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嬉野流は強い
今回は嬉野流について今現在把握していることすべてを語りたいと思ってます。メリットだけじゃなくてデメリットもちゃんと書くし、その対策の一例も紹介していきたいと思っています。
この戦法に四段まで連れていってもらったので、その分熱く語ります。嬉野流初心者の方にもこの素晴らしさを伝えたいです。全力を尽くします。
嬉野流のポリシー
そもそも嬉野流ってなんなん、という方に一応ご紹介。先手番なら初手▲68銀から始まる力戦を狙いとした戦法です。
![](https://assets.st-note.com/img/1712048929435-sezV4sXk9e.jpg?width=800)
今でこそ見慣れたが、初見だと驚愕間違いなし
基本角道を開けないという特徴も嬉野流ならではです。ここから嬉野流側はとにかく攻めの陣形を作りにいきます。
さて、定跡に移る前にポリシーを書いておきましょう。大体ここら辺で嬉野流使いたくなくなる人が多い印象です。(友達に勧めました。)
攻め銀を捌く
全くもって当たり前ですが、ここ「意地でも」狙って下さい。銀桂交換でもいいです。これ達成できないとまず勝機はありません。
簡単に攻めを諦めない
駒が取られることに恐怖を感じるな、ということです。いや、感じても進めなければなりません。自分から局面を落ち着かせないことです。
自玉が薄いのは目を瞑る
私もここが一番嫌だなと、指してて思っています。しかし薄くても攻めていれば自玉に手はつきませんから。攻めは最大の防御とはこういうこと。
最序盤定跡
ここでは最序盤を解説します。一旦先手番で。
初手から
▲68銀 △84歩 ▲78金 △85歩 ▲26歩...…図1
![](https://assets.st-note.com/img/1712105107429-QISGVKlFlr.jpg?width=800)
右銀は後回しにする。
23地点を受ける△32金と△33角
どちらもありうる。
はい、最序盤終わり。簡単ですね、はい次。
村田システムについて
ほんの少しだけ小話として村田システムの存在を上げておこうと思います。村田システムと嬉野流の大きな違いは引き角なのか否かというところです。村田システムは相手の駒組に応じて角の場所を決めるのが骨格となっていて、いわば嬉野流の上位互換です。村田先生本人の棋書では嬉野流のような陣形は「左銀システム」と呼称が付いており、右銀システムは極限早繰り銀などに合流しています。村田先生が藤井聡太にその戦法をぶつけて評価値94%まで追い詰めました。つまり、村田システムはしっかりと強いのです。ちなみにここでは右銀システムが使われました。
さて、対する左銀システムはなんなんだと。村田先生の本を読めば分かりますが、対棒銀が異様に複雑なのです。それは嬉野先生本人の棋書でも同じです(むしろこっちの方が複雑かもしれません)が、とにかく棒銀が完全に嬉野流メタです。同じ理由でUFO銀や鎖鎌銀も同じく嬉野流メタです。デメリットの方で詳しく説明します。
嬉野流のメリット
駒の打ち所が少ない
攻めたら反動がくるのが普通ですが、嬉野流は駒交換をしてもすぐ駒を打たれる陣形でないことが多いです。意外と強いメリット。
奇襲戦法ではない、一本筋が通った戦法
升田幸三賞を受賞した程にこの戦法は有力です。藤井聡太先生も「一本筋が通った戦法」と評価しています。斜め棒銀を始めとする攻め筋は嬉野流特有です。
研究将棋から脱却できる
現代将棋(2024年4月現在)はAIの影響で(どちらかと言えばAIのせいで)角換わりや横歩取り等は研究丸暗記ゲームと化しています。その暗記量に比べれば、嬉野流は暗記とは言えないレベルで脳に負担がかかりません。実践は頭使うけど、それはどの戦法も同じなので、将棋をしっかりボードゲームとして楽しめます。あと、地力が試される局面に高確率で遭遇するので、将棋そのものの力が伸びていきます。そのうち嬉野流に飽きて他の戦法に移っても地力は必ず活きるので、損にはなりません。
嬉野流のデメリット
棒銀にメタられる
先程述べました通り、棒銀、UFO銀、鎖鎌銀は嬉野流メタです。つまりこの戦法になるのかどうか、常に相手の陣形を見る、特に相手の右銀の動きには細心の警戒をしなれけばなりません。相手がちょっと間違ってくれればなんとかなりますが、そこにすがっていては正しく指され続けられたときに意味ないので。この対策は後程。
