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音楽界と映画界の両面から“トレント・レズナーの凄さ”を紐解く!

J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

■トレント・レズナーの近年の活動
2020年、ロックの殿堂入りバンド「ナイン・インチ・ネイルズ」のリーダーとして、90年代からインダストリアル・ロックを探求しながら、映画音楽にも進出。今年、参加したディズニー映画『ソウルフル・ワールド』では、アカデミー作曲賞を受賞。いまや映画音楽でも巨匠となったトレント・レズナー。

11月30日(火)のオンエアでは、そんな 名前だけは聞いたことあるけど、知らない人も多いであろう気になるリビング・レジェンド「トレント・レズナー」に迫った。
ゲストには、THE NOVEMBERSの小林祐介と映画/音楽ライターでありDJの島晃一が登場。

あっこゴリラ:トレント・レズナーは、映画界にとってもすごい存在なんですよね? 
島:ナイン・インチ・ネイルズのメンバーでもある音楽プロデューサー「アッティカス・ロス」とのコンビで制作をしているのですが、この10年ほどで高い評価を得た作品を多く手がけ、さらにアカデミー賞を二度受賞するなど、特筆すべき活躍をしています。

トレント・レズナーの近年の動き
【2019年】
・話題となった映画『WAVES』の音楽制作
【2020年】
・ロックの殿堂入り
・ナイン・インチ・ネイルズによるアンビエント・インストアルバム『Ghosts V』『Ghosts Ⅵ』を無料でリリース
・ディズニー映画『ソウルフル・ワールド』、Netflix映画『Mank』など、映画やドラマの音楽制作
【2021年】
・『ソウルフル・ワールド』でアカデミー作曲賞を受賞。この際、『Mank』でもノミネート
・アメリカの歌姫・ホールジーのニューアルバムを全面プロデュース

あっこゴリラ:映画音楽では、もはや巨匠となりつつ、自身の音楽活動も同時並行しているという感じですが、ここでまずは音楽ファンも唸らせた、映画音楽を一曲聴いてみようと思うのですが、小林さん、何にしましょうか? 
小林:映画『ドラゴンタトゥーの女』より、カレン・オーがカバーしたレッド・ツェッペリンの『Immigrant Song』です。


あっこゴリラ:トレント・レズナーというと、「インダストリアル」というサウンドがキーワードになってくると思うのですが、これはどういう音楽になるんでしょうか? 
小林:インダストリアルは、産業的な、工業的なという意味ですが、バンドで言うとミニストリーやスロッビング・グリッスルなど有名なバンドがいます。その何となくの共通点は、どこまでも過剰な人たちで、ものすごく気高くて、たぶんモテないですね(笑)。
一同:あはははは!
小林:リスペクトする人はいっぱいいると思うんですけどね。 
あっこゴリラ:なるほど~。なんか、そこが小林さんのツボをつくのが何となくわかる(笑)。そんなインダストリアル・ロックでブレイクしたのが、89年のデビューから現在まで続くトレント・レズナー率いるバンド「ナイン・インチ・ネイルズ」ですが、改めて、ナイン・インチ・ネイルズの魅力とは?
小林:やっぱり、先ほど言った過剰な暴力性だったり、“音楽でこんなことやっていいんだ”っていうのを自分の体から出してくれるような存在だったんですよね。それは、他の激しいって言われているロックバンドでは感じたことがないもので、自分はすごく危険なものを聴いているっていうドキドキ感もあったし、何よりも初期のトレント・レズナーのルックスが大好きなんです。
あっこゴリラ:THE NOVEMBERSのサウンドにも影響はありましたか? 
小林:ありますね。メンバーみんなナイン・インチ・ネイルズが大好きなので、自ずと受けている影響もあるし、作曲でなぞってみたときもあります。

■2010年から本格的に映画音楽に参入
ここからは、トレント・レズナーが携わった映画音楽について掘り下げた。

【主なフィルモグラフィー】
・1994年 オリバー・ストーン監督『ナチュラル・ボーン・キラーズ』
・1997年 デヴィッド・リンチ監督『ロスト・ハイウェイ』
→これらは、書き下ろし曲の提供とサントラの選曲で関わっている。そして、2010年から本格的に映画音楽に参入。
・2010年 『ソーシャル・ネットワーク』→アカデミー賞受賞
・2011年 『ドラゴンタトゥーの女』
・2014年 『ゴーン・ガール』
→これらはすべて、デヴィッド・フィンチャー監督作。
さらに……
・2018年 『Mid90s』
・2019年 『WAVES/ウェイブス』
そして昨年は……
・Netflix映画『Mank』
・ディズニー映画『ソウルフル・ワールド』→アカデミー賞受賞

