見出し画像

アリス・イン・ワンダー・L

『アリスはウサギを追っていたわけじゃ無い』


あたし、夢を見たの。

いつもの不眠癖。

昨日も寝れなくて
ずっと起きて
アイリッシュハープの
YouTube見ていた。

エルは絵を描いて
いたんだよね?

夜通しずっと。

なんかね、遠くから
聞こえたの。

紙と鉛筆が擦れ合う音が
シュッシュって。

エルは
楽しそうに微笑みながら、
手だけ、シュッシュって
動かして、

あたしが何描いてるの?
って聞いても笑って
ちっとも
教えてくれなかった。

アイリッシュハープの
音が心地よくて、
そのまま寝落ちしたのね。

ほんの一瞬だけ

そしたら
あたし、アリスになって
ウサギを追いかけて
穴の深く深く

入り込んじゃった。

真っ暗闇の穴の中
アリスのお話と違うのは
どこまでもどこまでも
どこまでも、

濃いブルーブラックの闇が
下に続いているだけで


オレンジマーマレードも
クッキーも
キノコさえも

何も置いて無くて


ああ、どこまでこの闇が
続いていくんだろうって

闇の中を泳ぎながら
ゆっくりゆっくり
落ちていく。


エルは笑って相変わらず絵だけ描いている。


落ちていくわたしを穴の上から覗き込んで
楽しそうに絵を描いてる。

どうして笑っているの?
わたしが聞くと、


キミが楽しそうだから。
エルは答える。


楽しく無いよ、
闇ばかりで。


そんな事無いよ
目を開けてご覧?


エルの言う通りに
目を開けると

わたしは既に
ベッドの中に戻っていて、

エルから
メッセージの通知が
届いていた。


出来たよ。

そして、
エルのメッセージは
こう続く。


お疲れ様。

キミのインナースペースで遊んでいる、キミを描いたよ。


アリスはウサギの穴に落ちて行ったわけじゃ無い。


アリスの心の
インナースペースに続く
穴で遊んでいたんだよ。


キミがインナースペースで
遊んでいるのを見ているのが楽しかったから

こんな絵が出来たんだ。


また、ね。


そしてわたしは再び、
安心して

温もりの残った
優しい闇に溶けて行く。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?