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僕と先輩がホームレスだったころ

大学時代、先輩の卒論テーマに付き合って、公園で生活したことがある。

先輩は元々とても正義感の強い人で社会的弱者に救済の手を差し伸べたいと、学生特有の青臭さもあって一か月ほどホームレスと寝泊りを共にしたのだけど、しばらくすると目が座ってきて彼らの人間性に疑問を抱き、彼らは落ちるべきして落ちたやつらだ。と言うようになってしまった。

そんなことはないですよ。と言ったら「だったらお前も経験してみろ」という売り言葉に買い言葉で僕も寝袋抱えて生活することになったのだった。

一週間ほどで僕も彼らに嫌気がさして、ちょうどその時期に僕らが親しくしていた数人が行方不明になるということも重なり、2人でバックレて卒論のテーマも変えてしまった。

数年後、お互い社会人になって再会したらその時の話になった。しばらく学生時代の思い出をネタに盛り上がった後に「ところで最近職場に嫌な奴がいるんだ」と先輩が座った目で言った「またやることだけやってバックレたらいいんじゃないですか」と僕は答えた。

僕らがホームレスだったころしたように。

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