あっこゴリラ:島さん、トレント・レズナーを映画界に引き込んだキーマンは、やはりデヴィッド・フィンチャー監督になるのでしょうか?
島:そうですね。フィンチャー監督との接点は、『セブン』(95年)のオープニングに、ナイン・インチ・ネイルズの『Closer(Precursor)』が使用されたのが最初だと思います。
あっこゴリラ:なるほど~。
島:その間、2005年からナイン・インチ・ネイルズにアッティカス・ロスが本格的に関わるようになりましたが、ドローンやノイズ、ミニマルサウンドをより強めていったこのコンビのサウンドにインスパイアされたフィンチャー監督が、映画音楽のスコアを依頼したという流れだと思います。
あっこゴリラ:素敵ですね。ここ10年で、映画音楽仕事が急激に増えている理由は?
島:決定的だったのは、Facebook創設者のマーク・ザッカーバーグを描いた『ソーシャル・ネットワーク』だと思います。初めて本格的に映画のスコアを作曲し、アッティカス・ロスとのコンビで第83回アカデミー賞、初ノミネートにして作曲賞を受賞しています。


あっこゴリラ:
相棒であり、いまやナイン・インチ・ネイルズのメンバーであるアッティカス・ロスとの出会いは大きかったと思いますが、レズナー&ロスのコンビが今までの映画音楽と違った部分は、どんなところになるのでしょうか? 
島:映画音楽の主流だった伝統的なオーケストラを使わず、ドローン、ノイズ、ミニマルなど実験的な手法を取り入れつつ、メロディの良さもあり、登場人物の感情を微細に表現するサウンドですね。例えば、一曲の中に優しいピアノの音とともに、エレクトリックな音を同居させ、不安や不穏さを表現するなど、音楽と音響の境を超えるようなサウンド、その実験性と細やかさが特徴だと思います。
あっこゴリラ:そういった彼らの特徴を表すサウンドで、特に気になった映画は?
島:『WAVES』(2019年)のスコアです。この映画はプレイリスト・ムービーとも評され、今をときめくアーティストの楽曲が多数使用されていますが、楽曲と楽曲、そこで表現される感情と別の感情の間、感情の変化をじっくりとなぞって繋ぐようなスコアがとても印象的でした。例えば、Radioheadの『True Love Waits』とシームレスに繋がり、既存曲との境目が見えなくなる『Leaving Missouri』などのスコアですね。


■トレント・レズナーの映画界での立ち位置
現在、映画界においてトレント・レズナーはどんな立ち位置にいるのだろうか。

島:ドキュメンタリー映画『すばらしき映画音楽たち』(2016年)では、『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』のジョン・ウィリアムズ、『荒野の用心棒』のエンリオ・モリコーネから『インターステラー』『007』『DUNE 砂の惑星』など、話題作を手がけ続けるハンス・ジマーまで、著名な映画音楽作曲家が取り上げられていますが、そこでレズナー&ロスもフィーチャーされています。
あっこゴリラ:へえ~!
島:それによればレズナー&ロスは、映画の独創性を求めた近年の監督たちが、映画音楽が専門でない音楽家にオファーする流れ、オーケストラを廃して、最先端技術を用いるエレクトロニカのアーティストに門戸が開かれた大きな転換と評されています。先程のハンス・ジマーも、彼らによって「より大胆な実験が許され、格段に自由になった」と発言しています。

ここで近年の活動から、ゲストのお二人が“特にヤバかった”と感じる曲を紹介してもらった。

あっこゴリラ:まず小林さんがセレクトしたのは?
小林:僕がくらったのは、ダニー・エルフマンとのコラボです! 
あっこゴリラ:どんな方なのでしょうか?
小林:80年代に活動したニューウェーブバンド「オインゴ・ボインゴ」の元メンバーで、『シザーハンズ』や『天使のくれた時間』、『スパイダーマン』などの映画音楽を作っています。
あっこゴリラ:すごいコラボですね。島さん、映画音楽界においてダニー・エルフマンは、どんな存在なんですか?
島:ティムバートン監督作を数多く担当する、なくてはならない存在です。それ以外にもたくさんの話題作を担当している映画音楽の巨匠です。


あっこゴリラ:続いて、島さんがセレクトしたのは?
島:レズナー&ロスの変化をわかりやすく象徴する曲だと思ったのが、映画『ソウルフル・ワールド』の『Pursuit/Terry's World』です。
あっこゴリラ:どういった部分にそれを感じましたか?
島:『ソウルフル・ワールド』では、ジャズピアニストを夢見る音楽教師が、ふとしたことで、人間が生まれる前のソウル(魂)の世界に幽体のような形になって迷い込みます。現実界のジャズ音楽をジョン・バティステが主に担当し、ソウルの世界の音楽はレズナー&ロスの幽玄なエレクトロサウンドが鳴っているのですが、ソウル界の幽体のキャラクターが現実界に侵入したときに、バティステではなく、レズナーたちの音楽が鳴っている、音楽も別の世界のものが侵入するように鳴っているのもスリリングです。
あっこゴリラ:すごい! 芸が細かいですね。
島:そして、今度は人間界でのチェイスシーンを経て、ソウル界に戻るときにレズナーたちの生音とエレクトロが同居したこの『Pursuit/Terry's World』が流れるんです。この映画の二つの世界の境界を超えていく象徴的な曲であるともに、レズナー&ロスのこれまでを総括するような曲でもあると思いました。


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【番組情報】
J-WAVE 81.3FM『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 22時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/

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