銀角総交換でも意外と互角付近
これは記事を書く上でAIにかけたら発覚した事実です。もちろん有利になる局面はあるんですが、ものによっては嬉野流側が+100、ひどいときは+8とかだったりしたので驚きました。でも言うてAIの意見だから、気にしない気にしない。
定跡書がない
これは当たり前ですね。デメリットというかなんというか。故天野先生と嬉野先生の棋書のみですね。あと人によって陣形に若干の違いがあり、どの人を参考にするかは悩みどころです。将棋ウォーズでいったらkarma99先生、RIKISEN_shogi先生、micro77先生は有名ですので、参考にしてみてもいいかもしれません。
対策一覧
記事載せるので確認お願いします。
ひとまずこれくらいは確実に対策練っておきましょう。嬉野流に勝ちたいと思っている人間がネットサーフィンしてこれぐらい出てくるんですから、そりゃ全て対策しないといけませんので、ここはちょっと頑張りましょう。
新たに記事を添付する欄↓
対策の対策を如何にして立てるか
相手から攻められるような状況では、銀交換でさえも恐怖を覚えますので、やられる前にやる方針で対策を練っていきましょう。具体的には、嬉野流側から相手より先に▲35歩の符号を出すことです。もちろん一旦受けるという方針もあります。
棒銀をどうするか
棒銀に対してどのように戦っていくか見ていきます。先程棒銀が嬉野流メタだと名言したので、どの辺りがメタになっているのか見ていきましょう。まずはシンプルに嬉野流に決めて指してみましょう。
先後どっちになってもいいように後手番で
(もし実践で先手番だったら一手早くなる)
初手から
▲26歩 △42銀 ▲25歩 △32金
▲38銀 △84歩 ▲27銀 △85歩
▲78金 △54歩 ▲36銀 △53銀
▲35銀…図2
![](https://assets.st-note.com/img/1712105995031-U2gtMCDgpL.jpg?width=800)
これはもう負けです。勝てる気がしません。
実際、△31角▲24歩△同歩▲同銀△41王▲23銀成△22歩▲24歩 となって終わりです。実践では△23歩▲同歩成△同金▲同飛成△22歩▲26竜△75銀▲76歩△86歩▲同歩△同銀▲66角と進んだものはあるものの、▲66角が美しすぎてそれを讃えて投了します。△75銀▲同角△89飛成となれば一応竜はできますけど、そこで▲23歩(…図3)のあわせが激痛です。
![](https://assets.st-note.com/img/1712107858235-chvoHZu0bB.jpg?width=800)
という感じで嬉野流が潰れるわけですね。
では戻って少し工夫をみましょうということで、私は以下のように工夫をしてみました。
初手から
▲26歩 △42銀 ▲25歩 △32金
▲38銀 △84歩 ▲27銀 △85歩
▲78金 △86歩 ▲同歩 △同飛
▲87歩 △84飛 ▲36銀 △14歩
▲35銀 △13角…図4
![](https://assets.st-note.com/img/1712108476531-HWHdT1Re1L.jpg?width=800)
一応棒銀は受かります。相手も悟ったのか▲35銀に代えて▲46歩と駒組を目指しました。以下、△13角▲47銀△62王▲56歩△72銀▲68銀△71王▲57銀(…図5)という実戦があったような、なかったような。
![](https://assets.st-note.com/img/1712110265314-gC6kmU2spA.jpg?width=800)
片美濃に組めたものの、二枚銀の厚みがなかなか厄介であり、そもそも力戦にできるのかどうか。局面が落ち着きすぎています。あと指してて楽しくありません(個人の感想です)。何か別のを用意したいが、嬉野流を目指すと潰される。困った。
そもそもなんで棒銀に弱いのかというと、「▲35銀」という符号をノーリスクで出させてしまっているところにあります。従って、▲35銀 を妨害します。具体的には、飛車先を保留して、左銀を44地点まで持っていけばいいのではないか(▲35銀 に △同銀 と取る)ということで、以下工夫手順を示します。
初手から
▲26歩 △42銀 ▲25歩 △32金
▲38銀 △54歩(…図6) ▲27銀 △53銀
▲36銀 △44銀…図7
