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「産前には戻らない。でも、自分を整えてすこやかに、子育てを楽しむ」福田萌子

人気の婚活リアリティーショー「バチェロレッテ・ジャパン」に、初代バチェロレッテとして参加した福田萌子さん。いまはモデルなどの仕事をしながら、お子さんを育てています。出産を経て心身はどのように変わり、萌子さんはその変化をどう受け止めているか? 
子どもも自分も尊重し、すこやかに暮らすためのヒントを伺いました。

福田萌子
モデル、スポーツトラベラー、トレーナー。
TVや雑誌などで幅広く活動する。Prime Video配信の「バチェロレッテ・ジャパン」に初代バチェロレッテとして参加。 セルフラブへの気づき、自己肯定に関する発信が同世代をはじめとした多くの女性から支持を得ている。
著書:「なりたい自分」になるシンプルなルール(幻冬舎)


産後の身体は、元には戻らない

――そもそも、萌子さんは子どもを持ちたいと考えていましたか?

萌子:10代や20代のころから、漠然と「いつかはほしい」「自分が産める体を持っているのであれば、その経験をしたいし子育てをしてみたい」という気持ちを持っていました。それがだんだん年齢を重ね、本当に産める状況や育てられる環境が整ってきて、この数年で少しずつ現実的な意志になってきたんです。

それはどうしてかというと……根源的な答えは、きっと本能なのかなと思います。「子孫を残し家族を築きたい」という、私達に組み込まれた動物的本能。きっと私は、もともとその本能が強いんですよね。それに加えて、子どもや誰かをお世話することが好きな性格だし、家族に対する愛が自然と大きくなるような環境で育ってきたことも関係していると思います。私は自分の身体で子どもを授かり産みましたが、自分の遺伝子であることへのこだわりがあるわけでもありません。

――妊娠・出産を経て、想像と違って苦しんだことや想像よりも素敵だったことなど、ギャップはありましたか。

萌子:とくにありませんでした。おそらく、妊娠・出産に対して「これだけつらいものだ」「きっとすごく素敵なものだ」みたいな決めつけをしていなかったからだと思います。もちろん、学んできた知識や頭ではわかっていることと、自分の身体に起きている変化は同じではありませんでした。でもそのなかで、妊娠・出産しているそのときどきの状態を、そのまま受け止めていました。「痛いと聞いてはいたけれど、こんなに痛いんだ」みたいに、知識が実体験になっていく感覚を、ひとつずつ確かめていくような期間でしたね。

――妊娠している間、萌子さんの身体にはたとえばどんな変化がありましたか?

萌子:変化しかないですよね。本当に、妊娠・出産ってすごいことだなと思います。お腹が重くなっていくと息がしづらくて、何もしていないのに苦しくて……でもそのときは目の前の瞬間を乗り越えるのに一生懸命だから俯瞰することもできず、精いっぱい。坐骨神経痛になったり、食欲はあるのに雀の涙ほどのごはんを食べるだけで息ができなくなったり、苦しい症状もたくさん出てきました。幸いつわりで吐いたりすることはなかったけれど、身体の不調は人それぞれ。「あなたは吐かないからましだね」とかじゃないんですよね。

――たしかに、妊娠の経過やマイナートラブルの軽重は人と比べなくていいはずなのに、「あの人より楽なんだから弱音を吐いちゃいけない」とか思ったりしてしまいがちですよね……。

萌子:そうなんです。ベストのときの自分と比べてどうか考えて、調子を整えていくしかないはずなのに。しかも、そういういろんなマイナートラブルって、出産して全部楽になるわけでもないじゃないですか。身体を重くしていた赤ちゃんが出ていったからすべて治るとか、そんなシンプルで論理的なことはございません、っていう(笑)。だから、産後の変化にもびっくりしました。妊娠・出産ってこんなに身体が崩壊するんだ! 10ヶ月かけて筋肉がなくなり、骨盤が開くと、生活を営むことだけでこんなに難しいんだ! って……。それに加えて赤ちゃんのか弱い命も守っていかなきゃいけないなんて、本当に大変ですよね。

――「なんだか身体がしんどい」じゃなくて「筋肉が落ちている」「骨盤が開いちゃった」と思えるのは、身体に対する萌子さんの解像度が高いからですね。

萌子:日ごろから運動をしているから、つらさの理由が読み解けたというのはあるかもしれません。「すっかり腹筋がなくなっちゃったから、ここに刺激を入れていこう」などと思えたし。ただ、産前の身体にはもう戻らないんですよね。知らないたるみがついているし、授乳を終えたら胸もなくなるし……「いつまで産後なの?」と聞かれたことがあるけれど「ずっと産後です!」みたいな(笑)。紙コップをぐしゃぐしゃにして、そのあとどんなに伸ばしても折り目が残ってしまうように、身体も元には戻らない。命がけで命を生み出すという行為をしたんだから、簡単に戻るほうが奇跡です。でも、ついてしまった折り目や凸凹すらも愛せるように、いかに整えていくか。いかにパワーアップしていくかを考えていくものなんだと思っています。

子どもを産んだらできないこともあるけれど「いまはできない」だけ

――いまは、ご自身の身体を整えるために、どんなメンテナンスやトレーニングをしていますか?

