【用語】#1 段切り

山の環境改善は、殆どの場合それは斜面で行われる。斜面を相手にしているからこそ、水平、垂直という感覚が重要になる。そこで、今日は「段切り(だんぎり)」という言葉を紹介する。

段切りは一般的な土木用語で、簡単にいうと「勾配のある場所に盛り土を行う際にそれが流れたり滑り落ちたりしないように階段状に土を削ること」。

山の斜面に降ってきた雨は、下層植生(下草)が衰退していると勢いよく流れ、土を削っていってしまう。水は高いところから低いところへ流れる。その摂理を曲げることはできない。手を入れる場合は、水を止めるのではなく、水がより緩やかに流れて、土壌へと浸透していく方法を考える。そこで忘れてはいけないのが水平・垂直だ。

そもそも水平面や垂直面なんて、自然界には殆どない。つまり水平、垂直というのは非常に人工的なものだという意識をもつ。森の中にまっすぐな道があるのをみたら、けもの道とは思わないだろう。(ちなみに宮地嶽神社の海まで続く参道は人工的に作られたもので、あの不自然さが光の道という美しさを生んでいる)

斜面を走っていた水が、段切りされた斜面に来ると、ストっと真下に水が落ち、それまでの勢いが弱まり、水平面で滞留する。その滞りの間に、水が土の中にゆっくりと染み込んでいく機会が訪れる。もちろん、そこに水がずっと止まり続けてもらっては困る。染み込みきれなかった水は、オーバーフローして次の段へと落ちていく。ただ、これはとても緩やかに落ちて行くので土を削ることがない。

段切りと水の動き


こうして、水が全体としては滞ることなく、しかし極めて緩やかに流れて行く環境を段切りを施すことによって作ることができる。

山結びでも、道を作る時、階段を作る時、石畳を作る時、段切りを施す。

道を作っているところ。赤い線で示されているような、この小さな段切りが水の浸透や構造の強さに大きな影響を及ぼす。



とても重要な段切り。水平・垂直を綺麗に作るにはどんな道具が必要になるだろうか。道具の話は、またの機会に。

(写真・絵・文:マサ)

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