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かわら版No.9 緊急レポート 米沢市民の選挙権と投票時間について

日頃よりお読みいただている市民の皆様ありがとうございます。今回のかわら版No.9は、前号で「次回へ、つづく」としていた「かわら版No.8 ー 地方の政治に、今なぜ若さが求められるのか ー ①」を次回以降へ延期させていただき、市民の皆様にとってより身近なそして喫緊性と権利性の高い問題を共有させていただきます。前号の内容にご興味ご関心をお示しいただいた方々におかれましては、何卒ご了解いただければ幸いです。

さて、8月17日の山形新聞での報道記事にもありましたが、8月16日の米沢市議会総務文教常任委員会協議(以下、当該委員会協議会)で、「令和5年11月26日執行予定の米沢市長選挙において、選挙期日当日投票所を閉じる時刻を1時間繰上げし、午後7時までとし、また、これまで投票所を閉じる時刻を1時間繰上げしていた遠隔地7箇所の投票所の閉じる時刻を午後6時とする。」との内容が示されました。

当該投票時間の繰上げについて、市当局の主な実施理由は、期日前投票は午後8時まで実施しており、その割合が投票全体の約3割と増加傾向にあること、一方で選挙当日の午後7時~8時までの投票者数割合は3%から5%にとどまり、投票機会は確保されている、とのものでした。

確かに、平成9年の期日前投票制度導入以降(※期日前投票制度は、公職選挙法上では複数投票日制の採用を意味するものではなく、投票当日投票所投票主義の例外として、従前の不在者投票制度の投票環境の更なる改善を図ったもの。)全国的に各種選挙おいて投票閉時間を繰上げる運用が広がっている現状があることは、各種メディアの報道があるとおり公知の事実です。当該委員会協議会において、市当局から示された資料中おいても、R4参院選時の全国的な繰上げ状況「全国の投票所46,017か所のうち、17,178か所(37.3%)が終了時間を繰り上げ、15年前より約9%増加(総務省より)」との内容が示されました。

もっとも、ここでより慎重かつ正確な議論を共有するためにも、公職選挙法の条文を知る必要があります。以下引用します。

公職選挙法
(投票所の開閉時間)
第四十条 投票所は、午前七時に開き、午後八時に閉じる。ただし、市町村の選挙管理委員会は、選挙人の投票の便宜のため必要があると認められる特別の事情のある場合又は選挙人の投票に支障を来さないと認められる特別の事情のある場合に限り、投票所を開く時刻を二時間以内の範囲内において繰り上げ若しくは繰り下げ、又は投票所を閉じる時刻を四時間以内の範囲内において繰り上げることができる。
2 市町村の選挙管理委員会は、前項ただし書の場合においては、直ちにその旨を告示するとともに、これをその投票所の投票管理者に通知し、かつ、市町村の議会の議員又は長の選挙以外の選挙にあつては、直ちにその旨を都道府県の選挙管理委員会に届け出なければならない。

公職選挙法第40条第1項では、投票所は、午前7時から午後8時までとし、この開閉時刻の規定は、同法の趣旨に鑑み、訓示規定と解することはできない(昭28、6、12最高裁)と、理解されています。ただし、同法第40条第1項但書きにおいて、市町村の選挙管理委員会は、選挙人の投票の便宜のため必要があると認められる特別の事情のある場合又は選挙人の投票に支障を来さないと認められる特別の事情のある場合に限り、投票所を閉じる時刻を四時間以内の範囲内において繰り上げることができる。と定めています。

この点、黒瀬敏文/笠置竜載編著「逐条解説公職選挙法改訂版」(令和3年7月30日発行)によれば、当該但書きの法律要件に該当するかどうかは、「農繁期における農家の仕事の状況、工場地帯における就業時間、地域的な日没等地域の実情を踏まえて、これらの場合に該当するかどうかを判断する必要がある。なお、単に投票箱を早く開票所へ送致するためのみを理由として閉鎖時刻を繰り上げることはできないものと解される。」としています。

今後、佐野としては、公職選挙法の他条項や地方自治法等の関連条項の規定も併せて分析し、8月22日の市政協議会、8月30日に召集される9月定例会の本会議において、現在の米沢市の実情が、公職選挙法第40条第1項但書きの法律要件を満たすどうか、議論を尽くしたいと思います。①期日前投票者の割合が全投票者の約30%とはいえ、約70%の投票者は当日投票をしていること、②「選挙当日の午後7時~8時までの投票者数割合は3%から5%にとどまり、投票機会は確保されている」とはいえ、実際の投票者数にすると約860人~1260人にも及ぶ投票者の投票機会を数字上では失うこと、③選挙管理委員会の答弁内容において、「選挙人の投票に支障を来さないと認められる特別の事情」が何であるのか、該当事実が示されていないこと、④令和5年11月26日執行予定の米沢市長選挙まで、周知期間が1か月~2か月と短いこと、などの点から、公職選挙法の立法の意を汲んだ思慮ある同法の解釈と運用ができるのか、十分に協議される余地はあるように思います。米沢市の選挙環境の実情を勘案しなければいけませんが、法律論としての合理性を前提とした総合的な議論を経る必要があります。

令和元年の米沢市長選は24票差でした。有権者一人一人の選挙権、投票の機会が、その後の米沢市の未来を決します。今回の投票閉時間の繰上げも結果に重要な意味を持つ場合があります。是非米沢市民の皆様には関心を寄せていただきたく思います。また、この他、米沢市長選挙の制度に関しては、「米沢市長選挙記号式に関する条例を廃止し、市長選挙を自書式投票とする」ための条例の廃止案も上程されます。こちらも米沢市民の皆様、有権者の皆様にとって重要な内容ですので、今後並行してレポートしていきます。

長文となり大変恐縮です。お読みいただき誠にありがとうございまます。

かわら版No.9


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