![](https://assets.st-note.com/img/1712113413597-JTzkHA3BwC.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1712113426846-yCHdPToX2E.jpg?width=800)
ひとまず▲35銀は受かっているはずなのですが、図7から▲24歩△同歩▲同飛△23歩▲28飛(…図8)となった時にあれれ、な局面。
![](https://assets.st-note.com/img/1712117329576-vdz8HkMT17.jpg?width=800)
どうやっても次の ▲25銀 が受かりません。
△84歩▲25銀△85歩▲78金△86歩▲同歩△同飛▲87歩△85飛▲24歩△同歩▲同銀△25歩▲76歩(…図9)が進行の一例ですが、棒銀は一旦受かっても飛車が五段目から動かせないので駒組が大変で楽しくありません。
![](https://assets.st-note.com/img/1712117912598-cKHCZw6dLd.jpg?width=800)
ここまでの流れをまとめると、
→攻め合おうとすれば棒銀の方が早い
→早めに銀で受けても歩交換から銀を出られる
棒銀は確かに嬉野流メタでした。
じゃあ棒銀されたら嬉野流できないじゃないか。
そうです。棒銀されたら嬉野流は使えません。
大人しく矢倉にでも組んでおきましょう(図10)
![](https://assets.st-note.com/img/1712127534991-OCpgqTdZhm.jpg?width=800)
初手から
▲26歩△42銀▲25歩△32金▲38銀△84歩▲27銀△34歩▲26銀△14歩▲16歩△85歩▲78金△33銀まで
こうなればフルボッコはなくなります。ここからは矢倉の指し回しを参考にしつつ、引き角+斜め棒銀を実現できたら力戦調になるでしょう。どこかのタイミングでここからの指し回しを記事にします。
ところで、図6をまだ使っていないの、気づいていましたか?
![](https://assets.st-note.com/img/1712139671046-DxIuZnPr4c.jpg?width=800)
すなわちここから▲24歩△同歩▲同飛△53銀▲23歩△31角(…図a)と拠点を作られる変化があるんです。
![](https://assets.st-note.com/img/1712139879803-I9EGBJWv2r.jpg?width=800)
やられたら確かに嫌だ
やられなさすぎて忘れがち
しかしこれにはちゃんと対策があります。
図aから
▲76歩 △14歩 ▲68玉 △13角
▲28飛 △24歩 ▲36歩 △23金
▲46歩 △31角 ▲37桂 △22飛…図b
![](https://assets.st-note.com/img/1712140290009-JCK0UM7tTO.jpg?width=800)
一歩得をしていて拠点も払えた
とりあえず悪いところはない
ここから居飛車側は左美濃をすることが多いです。こちらも片美濃とか銀美濃とかに組んでおいて均衡を保ちつつな将棋にしましょう。
(この辺りもどうするか記事にしたい)
振り飛車をどうするか
対振り飛車では、嬉野流は鳥刺しの雰囲気なので、方針は分かりやすいです。分かりやすすぎて対策が容易です。それが向かい飛車32金型です。(図11)
![](https://assets.st-note.com/img/1712133104569-5DWoZcFY2L.jpg?width=800)
以下▲46銀△54歩▲35歩△同歩▲同銀に△34歩 で簡単に受かってしまう。▲24歩には△35歩▲23歩成△同金 で銀損に終わる。
他にはノーマル三間飛車も3筋をある程度緩和しているので厄介。指せなくはないんですけど、あんまり面白くないっていうか、それこそ敵玉が物理的に遠いので気持ち的にもよくないんですよね。
、、、ということで。正直今回の記事で一番皆さんに知って欲しいのが次の形です。
嬉野流振り飛車で相振り飛車に誘導
まあそんな恐れないで、とっても簡単だから。
初手から
▲78飛 △42銀 ▲76歩 △54歩
▲68銀 △53銀 ▲48玉 △31角
▲38玉 △22飛…図12
![](https://assets.st-note.com/img/1712136694666-wrYXfS8Pni.jpg?width=800)
新時代はこの形だ!
