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河童の川流れ、にはなってないと思う。

今回は割と近年の作品でも解説してみようかな。

ジンジンとガンガン。

横浜の路上(伊勢佐木町だったかな?)で毎週土曜日の夜に弾き語りライブをしている共に19歳の若者、ということぐらいしか確かな情報もないままオファーされたMIZUのデビューミニアルバム、その名もそのまま「MIZU」のジャケットデザイン。

デザインのオファーと同時に渡された数曲の音源を聴いて確信したのは「この二人、たぶん売れるな」ということ。

だって、二十数年前に初めて「ゆず」を聴かされた時と同じ匂いがしたから。それは2人組という演奏スタイルや楽曲の雰囲気が似ている、という単純なことじゃない。

それは、ゆずにも、このMIZUにも、きっと彼らの肉体を流れる血には「パンク精神」が宿っているはず!と感じたから。

闇雲に時代や流行に反抗して、見た目もスタイルも判り易い「パンク」スタイルでがなり立てるのではなく、穏やかに密かに、でもまぎれもなく存在する自分と時代とのズレや、周囲に理解してもらえない不満や不安。と同時に理解されたくもないという傲慢や不遜。でも、それと同じくらい渇望する愛されたい理解されたい欲求との葛藤。

バイトのシフトが何時かなんてボクには関係ないし、キミの好きなアイドルが誰だろうとボクには関係ないし、少しづつ蒸し暑くなろうが、新品のスニーカーで犬のフンを踏もうが、はっきり言ってボクにはどうでもいい。

ボクとは無関係であるはずの、そんな彼らの個人的な日常の不満や不安をメロディーに乗せて歌われてもピン!とくるはずないのに。

それなのに、、、、

こんな、出来損ないのコントみたいにバカげた世界と、何もできないちっぽけな自分が繋がっていることを、否応無く見せつけられる今という時代に向けて、ありのままで吠えるということの無力さと、それを実際にすることの勇気こそが本当の反骨精神で、本当の表現なんだと思う。

おそらく誰もが心の中に宿しているであろう、至極ミクロなその想いがあるからこそ、万人に向けて放たれた瞬間にマクロが共感する魔法をもっているんだろうな、と思った。

そう。

ミクロはマクロ。まさに「POWERS OF TEN」と同じ現象よね(ちょっとデザインっぽい話になったな)。

それがゆずにも、MIZUにも共通して流れているスピリッツだと思ったから、それがなんだかカッコイイなぁと思ったから。

だから二十数年前「ゆず」というフザけた名前にも関わらずジャケットデザインを引き受けた理由だし、今回それを上回る「MIZU」というダサい名前にも関わらず、懲りずにデザインを引き受けた理由なんだけども、河童の川流れにならなきゃいいけどな、くらいにあんまり深く考えずに流れに身を任せてみようかな、なんて思ってね。

デザインを引き受けた経緯というか、ボクのジャケットへの想いはこれくらいにして、実際のデザイン作業に関しては、、、、

まずは、このジャケットデザイン。

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あんまりハッキリと覚えてないんだけども、メモ帳の端っこみたいな粗末な紙にジンジンが描いた本人たちやウ◯コみたいなキャラのイラストを渡されて「これでカッコ良くしてみてください」と一言だけ。

「ゆずの素」のジャケットデザインを頼まれた時、ヘタクソな(柑橘の)ゆずのイラスト一個だけ渡されて「これで好きにデザインしてみてください」と言われたのと、まるで一緒じゃないか。

こんなところまでゆずと同じ匂いがするなんて、な。

以前にどこかで話したことがあるか忘れてしまったんだけども、ゆずのデビューミニアルバム「ゆずの素」のデザイン作業をしている時は当然ながら世間一般にフォークデュオ「ゆず」の存在は知られておらず、誰もが「ゆず」と言えば、お風呂に浮かばせたり、削った皮を煮魚の上に乗せたりする柑橘の、あの「ゆず」しか思い浮かべない時だった。

そんな中、マジックペンで大きく書かれた「ゆず」の文字と、ヘタクソなゆずのイラストをプリントアウトして壁に貼っていたら、他の打ち合わせで訪れた人に「河原さんって農協の仕事もするんですね〜。意外だなぁ〜」と半笑いされた。

そんな酸っぱい思い出が蘇ってきて、鼻の奥がツンとした。

でも、そんな思い出も水に流すくらい、立て板に水の勢いで一気にデザインを仕上げられたのは、ジンジンとガンガンの、そのパンクス精神あればこそ。

ヘタクソなイラストをカッコ良いデザインに生まれ変わらせるのは水を得た魚の如く得意中の得意ですからね。

先行配信シングルとなった「水色」のジャケットは、ジンジンが「これは絶対に配信向きのジャケでしょ!」と、業界慣れしたプロデューサーみたいな一言でアルバムのB案をアップデートさせたデザイン。

19歳のくせに的確なこと言うなぁ、ジンジンは。

MIZU_水色_digital_JKT

デザイナーとしては、どちらも気に入ってたデザインだから、この二つのデザインが世に出てくれて、とても嬉しいのが本心です。

そういう機会を与えてくれたジンジンガンガンに感謝。

後日、ジンジンから「帰りに卵買ってきてくんない?」とLINEが来たんだけども、あれは彼女へのLINEを誤爆したんだろうな。

そのままガンガンに転送したら「俺、今日はバイトで帰り遅いっすけど、それでもいいすか?」と返信が来た。たった一回のやり取りだけなのに、なんか二人の全部が蛇口から溢れてたなー。

MIZUの二人に流されて良かったわ。

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