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雲母と雲丹

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言葉の欠片、詩篇、原形質、
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記事一覧

フキゲンちゃんとゴキゲンくん

フキゲンちゃんは いつもフキゲン

蟻の巣にジョウロで水をかけたら

その晩 溺れる夢を見た

フキゲンちゃんは ますますフキゲン

ゴキゲンくんは いつもゴキゲン

家の電気を止められても

ロウソクをつけて キャンプ気分

ゴキゲンくんは ますますゴキゲン

フキゲンちゃんは いつもフキゲン

ネット通販で頼んだブラウスが

似合わないと窓から投げ捨て

フキゲンちゃんは 懲りずに再注文

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ライバル店

1階は、居酒屋。

地階は、バル。

居酒屋はホッピー、キンミヤ酎ハイ、地酒。

バルはイタリアワイン、スプマンテ。

居酒屋は海鮮料理が売り。

三陸直送、ウニ、ホタテ、ホヤ。

店頭の水槽にはりつくアワビ。

バルは窯焼きピッツァが売り。

ほかには手打ちパスタ、

天井からぶら下がっている自家製生ハム。

1階からは、いつも演歌。

地階からは、いつもカンツォーネ、イタリアンロック。

居酒

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朝、電車に乗ったら

朝、電車に乗ったら、
弓を持った若者でごったがえ。
隣町の弓道場で
弓道の大会があるのか。
車内の天井がつかえそう、つかえそう。
こんな状態では、
いざ、敵が攻めて来ても弓を射ることはできない。

朝、電車に乗ろうとしたら、
つかえて、うまく乗れない。
入口から中まで学生服を着た
膨張した肉塊の壁。
隣隣町の相撲場で大会があるのか。
無理やり乗ったら、息苦しく、暑い。
次の電車を待つことにした。

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アルバイト

姉さんは、テレビで「中三地学 皆既日食」を見ていた。

僕のアルバイトは工場へ行って、肺活量測定器に似た機械で
空気をいっぱいタンクの中に送り込むことだ。
みんな20歳の誕生日を迎えると自然と辞めていく。

僕たちの空気の使い道は誰も知らない。
週三回、午前10時から12時までの2時間、
懸命に空気を送るだけで割といいお金になる。

あと3カ月で僕はこのアルバイトをリタイヤしなければならない。

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