今まで振り飛車に鳥刺しばっかりやってた嬉野流使いの方々、これからはこんな戦法どうでしょうか。指せる実感湧かないかもしれないので、実戦棋譜を一つ置いておきます。
図12以下
▲28銀 △24歩 ▲58金左 △25歩
▲48金直 △72金 ▲56歩 △61王
▲57銀 △64銀 ▲66歩 △74歩
▲68飛 △73桂 ▲77桂 △75歩
▲67金 △76歩 ▲同金 △74歩
▲65桂 △同桂 ▲同歩 △75銀
▲同金 △同歩 ▲77歩 △62銀
▲96歩 △24歩 ▲同歩 △同飛
▲27歩 △24飛 ▲97角 △55歩
▲同歩 △84飛 ▲86角 △74桂
▲95角 △87飛成 ▲64歩 △同歩
▲56桂 △63金打 ▲65歩 △同歩
▲54銀 △66歩 ▲63銀成 △同銀
▲73金 △84歩 ▲72金 △同玉 まで、66手投了
この棋譜は相手が銀を引かそうと頑張っているところに攻撃を仕掛けた感じですね。お相手が桂を跳ねていなければまだ分からなかったという印象です。
嬉野流向かい飛車は、引き角+斜め棒銀を相手の攻撃陣にぶつけていく戦法で、やってることはB面攻撃と一緒です。もちろん敵玉に直接攻めていくことも可能です。これがなかなか楽しくて、本譜の歩の突き捨てから飛車の転回のように、結構気持ちいい手筋も使えるので、爽快感は抜群です。何はともあれ、使ってみてください。
(ちなみに嬉野流中飛車もあります)
まとめ
今回は嬉野流の大まかな紹介でした。
ポイントをまとめます。
一、自ら後手を引かない。
ニ、棒銀には嬉野流を諦めて矢倉調に。
三、対振り飛車は嬉野流向かい飛車。
これらをきっちり守って嬉野流を使いましょう!
最後に
この記事を読んで嬉野流を試してみて、「なんだこれ、全然勝てないじゃないか」となって嬉野流辞めるのは、本当に勿体ないです。確かに嬉野流はプロ対局で出ない故に弱い戦法ではあるんでしょうけど、プロでもないましてやアマチュアの分際で「嬉野流はゲロ弱」とか言わないで欲しいなって思います(これは私のリア友の話)。私も今3切れ四段になって停滞気味ですけど、なんで勝てないのかきっちり分析した上で「いやまだ嬉野流は終わってない」と言い張ってます。困った相手に遭遇したら私のDMに相談してください。一緒に考えましょう。
宣伝
「嬉野流棋士会」というlineオープンチャットを開設しました。興味のある方は是非。
(嬉野流使いの方以外は入って欲しくないかも笑、いや全然大歓迎ですよ!)
2024/4/3 しろせみ
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