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設立30周年!音楽ライター・JUN FUKUNAGAが「Ministry Of Sound」の魅力を語る!

J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

11月3日(水・祝)のオンエアでは、「設立30周年! イギリスのクラブシーンを支えたMinistry Of Sound」をテーマにお届け。ゲストは、音楽ライターのJUN FUKUNAGAさんが登場。

数々のDJがプレイしてきた名門クラブであり、イギリスのクラブシーンを支えたレコードレーベル「Ministry Of Sound」を特集した。

■「Ministry Of Sound」の歴史

あっこゴリラ:「Ministry Of Sound」は、クラブの名前でもあり、レーベルの名前でもあるんですよね?
FUKUNAGA:はい。まずクラブですが、サウスロンドンにあるビッグクラブで、1991年にオープン。サウンドデザインは、1987年に閉店したNYのパラダイス・ガレージのDJ/プロデューサーであったLarry Levanが担当し、オープニングパーティーのDJはLarry Levan自身が担当するなど鳴り物入りでスタートしたクラブです。
あっこゴリラ:へえ~!
FUKUNAGA:設立当初から、純粋に音に特化したフロア設計を指向しており、サウンドシステムに50万ポンド、防音工事にも同額の費用をかけたと言われています。また、初期の舞台セットはクラブの共同設立者のJustin Berkmannが好きだった映画『ブレードランナー』をモチーフにしたものだそうです。
あっこゴリラ:この名前の由来は?
FUKUNAGA:名前を馬鹿げたものにしたかったらしく、イギリスの国防省の前を通ったときに思いついた名称が「Ministory Of Sounds」だったらしいです(笑)。
あっこゴリラ:あははは。それが、こんな老舗のクラブになったわけですからおもしろいですよね。一方、レコードレーベルとしての歴史は?
FUKUNAGA:1993年に「Sound of Ministry」というレーベルが立ち上がり、その後、サブレーベルとしてData、Substanceなども設立。2009年にアーティストレーベルは「Ministry of Sound Recordings」に統合します。
あっこゴリラ:うんうん。
FUKUNAGA:これまでにDJのFresh、Eric Prydzらなど、現在ではベテランと言われるDJ/プロデューサーを輩出しています。2010年代に入ってからも、所属するSigala、LitonといったアーティストがUKダンスチャートやシングルチャートでも好成績を収めています。レーベルの看板アーティストの1組としては、インディーポップバンドのLondon Grammarも所属しています。

そんな「Ministry Of Sound」は、コンピレーションアルバムも有名だという。

FUKUNAGA:クラブ以外によく知られているのがコンピレーションシリーズで、『Clubber's Guide』、『Anthems』といったコンピシリーズがあるが、なかでも代表的なシリーズが1995年からスタートした『The Annual』です。
あっこゴリラ:どんなアルバムなんですか?
FUKUNAGA:『The Annual』は、その年に流行ったハウスヒットを中心にコンパイルした年鑑コンピレーションになっています。ハウス以外にも、トランス、ヒップホップ、R&B、ベースミュージックのコンピもリリースしています。
あっこゴリラ:欲張り(笑)! そんな「Ministry Of Sound」の30周年記念コンピがリリースされたとか。
FUKUNAGA:30周年記念コンピ『30 YEARS: THREE DECADES OF DANCE』が、今年9月にリリースされました。現在はCD、アナログ、サブスクでリリースされています。Faithlessの『Insomnia』、The Chemical Brothersの『Hey Boy Hey Girl』のような90年代のUKクラブヒットから、2000年代に流行したJusticeのようなフレンチエレクトロ、2010年代を代表するDisclosure、Peggy Gouのヒット曲から最近のクラブ系ヒット曲など、主に90年代から2020年代までにクラブシーンを代表するハウスシーンのヒット曲が収録されています。