萌子:走ったりジムに行ったり、すべて自分の身体と相談しながら無理のないように続けています。私は走るのが大好きだから、気持ちとしては産前と同じように思いきり走って楽しみたいのですが、それをすると腰が痛くなったり足首の動きが悪くなったりしてしまうんです。そういう無理が積み重なれば、ぎっくり腰にだってなりかねない。だから、いままで以上に身体の声を聞くことが大事なんですよね。

――そうした時間を確保すること自体も、子育てをしながらだと大変だと思います。どんなふうに時間をつくっていますか?

萌子:なるべく子どもとできるようなことを探してはいます。いまは暑いからあまり外には連れていけないけれど、涼しいときはバギーを押しながら走るバギーランにしたり、子連れOKのジムやピラティスを選んだり……。あとは朝の数時間だけシッターさんに来てもらって走りに行き、好きなコーヒーを飲んで帰ってくるとか、短い時間でも充分リフレッシュになりますね。ただ、時間の確保は本当に難しい問題なので、むしろ私が先輩保護者の方々に聞いてみたいです!

だけど、育てるほうがすこやかでいないと、子どももなかなかすこやかになれないと思うんですよね。だから、子どものためにもまずは自分を整えたい。そのための時間が、私にとっては身体のメンテナンスやトレーニングなんです。もちろんやり方は人それぞれだから、映画を観に行ったり、ランチをゆっくり食べたりすることで自分を整えるのも素敵だと思います。

――自分に余裕がないと、ゆったりした気持ちで子育てするのはなかなか難しいですもんね……。とはいえ、赤ちゃんがいると行動が制限されることも少なくありません。萌子さんも、そう感じる瞬間はありますか?

萌子:走る時間やタイミング、頻度なんかは、やっぱり制限がかかっていると思います。大好きな山登りや自転車も、簡単には行けません。山は子どもを背負って一緒に行ってしまえばいいかもしれないけれど、虫に刺されたりしたらかわいそうだなと思うと、いまは「行かない」という選択になります。でも、その制限はきっと数年のこと。「山も自転車も一生できません!」だったら困っちゃうけれど、小学校に上がったらみんなで楽しめるかもしれないし、もっと大きくなったら逆に教えてくれるかもしれませんよね。「できる/できない」の0:100じゃなくて「いまはしない」だけ。だから、しばらくは制限の範囲内で、できることを楽しんでいけたらいいと思っているんです。

「子育てをしたい」と思ったのは、私だから

――お子さんと向き合うとき、大切にしていることはなんですか?

萌子:「様子を見ること」です。「離乳食は5〜6ヶ月から始める」とか「寝返りは何ヶ月ごろにする」といった知識は知識として持っておくけれど、子どもに無理やり当てはめようとしない。なんでも、その子のタイミングに合わせてあげるようにしています。たとえば離乳食も月齢がきたから始めるではなく、本人が食べたそうなそぶりを見せてから始めるようにしました。もちろん、成長過程で健康的にいられる範囲のなかでの歩み寄りです。その積み重ねで、昨日までできなかったことやしていなかったことが急にできるようになっていくんですよね。それを見守ったり、子どもの様子に合わせて「じゃあ次はこれだね」と新しい提案をしたりするのが楽しいんです。

我が子はまだ言葉は話さないけれど、声のトーンや出し方で何を伝えたいのかがある程度わかります。「お腹がすいてきたのね」「あのおもちゃを取って欲しいのね」と理解ができるから楽しいです。
お手洗いに行くときも「ちょっとお手洗いに行ってくるから待っててね」と伝えると待っていてくれるけれど、黙っていなくなると「どこ行ったの!?」みたいに大きな声で呼ばれたりして(笑)。ずっと2人で会話をしているので、お散歩に行ったときはたまに不思議そうに見られたりします。子どもに話しているのに、シッターさんがお返事したりすることもありますね(笑)。

そんなふうに、言葉が通じていなくてもこちらの向けているまなざしや気持ちは伝わっている気がします。だからこそ、私達がすこやかで幸せでいることが、子どもの幸せや余裕につながるんじゃないかなと思うんです。ストレスを感じると身体のめぐりも悪くなるし、母乳が出にくくなったりもして、いいことがないですから。

――最後に、あらためて妊娠・出産という体験を振り返り、感じたところを聞かせてください。

萌子:それまでも知識としてはいろいろ知っていたけれど、実際に体感してようやく理解できたことがたくさんありました。妊娠中に「妊活マイスター」と「フェムテックマイスター」という資格を取ったのですが、ホルモンバランスって、女性の身体に本当に大きな影響を与えるんですよね。でも、どうやってバランスを整えればいいのか、バランスが乱れると具体的にどんな症状があるのかは個人差も大きい。女性自身でさえ自分の身体について知らないことが多く、年齢とともに発見することばかりです。だからこそ、ヘルスリテラシーを深めていく必要があると思いました。もちろん男性のみなさんにも、命を生み出す身体の仕組みやそれに伴う心身の影響について知ってほしいなと思います。

取材+文:菅原さくら

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