちゃんらは席で「えっ?コロッケ?なに?」「あぁ!あの来る途中にあった商店街の。寄って帰ろか♪」とかヒソヒソゆーてるし!!!!!!
高座で噺家が発言する言葉は、TVと同じくらい影響力があると自覚していただきたい(●`ε´●)

 師の【佐々木裁き】は初めてであったが、「あれ?」と思う場所1点。四郎吉(しろきち)が13歳の設定なのだ。13歳ともなると、”ええとこ”の子ならば勉学に励み、貧しい家の子であれば働くということを考える年頃のような気がする。はたして13歳、今で言うところの中学1年生がやることがないからと幼口調で”お奉行ごっこ”をするだろうか? 音源を聞き返してみると故・枝雀師設定では13歳。他の噺家さんは”10にも満たない”と言っていた気がする。どうなのだろうか…。

そしてお奉行様、噛む。

噛むと”奉行ワールド”が崩れてしまうのがこの噺の脆いところ。一気に現実へ引き戻される。
もう戻れない…。オチ前なのに…惜しい…。
個人的には吉弥師の【ちはやふる】が好きなので、もう一度観に行きたい。
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寄席が終わるやいなや、ダッシュをかまし、お見送りの噺家さんたちとの挨拶もそこそこに中村屋に並ぶ。
セェエエエエエエーーーーッッッッフ!!!!!!
吉弥師効果であろうか、自分の後ろにはまたたく間に長蛇の列ができあがった。
ダッシュ!四駆郎のごとく走って正解であった。

コロッケとメンチカツを買って、ほくほくと次のライブ会場へ向かう。

秋風ができたてのコロッケを冷ますかのように、吹いていた。

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