■「Ministry Of Sound」の転換期
そんな「Ministry Of Sound」にも転換期が訪れる。

FUKUNAGA:実は「Ministry Of Sound」は、2016年にソニーミュージックに買収され、現在はソニーミュージック傘下に収まっています。ソニー買収当時のプレスリリースによると、その時点での累計アルバム売上枚数は7000万枚を超えており、イギリスにおいては、それまでに40枚のアルバムと21枚のシングルが売上1位を獲得してるらしいです。
あっこゴリラ:おお~! ソニーに買収される必要あったのかって思っちゃいますね。
FUKUNAGA:あははは。意外な話ですが、その関係でドージャ・キャット、ジョーイ・バッドアスのようなUSのブラックミュージックアーティストのイギリスでの所属先になっています。
あっこゴリラ:ええ~!
FUKUNAGA:僕も今回調べて知って、びっくりしました。最近では、UK新人ラッパーのTia CarysもMOSレーベルに所属していて、2020年10月にはMOSより『EnRoot』をリリースしています。


あっこゴリラ:変革していく「Ministry Of Sound」ですが、その他にどのような変化がありましたか?
FUKUNAGA:2016年、クラブとしては初となるドルビーアトモスを導入しました。いま流行りの空間オーディオなんですけど、メインルームのThe Boxには、64基のスピーカー、22チャンネルのサウンドシステムが導入されているらしいです。
あっこゴリラ:すごい! めちゃくちゃ音良さそう。
FUKUNAGA:そして2017年には、フィットネスクラブを始めます。クラブスタイルのサウンドシステムと照明設備を取り入れ、インストラクターが指導するオーダーメイドの高強度インターバル・ワークアウトと組み合わせるのがコンセプトになっているみたいです。
あっこゴリラ:何でもありですね。あはははは。
FUKUNAGA:あと2018年には、クラブ近くにバー、カフェ、制作スタジオ、ミニシアター付きのコワーキングスペース「The Ministory」をオープンしました。ソニーの傘下だからこそ、そういう後ろ盾もあって多角化しているなって思いますね。

■最近の「Ministry Of Sound」の動き
今年30周年を迎えた「Ministry Of Sound」だが、昨年からのコロナを経て、現在はクラブの運営はどうなっているのか。

FUKUNAGA:7月から段階的に解除されて、現状イギリスのクラブシーンはほぼ以前のような状況に戻ってきていると思います。Ministry Of Soundとしても今年9月に、30周年記念イベントを3日間にわたり、日替わりでトランス、UKG、ハウスのイベントを各シーンのレジェンドを迎えて開催しました。
あっこゴリラ:へえ~!
FUKUNAGA:一方で、コロナ禍の影響でナイトライフシーンや音楽業界では、数万人単位の雇用が失われていることも報告されています。
あっこゴリラ:みんな大変ですよね。
FUKUNAGA:そうですね。ちなみにMinistry Of Soundで言うと、運営のクラブは今年8月にコロナワクチンの接種の会場になったりしていました。
あっこゴリラ:え~! すごい!

あっこゴリラ:最近の「Ministry Of Sound」の動きはどうですか? 
FUKUNAGA:最近はApple MusicがDJ Mixの配信に対して、そのDJ Mixに関わった全ての人に収益を分配するシステムを発表しましたが、そこでMinistry Of Sound もDJ Mixを配信しています。
あっこゴリラ:いいですね~。
FUKUNAGA:また、MixCoudのサブスクプラン「MixCloud Select」を使って、過去のDJ Mixを有料で配信するなど、積極的に今の時代にあった形でDJ Mixのマネタイズ化を模索している印象があります。
あっこゴリラ:みんながピースになるものを作っている感じがいいですよね。
FUKUNAGA:あとは、チルアウト専用のミックス「Chillout Sessions」をアプリに提供したり、オーケストラでクラブミュージックを演奏するイベント「Ministry of Sound Classical: Three Decades of Dance」を開催するなど、クラブとしてのMinistry of Soundは、今後もおそらくビッグクラブらしく、王道のメインストリームのキャッチーなハウスが基本路線になっていくと思います。

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【番組情報】
J-WAVE 81.3FM『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 22時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/

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